優しさも過ぎると重い…。映画「夜明け」

旅行や友人と行く映画、飲み会など、楽しみにしていたにもかかわらず、その日が近づくにつれテンションが段々と下がり、行きたくなくなることってありませんか?
私はよくあります。
旅行は中々キャンセルできないので行くのですが、ショッピングや飲み会などは5回に1回はキャンセルしてしまいます。
旅行は計画しているときのワクワク感が最高潮で自分の中ではすでに完結した状態になっているのかな?
行ったら行ったでそんなことはなかったことのように楽しむんですけどね。
単に面倒くさいのかな?謎だ…。

さて、今回ご紹介する映画は柳楽優弥さん主演の「夜明け」です。



では、あらすじを簡単に

小さな木工所を経営する涌井哲郎は、ある日、河原に倒れている青年を見つけて家に連れ帰りました。
目を覚ました青年は、自分は渋谷から来たといい、“ヨシダシンイチ”と名乗りました。哲郎はシンイチの体調が万全ではないことから当分の間自宅に滞在させることにしました。
木工所にはベテランの米山、若手の庄司、鉄郎の恋人の宏美が働いています。哲郎は3人にシンイチは東京から来た見学者だというと、そのまま木工所で働かせることにしました。
更に哲郎は、自宅の二階の部屋をシンイチに与えます。
そこはかつて哲郎の息子の部屋だったようです。シンイチは部屋の中にあった賞状から、息子の名前が自分と同じく“真一(しんいち)”であることに気付きます。
ある日、シンイチは、宏美から哲郎の過去を聞きます。
哲郎の妻と息子の真一は、実家に帰省する時に交通事故で亡くなっていたのです。

作品情報

監督は広瀬奈々子さんです。1987年生まれ神奈川県出身です。
武蔵野美術大学映像学科卒業後、2011年より是枝裕和監督が率いる制作集団分福に所属します。
是枝裕和監督、西川美和監督のもとで監督助手を務め、『そして父になる』『ゴーイング・マイ・ホーム』『海街diary』『海よりもまだ深く』『永い言い訳』に参加。2019年、本作『夜明け』で映画監督デビューを果たしました。

主演は柳楽優弥さんです。是枝裕和監督作品の『誰も知らない』(2004年)でデビューしました。この作品は第57回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、主演の柳楽さんは当時14歳で史上最年少かつ日本人で初めて男優賞を受賞しました。
『誰も知らない』のオーディションが初めてのオーディションだったということです。
是枝監督は「目力がある」と主役に抜擢したようですが、うん、確かに彼の目力は半端じゃない威力があります。

そして、木工所の社長、哲郎を演じたのは小林薫さんです。
傷を負った壮年男性の悲哀が立ち姿からも伝わってきます。素晴らしい表現力です。

優しさの重さ

シンイチが川辺で倒れていたのは、川に飛び込み自殺しようとしたけれど死にきれなかったからです。
それは、数年前にこの町で起きたある事件と関係しています。
哲郎はそのことを知っても、シンイチを見捨てることはしませんでした。
哲郎は自身の息子と同じ名前であるシンイチに息子を投影していたのです。
親子関係が悪化したまま亡くなってしまった息子と一からやり直したい、そんな思いがあったのでしょう。
哲郎の優しさが大きくなればなるほど、なんだか重く感じてしまいます。
元々、自己肯定感の低いシンイチが戸惑うのもわかります。
哲郎がシンイチに執着すればするほど、恋人で、もうすぐ正式に籍を入れようとしている宏美との関係はぎくしゃくしていきます。
「現実的なことを目の前にすると後ろ向きになる」
宏美との入籍後のことよりも息子と向き合えなかったという過去に囚われている哲郎に宏美が放った言葉です。
旅行に行きたくないという私のそれとは重みが違いますが、近しいものが感じられ、大変グサッと心に刺さりました。
過去という呪縛に囚われた2人の男。
お互いの思いが食い違いはじめた彼らの行く先は…。

【夜明け】
監督:広瀬奈々子
脚本:広瀬奈々子
出演者:柳楽優弥
YOUNG DAIS
鈴木常吉
堀内敬子
小林薫
製作年:2019年
製作国:日本

※画像はAmazonより引用させていただきました

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