エスプレッソが基本のイタリア、そのコーヒー事情とは?

朝食に、あるいは午後のブレイクタイムに、コーヒーがなくては始まらないという方も多いはず。
アメリカンやブレンドが主流の日本と異なり、イタリアのコーヒーはエスプレッソが基本です。ヨーロッパでは比較的早い時期にコーヒーが普及したイタリア、その楽しい文化をご紹介したいと思います。

法王さまもお気に召した異教徒の飲み物

コーヒーの原産地は、アフリカのエチオピアといわれています。
アラブ世界では古くから愛用されていたコーヒー、16世紀にはコンスタンティノーポリやメッカ、カイロにコーヒーを飲むサロンがあったことがヴェネツィアの大使たちによって記されています。
このコーヒーがヨーロッパに渡来するのは1570年頃。
商魂たくましいヴェネツィアの商人が、ヨーロッパでもお金になると踏んで導入したのが最初とされています。

しかし、当時のキリスト教会はアラブ世界とは相いれなかったため、「異教徒の飲み物」と敬遠されて、コーヒーはなかなか普及しなかったそうです。
ところが、新し物好きのある法王が試しにこのコーヒーを喫してその味を大いに気に入ったため、発布される予定だったコーヒー禁止令が撤回されたという逸話があります。
法王さまが飲むのならキリスト教徒も遠慮する必要もなく、その後のコーヒーはあっという間にヨーロッパに広がっていくのです。
ちなみに、現在まで残るカフェの老舗ヴェネツィアの「フローリアン」やパドヴァの「ペドロッキ」はこの時代の創業です。

イタリアの朝はコーヒーから

イタリアの朝。
窓を開けると、コーヒーの香りが鼻腔をくすぐります。
町中に点在するバールから、あるいは近所の家々から、濃いコーヒーのアロマが漂ってくるのです。
バールはイタリアの社会では欠かせない社交の場であり、日本のコンビニほどの感覚で存在しています。バールでは専門の機械でコーヒーを入れますが、家では直火にかけるマキネッタと呼ばれるツールでコーヒーを入れます。ゴボゴボゴボというコーヒーが沸く音は、イタリア人にとっては朝の目覚めに欠かせないルーティーン。

イタリアのコーヒーの基本は、すべてエスプレッソです。
ローマやミラノなどの大都市に行けば、観光客のニーズに応じるためにアメリカンのメニューがあるところもありますが、郊外のバールでお目にかかることはほとんどありません。
ミルクを加えるカップチーノは、朝食のお供です。
昼食後のコーヒーはエスプレッソ、ここでカプチーノを注文すると怪訝な顔をされます。

イタリアにきたらぜひ味わってほしいコーヒー

スタバやドトールが幅を利かせる日本とは異なる、イタリアのおすすめコーヒーメニューをご紹介したいと思います。
ちなみに通常のエスプレッソであれば「カフェ」といえば通じます。このカフェにさまざまな形容詞がついて、そのバリエーションを楽しめるわけです。

カフェ・スキュマート
濃くて苦いエスプレッソが苦手な人ならば、ミルクを加えるカフェ・マッキャートを頼むことが多いでしょう。これはすでに、日本でも知られているカフェです。
いっぽう、自宅では難しいふんわりとしたミルクの泡を乗せたものがカフェ・スキュマートです。クリーミーなミルクとほろ苦いカフェとのバランスが絶妙です。

カフェ・コン・パンナ
パンナとは生クリームのことで、ふんわりと甘い生クリームがカフェの上に加えられています。ウィンナーコーヒーのエスプレッソバージョンといった趣でしょうか。
イタリアではさらに、リコッタチーズを泡立てるものもあります。南イタリアではお料理にもお菓子にもよく使われるリコッタチーズ、そのまったり感がたまりません。

カフェ・イン・ギアッチョ
日本のようなアイスコーヒーが存在しないイタリアですが、さすがに盛夏に熱いカフェを飲むのがしんどいという場合もあり。そんなときには、カフェ・イン・ギアッチョというメニューがあります。氷入りのカフェという意味ですが、美味しく作るにはバールマンの技術力がものを言います。カフェ・イン・ギアッチョにはさらに、アーモンドミルクを加えたものやすでに砂糖を加えた甘いバージョンもあります。南イタリアのサレント地方で特によく飲まれるカフェです。

カフェ・シェケラート
こちらのカフェも南イタリアでバカンスを過ごす人たちが、午後の休息時に飲用するものです。
カフェ・シェケラートはシェイカーを使い、エスプレッソ、砂糖、細かな氷が混ざって夏の渇きを癒してくれます。ミルク、チョコレート、リキュールなどを加えたタイプもあり、暑さにばてた心身が生き返る美味しさです。

モカッチーノ
コーヒーとカカオの相性は抜群。
カップチーノにカカオパウダーをかけてくれるバールも少なくありません。この好相性を反映させたカフェがモカッチーノです。
モカッチーノのベースになるのはカップチーノ、甘いカカオのアロマを加えたモカッチーノは特に冬に愛される飲み物です。カップチーノは朝に飲むものという強い信念を持つイタリア人も、モカッチーノだけは冬の夕暮れ時に愛飲することも。

最後に

コンビニがないイタリアでは、小腹がすけばバール、おしゃべり相手が欲しければバール、といった具合に、バールの文化が根付いています。
バールで飲むカフェの種類は思いのほか多く、エスプレッソコーヒーをベースにした多種多様な味を楽しめます。
旅の楽しみのひとつとして、ぜひバールでさまざまなカフェを味わってみてください。

参照元
https://www.focus.it/cultura/storia/il-vino-darabia
https://pontevecchiosrl.it/modi-di-ordinare-il-caffe-al-bar/
平凡社世界大百科事典(コーヒー)

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