19世紀末の芸術に魅了されすぎたら世界が広がった☆the decadence☆ Vol.6【西洋諸国のデカダンス-絵画編】

皆さん、こんにちは。
皆さんはどのような女性を魅力的に感じますか。
また、どんな女性像を理想としていますか。よく「二十歳を過ぎたら自分の顔に責任を持て」という言葉を耳にしますが、本当にその通りだな、と実感します。
いわゆる、「内面が表に出る」です。
私は普段から出会う中で、この人綺麗!と思った人に美の秘訣を尋ねるようにしています。
その中でとても印象的ながら実践しきれずにいることがあります。
「先端を綺麗にする」というアドバイスです。
髪の毛の先、爪の先、靴のつま先…こういった先端部分をしっかりとお手入れできると美しく見える、という内容でした。

私は先月、千葉県佐倉市にある佐倉市立美術館に「小林ドンゲ展 ファム・ファタル(妖婦)」を観に行きました。
そこでまた美しい女性に出会ってしまいました。
作品に描かれた女性たちに魅了され、展示室を行ったり来たりと繰り返していたら時間があっという間に過ぎていました。
ほんまなんでこんなに美しい人があふれてるんや、と溜め息がでました。
展示室には20世紀半ば頃から後半にかけて描かれた作品が展示されていましたがほんとにほんとに美しすぎて、今でも私の頭に在住中です。
そして、その作風はデカダンス!!
デカダンスは西洋諸国だけでなく、後に日本の芸術家にも影響を与えています。
そして現在ではファッションやメイクアップ、小説など多岐に渡り人気のスタイルのひとつになっています。

※画像はhttp://www.bohemiansgallery.com/artist.php?name=小林ドンゲ&artist=1934より引用させていただきました

「デカダンス」には、道徳的堕落、文化的退廃といった意味がありますが、それを反映した19世紀末芸術をデカダンスと呼びます。
正確には、デカダンスは、19世紀末芸術のスタイルのうちのひとつであり、実際のところ当時の主流なスタイルではなく、新しく花開いた芸術のスタイルです。
1848年にロンドンで結成されたラファエル前派兄弟団を源流とし、1860年代には唯美主義、1880年代にはデカダンスへと繋がっていきますが、この流れは曖昧なところが多いのでざっくりとした流れとして捉えてもらえたらと思います。
デカダンスは西洋諸国の芸術全般にみられますが、ここでは絵画についてみていきたいと思います。
「デカダンス」と一言でいっても、作品をみてみると画家によってだけでなく、地域によって作風がずいぶん違うなあ、という印象を受けます。

デカダンス的作品でよく描かれるもののひとつに「死」を連想させるものがあります。
それは「生首」「骸骨」といった形で象徴されています。
このモチーフが描かれた絵画のうち、個人的に印象に残っている作品を4作品紹介したいと思います。
順に、イギリスからアーサー・ヒューズの「小道具部屋」、フランスからギュスターヴ・モローの「出現」、オーストリアからグスタフ・クリムトの「ユディト」、ベルギーからフェリシアン・ロップスの「舞踏会の死神」です。

舞台用の小道具部屋の内部が描かれています。
衣装棚の、左上の一番隅に骸骨、その隣には仮面が並んでいます。
仮面も少し怖い表情をしていて、生首を連想してしまいました。

The Property Room(1879)
Arthur Hughes
油彩
個人蔵

画像はhttps://imgur.com/gallery/x0Lz86lより引用させていただきました

ヘデロ王の娘のサロメが踊っている最中、褒美として挙げたヨハネの首が血をしたたらせながらサロメの前に幻影として現れます。

Gustave Moreau
The Apparition (1874-76)
水彩
オルセー美術館蔵

※画像はhttps://www.musee-orsay.fr/en/collections/works-in-focus/graphic-arts.html?no_cache=1&zoom=1&tx_damzoom_pi1%5BshowUid%5D=105860より引用させていただきました

ユディトが、自身で切断したホロフェルネスの生首を抱えている姿が右下にみられます。

Judith
Gustav Klimt(1901)
油彩
ベルヴェデーレ宮殿上宮蔵

※画像はhttps://www.belvedere.at/en/klimt-collection-belvedereより引用させていただきました

着物を纏った骸骨が踊っています。
背後には薄っすらと人影が見えます。

Death at the Ball(c.1865 – 1875)
Félicien Rops
油彩
クレラー=ミュラー美術館蔵

※画像はhttps://livedoor.blogimg.jp/mement_mori_6/imgs/9/f/9f5c14e2.jpgより引用させていただきました

世紀末の絵画といえば、主観的には、イギリスはラファエル前派や唯美主義の絵画の影響が強くみられ、比較的美しいイメージ。フランスではモネ、ルノワール、ドガなどで知られる印象派の明るく、優しいイメージが浮かびます。
フランスの19世紀末社会は、イギリスとは違ってより享楽的で街がにぎわいを見せていました。
オーストリアといえばクリムトがまさにデカダンスの代表的作家のひとりです。
クリムトの作品は一見煌びやかで美しい印象が強そうですが、実際にはグロテスクな内容を含意していることもあり、19世紀末!といった印象を受けます。
ベルギーのデカダンス的作品は4か国の中でもっともグロテスクな印象を受けます。

この4作品に描かれた「骸骨」や「生首」は、上記したように「死」を連想させますが、これは絵画においてはラファエル前派兄弟団に始まる「象徴主義」、つまり目に見えないものを何らかの形あるもので表現して描く、という主義思想ゆえです。
目に見えないものとして「内面の感情」「生と死」「夢」「神秘性」などが主要な例として挙げられます。
絵画の主題に縛りがなくなり、以前より自由に表現することが可能になった時代、画家たちは時には聖書や神話のほか、文学作品からの場面を用いながらこういった形のないものを象徴的に描きました。

さらに「象徴主義」以外にも共通項が見られます。
「美しい女性!!」です。
デカダンスにおいて、「美しい女性」と「死」は切り離せない存在です。
そして、ここでの「美しい女性」とは男性を魅了してやまない「堕ちた女」を意味します。
私はこの「堕ちた女」が大好きなのでデカダンスが大好きなのかな、と思ったりしています。
次回は「堕ちた女」について少しお話したいと思います。

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