ピカソのデッサンがやっぱり凄い!

ピカソのデッサンがやっぱり凄い!

芸術の都、パリ!
パリ在住の私は、2020年7月21日から開催されている「ピカソとバンド・デシネ展」を観に、国立ピカソ美術館に足を運んできました。

パブロ・ピカソといえば20世紀最大の芸術家で、たくさんの名作を後世に残した巨匠です。
生涯を通してその画風が大きく変化したことでも有名ですが、その名画の源は彼のデッサンにありました。

ピカソが生まれて初めて発した言葉は「ピス!」(スペイン語で鉛筆の意)だった、との逸話があります。
幼少期より鉛筆を使ったデッサンでその才能を発揮したピカソ。
喜びや悲しみ、作品に対する情熱を日記のように綴ったデッサンの数々は、ピカソの人間的な一面を伝えてくれるものでした。

そんな巨匠ピカソのデッサンの凄さをご紹介したいと思います!

ピカソのデッサンがやっぱり凄い!

パリ・マレ地区にある国立ピカソ美術館。ヴェルサイユ宮殿を手掛けた職人による彫刻装飾が施されています。


ピカソのデッサンがやっぱり凄い!

「古い建物が好き」だったというピカソは、美術館となる前のこの館がパリのなかでも大のお気に入りだったそう。


ピカソのデッサンがやっぱり凄い!

デッサンと完成後の作品が同時に展示されていました。



ピカソ少年時代の作品

ピカソの絵といわれて思い出す作品は、身体のパーツがバラバラな「ゲルニカ」や「アヴィニヨンの娘たち」といった声が多いでしょう。

しかしその画風は少年時代と全く異なるものです。
ピカソの父が美術教師だったこともあり、才能溢れるピカソは幼少期より父から厳しいデッサン教育を受けました。

ピカソのデッサンがやっぱり凄い!

「裸足の少女」1985年作・ピカソ13歳


ピカソのデッサンがやっぱり凄い!

「傾く女性」1901年作・ピカソ20歳のデッサン


ピカソが13歳の時、彼の父親は「既に自分を超えた」と悟り、画家として絵を描くことを辞めてしまったそうです。

「絵が上手い」イコール「写実的」とするならば、ピカソは絵を描く上での土台ともなる圧倒的な画力を少年時代に培っていたのです。
十代にして早くも巨匠の片鱗をうかがわせるピカソは、この後メキメキと頭角を現すことになります!

最も高い評価を得たキュビズム時代

ルネサンス以来ヨーロッパの伝統的な絵画スタイルだった「写実主義」を開放し、ピカソは現実をただ模倣するだけの絵画にストップをかけました。

「キュビズム」と呼ばれる新たな美術の技法をスタートしたのです。それは、一つの物体を、固定した一つの視点で描くのではなく別々の角度から見たイメージを一つの絵の中に合成してく技法です。

ピカソのデッサンがやっぱり凄い!

「ラ・ミューズ」1935年作・ピカソ
裸の女性と暗い表情が印象的です。


ピカソのデッサンがやっぱり凄い!

「ラ・ミューズのデッサン」1935年作・ピカソ
デッサンの画風も変化しています。


ピカソのデッサンがやっぱり凄い!

一度三次元化したデッサンを二次元化しています。平面での立体表現に苦心している様子が垣間見えました。


このキュビズムは市場で高く評価され、ピカソは一躍スターダムに駆け上ります。
また彼は、芸術の神様に愛された強運の持ち主だったとも言えます。

・20世紀初頭「アートビジネス」が活性化し、絵画バブルの波にのったこと
・生涯を通して15万点の作品を制作し、中だるみの期間がなかったこと
・貧しい画家だったゴッホとは対照的で、恵まれた環境で育ちどんどんパトロンをつけていったこと

生活の心配がない環境で、純粋に絵画表現を突き詰めることができたのでしょう。

いかなる天才も原点はデッサンにあり


絵を構成する要素はいくつかあって、まずコンセプト。そして構図、陰影、質感、量感。
これが全部そろって絵画が作品として成立します。
もはやデッサンは「絵」そのものと言って過言ではありません。

また彫刻や建築など、デッサンは全てのモノづくりの基本。

一生のなかで何度も作風が「異なる画家」となったピカソ。
少年時代に培ったその天才的なデッサン能力がベースにあったことは言うまでもありません!

ピカソの晩年と原点回帰

ピカソのデッサンがやっぱり凄い!
晩年のピカソは、「死」をとても恐れるようになったそうです。
晩年期は今までになく素朴で、まるで子供が描いた絵のような作品を量産しました。
幼少期より大人に期待される絵を描き続けたピカソ。
本当の子供らしい絵を描いた期間がなかったからこそ、子供たちが天真爛漫に描く絵に真の芸術を見出したのかもしれません。

後世に名を残すスター芸術家のピカソですが、実際わけのわからない作品ばかり・・・
と思う方も少なくないでしょう。
しかし全てに意味があり、その抽象的な見せ方は現代アートの礎を築いたとも言えます。
彼の類まれなるデッサン力、そしてそれをベースにした表現方法には先見の明があったのだと思います。

デッサンの天才だったピカソ。
彼のデッサンの歴史を踏まえて作品を見ていくと、「やっぱりピカソが好き」と思えるようになるかもしれません。

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