19世紀末の芸術に魅了されすぎたら世界が広がった☆the decadence☆ Vol.7【ファム・ファタルとセイレーン編】

皆さん、こんにちは。前回は絵画4作品を例に、「ファム・ファタル」のイメージを少しお話しました。
今回は「ファム・ファタル」についてもう少しお話したいと思いますが、その前に記事タイトルの意味を改めて説明させてください。

19世紀末の芸術に魅了されすぎたら世界が広がった☆the decadence☆

タイトルの通り、私は「19世紀末の芸術に魅了されすぎたら世界が広がった」のですが、ここでいう「世界」というのは、当時の芸術は勿論、他の時代の芸術、自分の趣味、個人的哲学、普段の暮らし等を含んでいます。
「19世紀末の芸術」という、枝のたくさんある大木があるとしたら、その木の種から子孫のようにまた木が生えるという繰り返しによって道が少しずつできていくイメージです。

私の場合、その核にあるのがイギリスの「19世紀末の絵画」、さらに言えば19世紀半ばに始まるラファエル前派を源流として、象徴主義、唯美主義、デカダンスという一連の流れを含むイギリス、主にロンドンの絵画です。
様々な芸術分野の中で、「絵画」はビジュアルから入れるため、ディテールを見ていると色々な疑問点が出てきます。
その疑問点を解くことによって他の芸術分野との繋がりが見えてきます。
それが私にとっては楽しく、うおっしゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!という快感なのです☆
なぜイギリス絵画なのか?
それは「デカダンス」が自分の好みだから、というシンプルな理由です。
デカダンスに関しては既にお話しているので、興味ある方は是非読んでみてください☆




というわけで本題に入りますが、19世紀末芸術といえば、「ファム・ファタル」の存在が欠かせません。
ここでは、ウォーターハウス作の「セイレーン」を例にファム・ファタルについてお話していきたいと思います。

ファム・ファタルとは?

「ファム・ファタル/famme fatale」は、日本語では「宿命の女」という表現がメジャーな言い方のひとつです。
簡単にいうと「男性にとって魅惑的すぎる女性。たとえ、自身の身が滅びても、堕落しても魅了されずにはいられない魅力をもった女性」という意味の言葉です。
「ファム・ファタル」的存在は古来より存在していましたが、それを表す[famme fatale]という言葉の始まりは19世紀のフランスだったという説が有力です。
(個人的にはこの表記が見慣れているため、そのままフランス語表記で書いています。)

ファム・ファタルとセイレーン

「ファム・ファタル」的な存在は、古くはギリシャ神話の物語にも登場しています。
そのひとつが「セイレーン/Siren」という海の精です。
頭部、或いは上半身は女性の姿、下半身は鳥の姿をしています。
漁師を魅力的な音楽や歌声で魅了し、舟を難破させて漁師を死に追いやります。
セイレーンは海と船乗りと結び付けられているため、絵画ではセイレーンの半身を鳥ではなく、魚の姿で描かれることが多いらしいです。
引用元:https://writinginmargins.weebly.com/home/fish-or-fowl-how-did-sirens-become-mermaids

セイレーンをテーマにした絵画は特に19世紀後半に多く描かれ、下半身が魚の姿をした美しい女性の姿をしています。
今回はその一例として、イギリス画家ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス作の「セイレーン/Siren」について、お話したいと思います。
ウォーターハウスは、ラファエル前派や唯美主義の影響を受けた画家のうちのひとりです。

岩場に座りながら音を奏でるセイレーンは膝から下が魚の姿をしています。
恐ろしい姿ではなく、無垢な印象で、いわゆる「悪女」といったイメージは見られません。
漁師はその美しい姿に魅了され、舟が難破してもやはり魅了され続けて自らの身を滅ぼし、「死」という犠牲を払うことさえいとわない。
そう思わせるほどの恐ろしい魅力を持ったセイレーンはまさに「ファム・ファタル」です。

The Siren(c.1900)
John William Waterhouse
油彩 個人蔵
※画像はWikimedia Commonsから引用させていただきました

ところで、ウォーターハウスの作品は、どこか物憂げで、儚く美しい感じが印象的で、私の大好きな画家です。
ラファエル前派や唯美主義の他の画家の作品と同様、「明るい色彩もありながら、彩度の低い色合い」といった特徴が退廃的だと感じています。
結局、今回もデカダンスの話題に落ち着いちゃいました。

「ファム・ファタル」についてはまだまだお話していきたいですが、それを語るに欠かせないのが「堕ちた女/fallen woman」です。
次回は「堕ちた女」についてお話したいと思います。

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