19世紀末の芸術に魅了されすぎたら世界が広がった☆the decadence☆ Vol.10【精神病と精神病院編】

皆さん、こんにちは。
皆さんは「ムーミン」はお好きですか?
私は、「ムーミン」のお話に出てくるリトルミイとミムラ姉さんが大好きです。
先日、森の中にある「ムーミンバレーパーク」に行ってきました。
めちゃよかった!!です。
大人が楽しめるテーマパークという印象でした。
日帰りでしたが、個人的には時間が足りませんでした。
観たいもの、撮影したいものが溢れており、半分くらいしか周れませんでした。
でも、なにより癒されたので行った価値がありました。

癒しはほんま必要ですね。
今の時代には人それぞれの癒され方がありますが、19世紀後半、ビクトリア朝時代のイギリスには今より「癒し」が少なかったのだなあ、と感じます。
社会の厳しい規律や精神病院の存在がその一因と言えそうです。
前回は、ロゼッティの人物像についてお話しました。
芸術家として成功していくと同時に精神崩壊していったロゼッティ。
周囲の環境が違っていたら、精神病院に収容されていたかもしれません。
今回は、19世紀後半のイギリスにおける精神病についてのさわりをお話したいと思います。

精神病院の設立

19世紀半ば以降、産業革命化によって都市化したイギリスでは、精神病院が多数設立されました。
都市化による自然破壊、環境汚染や労働環境の変化などによって精神を患う人が急増したことが背景にあります。
「精神病院」にあたる施設は以前から存在していましたが、精神病に関する法律によって精神病院の設立が義務化され、19世紀末頃までに60以上、最終的には100以上の精神病院が設立されました。
階級に関わらず患者は多数いましたが、その大半は女性でした。
初期の精神病院では拷問も行われました。
まだ精神病に関する研究が十分でない当時、今なら理不尽すぎると思ってしまうような理由で施設に入れられ、中には虐待や他の病気などで亡くなる人もいましたが、法律によって、また医学の進歩によって、精神病院の状況は改善されていきました。
[参考サイト] https://valmcbeath.com/victorian-era-lunatic-asylums/#.XldkKKj7SUk

「精神病リスト」

精神病院の患者はどんな症状が原因で入院することになったのか。
そのリストを見て、まじか!!と衝撃を受けた記憶があります。
当時は「精神病にかかっているから治療の必要がある」ではなく、「精神病になる可能性があるから収容する必要がある」とされていました。
以下のリストを読んでいただければお分かりになるかと思いますが、これでは言いがかりであっても立場の強い者が弱い者を入院させることが可能だったはずです。
「癒し」が少なかった一因として、「精神病院の存在」の可能性を上記しましたが、現在では「癒し」に当たる項目が入っているので、精神病院は癒しを取り上げる存在であったともいえるでしょう。

「精神病院」への収容理由が記載された「精神病リスト」、正式には、1864年から1889年までの「入院許可理由(Reasons for Admission)」という名称のリストがあります。
引用元:https://valmcbeath.com/victorian-era-lunatic-asylums/#.Xldizqj7SUk

このリストには
馬に頭を蹴られた/ 夫による虐待/ 被害妄想/ ヒステリー/ 倫理観を欠いた生活/ 性的虐待/ 家庭内問題/ 怠慢/ 監禁/ 息子の結婚/ 読書/ 喫煙/ 低品質のウィスキー/ 息子の戦死/ 夫殺しの噂/ わがまま/ 宗教に熱心/ 色情狂/ 娘に発砲/ 年齢/ 貪欲/ 悲しみ/ 研究熱心

その他、複数の入院許可理由が書かれていますが、例えば「研究熱心」や「読書(小説)」というのは、頭を使いすぎると異常者になる可能性があるため、といった主旨でしょうか。
「わがまま」や「怠慢」は当時の道徳観に反しており、社会の秩序を乱す可能性があるため、ということでしょうか。
憶測にすぎませんが…。
このリストに記載されている症例をひとつも持たない人は、少なくとも現代人にはいないのでは?と思ってしまいました。
記載された症例の中には「人間らしさ」「個性」と言えそうなものもあります。
全く該当しないとしたら人間離れしているみたいで逆に怖いです。
19世紀後半のイギリスで暮らしていた人も、おそらくどれかひとつは該当するのではないか?と思います。
しかしながら、このリストに書かれた症状は、身内を含む周囲の人々の独断によって申告されたため、事実かどうかは分からないようです。
逆に、ロゼッティのようにリストに記載された症状が該当していたとしても、周囲の助けによって精神病院送りにならない人もいました。

当時の実際の患者のカルテがウェブ上に公開されているのですが、個人情報すぎるため、ここに記載することに躊躇いがあります。
興味ある方は下記のURLから閲覧してみてくださいね。
https://museumofthemind.org.uk/learning/explore-bethlem/patients

ここまで、19世紀後半の「精神病」についてのさわりをお話しましたが、入院許可リストの症例のうち、「ヒステリー」は当時の女性のあり方に大いに関係しています。
また、患者の大半が女性だった理由が社会的事情にあります。
次回はこの2点についてお話していきたいと思います。

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