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藤井風「HELP EVER HURT NEVER」日本のR&Bブームはまだ終わらない!次なる新進気鋭の担い手が繰り出す名盤



ここ数年日本の音楽界では星野源の活躍を大きなきっかけとして、ブラックミュージックやR&Bといった音楽ジャンルが再度日の目を見ています。
2019年のOfficial髭男dismの一大ムーブメントでそろそろこの流れも落ち着いてくるかな、と思っていたら、2020年に入った今とんでもない超新星が現れた。
それが今回ご紹介する藤井風を聴いて、私が最初に抱いた正直な感想です。

元々2019年にリリースされたシングル「何なんw」「もうええわ」の2作が、耳の早い音楽ファンからはかなり熱い支持を受けていた藤井風。
彼の声やサウンドを聴いて私の脳裏に浮かんできたのは、ORIGINAL LOVE田島貴男と久保田利伸の存在でした。
ここ最近の邦楽アーティストが紡いでいたブラックミュージックをバックグラウンドに置いた作品は、言わば結果としてジャパニーズポップスへと昇華された音楽とでも言いましょうか。
少し高めのトーンの利き馴染みの良い声を持つボーカリストが多かった所以もあるのですが、この藤井風はそれとはまた違う角度での音楽を世に放ってきたのです。
少し鼻に掛かるような渋みのある色気を含んだ声を聴いて、思わず「まだその方向性があったか」と私は呟いてしまいました。
その天性の声と磨かれたサウンドセンスを持ちながら若干まだ22歳の彼、これからどのような活躍をしていくのか、今からとても楽しみな気持ちになってしまいます。

藤井風

2020年5月に発売された、そんな彼の満を持してのファーストアルバム「HELP EVER HURT NEVER」。
この作品にはこれまでにリリースされた2作のシングルと、今作が初の収録となる9曲の、合わせて11曲が収録されています。

アルバムの冒頭を飾るのは先述したシングル2作。
小気味の良いアーバンなR&Bに彼が元来口にしていた岡山弁の歌詞が載せられた「何なんw」は、何度聞いても曲中で歌われるタイトルがお洒落なR&Bのスキャットや合いの手にしか聞こえません。
「もうええわ」では、良い意味で今らしい打ち込みのサウンドに合わせ、少し憂いを感じさせるような湿度を含んだ彼の歌声を楽しむこともできますね。
また彼自身が奏でているというピアノのサウンドと、張りと艶のある彼の声の良さが極限まで発揮された歌いだしが印象的な「優しさ」も一度聴けばグッと心を掴まれる方も多いはず。
一転して、華やかなホーンセクションのサウンドや少し尖りのあるバンドサウンドとも彼の声の相性はもちろん抜群です。
その相性の良さを実感することのできる「罪の香り」や「さよならべいべ」では、彼の声の表現の幅にも驚かされることでしょう。

藤井風の魅力を言葉で表すとすれば、彼の声を含めた今の若者らしいサウンド感に、歌詞に用いる岡山弁や彼自身の人柄によって誉め言葉としての地方感、土着感を纏わせた、今までにないR&Bを踏襲した音楽を作り出している、という点なのではないかと思います。
そして先述したような偉大なR&Bの大御所ミュージシャンを思わせるその声もまた、彼の音楽を聴くリスナーの年齢の垣根を無くすことに一役買っているのではないでしょうか。

状況が状況だけに、音楽の世界だけではなくここ最近はエンタメ界全体が意気消沈してしまっているかのようなイメージさえ受け取れます。
しかしその中でこんなにも魅力に溢れたアーティストを見つけると、まだまだ音楽の世界にもできることがあると、むしろこの苦境を乗り越えた先に、日本の音楽の世界はどんな素晴らしい景色を見せてくれるのかと、どこかわくわくした気持ちにもなってきますね。

HELP EVER HURT NEVER
アーティスト:藤井風
レーベル:Universal Music
発売日:2020年5月20日

※画像はAmazonから引用させていただきました

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