Awich「孔雀」ジャンルや固定概念を取り払え!艶やかで強靭なその美しい羽根を広げて
HIPHOP界の中でも、特に注目すべき女性シンガーとして数年前からその名が挙がっていたAwich。
日本のHIPHOP界、音楽界という枠に囚われることのない、グローバルでジャンルレスな異色の活躍がその理由の1つかもしれません。
HIPHOPシンガーでありながらも母であり、また自らの故郷を守る活動を行う女性実業家や映画監督・脚本家という顔も持ち合わせている彼女。
そんなAwichの待望のニューアルバム「孔雀」が2020年についにリリースとなりました。
約2年ぶりのリリースとなったこのアルバム、まず特筆すべきは豪華すぎるフィーチャリングのメンバーでしょうか。
ゆるふわギャングとしても活動しているNENEやJP THE WAVY、OZwould、DOGMAや先日麻薬所持による逮捕で話題となった鎮座DOOPNESSなど、HIPHOP界の錚々たるメンツが一堂に会した作品となっています。
アルバムの収録曲数も20曲という大ボリューム。
これまでの彼女の作品と比べても多く、この作品に対する彼女の並々ならぬ熱意や気概を感じられます。
作品の冒頭は幻想的で軽やかなサウンドが魅力的な、HIPHOPを普段あまり聞かない、という方にもおすすめの「Love Me UP」。
次いで毒々しさの増す「洗脳 feat. DOGMA & 鎮座DOPENESS」、「NWO」「NEBUTA:AL ver. Feat. kZm」と畳みかけることで、Awichらしいディープな世界観が一気に展開されていきます。
その後も彼女らしいタフネスさが全開の「Poison feat. NENE」、EGO-WRAPPIN’の「色彩のブルース」をサンプリングした「紙飛行機」、艶やかな儚さを纏った「Lose Control」など、実に多彩なサウンドでリスナーを飽きさせることなく作品は進行していきます。
彼女の今作の最も素晴らしい点は、HIPHOPを好むリスナーにとってはもちろんのこと、普段HIPHOPというジャンルにもあまり縁のないリスナーにとっても非常に聞きやすい作品となっていることです。
ジャンルとしてはHIPHOPというものに括られた音楽ではあるものの、その奥に彼女自身の抱える闇や毒を食らい自らの糧とする強かなマインドが見えます。
そして、様々な人生経験を経て得た女性シンガーとしての豊かな表現力。結果、それらが顕著に表れた作品になっているからこそ、彼女自身の生き様のようなボーダーレスでジャンルレスな音楽として世に響き渡っているのではないかと思います。
今作の主題となっている、鮮やかな七色の羽根を広げる孔雀。
その美しさはただ純粋さ故に表出するものだけではありません。
毒や闇を食らってなお、美しくあらんとする強靭さ。
だからこそ、Awichという孔雀の持つ鮮やかな毒々しさに多くの人々が惹きつけられるのでしょう。
一仕事人として生きる中で、自らの闘志を奮い立たせたい。
女だから、女性だから、という世間の生温い風潮に真っ向から立ち向かいたい。
そんな時にはぜひこの「孔雀」を聞いて、彼女の音楽に強く生きる勇気をもらってみてはいかがでしょうか。
孔雀
アーティスト:Awich
レーベル:YENTOWN / bpm tokyo
発売日:2020年1月11日
※画像はAmazonから引用させていただきました