男臭さ全開!暑い日が更に暑くなる!映画「虎狼の血」

はるか昔、私が東京の専門学校にかよっていたころのお話。
私が住んでいた古いマンションの1階には怪しげな事務所がありました。
朝、建物から外に出ると、前の道路には高級外国車が止まっており、スーツ姿でサングラスの、いかついお兄さんたちが入り口に立っています。
そして、前を通り過ぎると大きな声で45度のお辞儀と共に
「いってらっしゃい!」
と…。
夕方、学校から戻ると、道路に面して開け放たれた窓からは麻雀パイをジャラジャラさせる音が聞こえます。
何やらただならぬ気配。
お隣の住人の話によると、やはりそこは暴力団の事務所で、1年ほど前までは大きな看板が掲げられていたようです。

私は父親の友人所有の部屋を借りていたのですが、本来は賃貸物件ではないので、結構長い間住人の方たちとは立ち退きを含めて争っていたようです。
そして、立ち退きはしない代わりに看板を引っ込め、住人には迷惑にならないように静かに利用するということで決着がついたとの話でした。

なるほど、だから挨拶もしてくれるし、ゴミ出しの日にごみを持ってエレベーターを降りると
「出しておきます。行ってらっしゃい」
と、ゴミを持って行ってくれたんだ。
ちょっと偉くなったようで、気分は良かったな。

彼らの姿を見ると私の頭の中にはいつも「仁義なき戦い」のテーマが流れていましたけどね。

さて、今回ご紹介する映画は「虎狼の血」です。警察VSヤクザ。かなりガツンと来る作品です。



では、あらすじを簡単に

昭和49年、呉原市の暴力団・尾谷組に広島市の五十子会が抗争を仕掛けました。抗争は泥沼の様相を呈しますが。尾谷組組長・尾谷憲次の逮捕をもって終結を迎えます。
それから14年。五十子会の下部組織・加古村組が、尾谷組の残党に牙を剥いたことで、新たな抗争の火種が燻りはじめます。
そんな時、加古村組のフロント企業である呉原金融の経理・上早稲二郎が失踪するという事件が発生します。
その事件に加古村組が関わっているとみた呉原東署捜査二課暴力団係が捜査にあたることに。
捜査二課暴力団係の班長である大上章吾直属の部下として配属された日岡秀一は、情報を収集するため、配属早々に加古村組の苗代に喧嘩を吹っ掛けることを強要されます。
なかなか口を割らない苗代の様子から、上早稲の失踪の背後にある陰謀の匂いに感づいた大上は、加古村組と敵対関係にある尾谷組の事務所を訪れ、若頭である一ノ瀬守孝に加古村組との揉め事を避けるよう言いますが…。

作品情報

監督は白石和彌さんです。
2013年に凶悪殺人事件を題材とした映画『凶悪』で数々の映画賞を受賞し注目を集めました。
2017年『彼女がその名を知らない鳥たち』でブルーリボン賞監督賞を受賞します。
そして、2018年にも『孤狼の血』『止められるか、俺たちを』『サニー/32』で同賞を受賞し、2年連続の受賞となりました。
アウトローの世界を描いた作品を得意としています。
主演を務めるのは役所広司さんです。還暦を越えているとは思えない荒々しさ、男臭さ、凄いです。
そして、直属の部下を演じるのは松坂桃李さんです。
まなざしに色気を感じます。
脇を固める江口洋介さんを筆頭に豪華役者陣のキレキレの演技にも注目です。

暑苦しさMAX

さて、冒頭からの壮絶な暴力シーンは目を背けたくなりますが、背けてもいいので耐えましょう。
劇中の仰々しいナレーションは「仁義なき戦い」を彷彿させます。
昭和の荒々しさがそこかしこに感じられ、なんだか懐かしさも覚えます。

警察VSヤクザのバイオレンス映画と思いきや、大上と日岡のコンビを描くバディ物としての側面もあります。
序盤は白とも黒とも判別のつかない、完全にグレーな位置にいる大上に翻弄される日岡に感情移入して観てしまいます。
日岡を演じる松坂桃李さんの、心の動きをしっかりと捉えた演技に引き込まれます。
一方で大上の “正義”を一貫して貫き通す姿にも圧倒されます。
男の渋み、強さ、そして汚さを感じさせる大上は暑苦しいけれど人間味の溢れる人物です。
だからこそ、終盤の展開は胸にグッとくるものがあります。
改めて役所広司さんの凄さを感じます。
過激な暴力シーンが話題になりましたが、見応えのあるストーリー構成は、観る対象を選ばない一級のエンターテイメント作品だと思います。

ギラギラした暑い夏を更に暑くさせるような「虎狼の血」。
少し強めのお酒を片手に観たい作品です。

【虎狼の血】
監督:白石和彌
脚本:池上純哉
原作: 柚月裕子『孤狼の血』
ナレーター:二又一成
出演者:役所広司
松坂桃李
真木よう子
滝藤賢一
中村倫也
竹野内豊
中村獅童
音尾琢真
駿河太郎
ピエール瀧
田口トモロヲ
石橋蓮司
伊吹吾郎
江口洋介
製作年:2018年
製作国:日本

※画像はAmazonより引用させていただきました

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