映画「セイジ -陸の魚-」伊勢谷友介監督 2012年2月日本公開

私は若いころから洋画に出てくるカッコいいオジ様たちが大好きでした。
「イケオジ」と言うようですね、最近は。
ジャック・ニコルソン、ハリソン・フォード、ショーン・コネリー。
中でも全盛期の超絶美しいレオナルド・ディカプリオが双子を演じた「仮面の男」に出演していたガブリエル・バーンは私のイチオシです。
苦悩する表情が色っぽいのです。最近久しぶりに映画「マイ・プレシャス・リスト」で見た彼は、髪が白くなり、体型も少しふくよかになっていましたが、それでも素敵。
今は60代の後半かな?
渋さが増していました。
現在007を演じているダニエル・クレイグも同じ系統ですね。
好きです。
新作が待ちきれません。
眉と目が近くて、笑顔より困った顔に色気を感じさせるそんな、おじ様が好みなんですよ。

さて今回ご紹介する映画は日本のイケオジの代表格、西島秀俊主演の
「セイジ 陸の魚」
です。

ではあらすじを簡単に。

~20年前の夏、学生最後の夏休みを迎えた「僕」。適当に就職先を決めて、一人自転車旅行に出かけます。
ある日衝突事故を起こした「僕」は旧道沿いのドライブインに辿り着きます。
寡黙だけれど時に「僕」の心に強く響く言葉を放つ、雇われ店長のセイジや個性的な常連客たちに何故か強く惹かれた「僕」。いつしか住み込みで働くようになります。見知らぬ場所での毎日は刺激的で楽しく「僕」は居場所を見つけたような気分になります。しかし緩やかに過ぎていくかに思えた日常はある凄惨な事件により一変してしまうのです。

監督は俳優としても数々の作品に出演されている伊勢谷友介さん。
監督としては2作目です。

主演は西島秀俊さん。
40過ぎてからブレイクしましたね。
若い頃は今のような精悍さは無く、むしろ貧弱な印象で、私はあまり好きではありませんでした。

この作品では妹を守るために両親を殺した過去を持つ寡黙でミステリアスなセイジを静かに哀しみを湛えた瞳で演じています。
セイジは、人が感じ取れないものも感じ取ってしまうような繊細な神経を持つ人。
感受性が強すぎて人の苦しみや痛みさえも自分の事のように感じてしまう、陸では生きられない魚のように生き辛さを抱えた人です。
暗い秘密を抱えた訳アリの人物を演じさせたら日本一だと思います。

キャスティングも絶妙です。津川雅彦さんを始め、抜群の存在感、演技力を持つ役者が、抑えた演技で魅せます。
それでいて演技合戦になっていないところが物語に深みを与えています。

セイジを雇っているオーナーは、邦画では久しい裕木奈江さんが演じています。
今やハリウッドでもご活躍されていますね。
相変わらず色っぽいですよ。
そして大学生を演じるのは森山未來さん。
ダンサーとしても活躍されていますね。
この作品では、目的もなくぼんやりとした大学生の「僕」をリアルに演じています。
傍観者である「僕」の視線で映されるセイジに、私たちも引きつけられていきます。

無表情で寡黙なセイジですが、津川雅彦さん演じる盲目の老人や、その孫娘の幼い少女に向ける、崩れるような笑顔が反則級。
破壊力抜群です。

時間軸が行き来したり、不穏な空気が常に漂っているかのような薄暗いドライブインの店内。
そんな空気感を緑豊かな美しい自然が包み込む。
背景一つ一つの映像がとてもスタイリッシュで美しい。
監督の感性が感じられます。

ラストは衝撃的です。
セイジが選択した行動は観る人によって受け取るメッセージは違うと思います。
あえて観る者に委ねているような気がしました。

深い余韻に浸るというより、深く考えさせられ、そして何度も観たくなる作品です。
照明を落とした薄暗い暗い部屋でじっくり鑑賞することをお薦めします。
そうするとより一層、世界観に引き込まれますよ。

※画像はAmazonより引用しました。

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