うっとりするようなパリの風景。お家で旅行気分に浸れます。 ウディ・アレン監督作「ミッドナイト・イン・パリ」
私が在籍していた職業訓練校の1日は朝の3分間スピーチから始まります。
スピーチの目的は「人前で話すことに慣れる」でした。
3か月の訓練のうち、1か月目は訓練生さんたちに自由にお題を決めていただきます。
よくお題として挙げられるのは「行ってみたい場所」「行ってよかった場所」「おすすめの店」「おすすめの映画、本」などでしたが、行ってみたい場所、行ってよかった場所で多かったのが「フランス」「イタリア」でした。
映画や小説などに影響されてその地に行きたいと思ったという方もかなりいました。
中でも印象に残っているのは、人形作家になりたいという夢を持っていた23歳の女性です。
人と接することが得意ではなく、仕事をする目的は「作家活動をするための資金作り」と割り切った考えを持っている彼女は、若いながら1本筋の通った素敵な方でした。
けれど彼女は、人前で話すことが苦手と言うより興味がないのか、前に立っても一言二言しか話さないので、ある意味扱い辛い人でした。
しかし、1本の映画作品のことについては、人が変わったように瞳を輝かせ饒舌に語りはじめたので、私も他の訓練生さんたちも驚きを隠せませんでした。
そんな彼女のおすすめ作品が今回ご紹介する「ミッドナイト・イン・パリ」です。
その日の会社終わりに借りに行ったな。
では、あらすじを簡単に。
~ハリウッドの人気脚本家のギルは、1920年代のパリに強い憧れを持っています。いつか住みたいと思っているのですが、婚約者のイネズは「アメリカ以外には住めない」と言います。ギルはイネズの両親と共にパリ旅行に来ますが、彼女の両親はギルの事を毛嫌いしていました。成功を手放してまで夢を追いたいというギルのことが理解できないのです。一行は偶然、イネズの友人ポール夫妻に遭遇します。ポールはイネズが大学時代に夢中になった知的な男性です。翌日、ギルは気が乗らないままポールたちと名所巡りをすることに。ポールはインテリぶって自分のウンチクを語りますが間違いも多く、ギルはイライラを募らせます。そして、小説を書いていて1920年代のパリが好きなギルに対し「現実に対処できない人間のすることだ」と否定します。その夜、ワインを飲み軽く酔ったギルはイネズより先に歩いて帰ろうとする途中、道に迷ってしまいます。やがて24時の鐘が鳴り、なぜか彼の前に古風な車が止まります。パーティへ誘われ思わず乗込むと、そこには信じられない光景が広がっていたのです。
監督はウディ・アレンです。
彼は俳優、脚本家、小説家、クラリネット奏者でもある多才な方ですね。
アカデミー賞にも数多くノミネートされ、監督賞を1度、脚本賞を3度受賞しています。
私が個人的に好きなのは『アニー・ホール』(1977年)です。
ダイアン・キートンの現代にも通じるようなファッションがとってもお洒落!
さすがお洒落番長!
主人公のギル・ペンダーを演じるのはオーウェン・ウィルソンです。
ピクサー・アニメーション・スタジオ制作の「カーズ」の主人公ライトニング・マックィーンの声を担当しているんですね。
脚本家としても活躍されているようです。
さて、ストーリーは一言でいうとタイムスリップものです。
しかしそこにSF感は全くと言ってありません。
ピカソ、ヘミングウェイ、ダリという芸術家たちが活躍する黄金時代と呼ばれる1920年だからなのかな?
煌びやかで素敵です。
私は芸術には疎いのですが、彼が遭遇する上記の芸術家たちの顔と名前は何となく知っているので「それっぽい」と思いました。
ダリが最も「それっぽい」感じだったかな?
とにかく、パリの風景が美しい!
冒頭の彼女も、話の内容よりも風景の美しさに圧倒され、いつか住んでみたいと言っていました。
うん、確かに切り取って飾りたくなるし、パリにも行きたくなります。
過去の人物も自分の生きている時代に不満を持ち、過去に憧れて思いをはせているのが面白かったです。
今の時代も何百年後の人達に「あの時代に憧れる」と言ってもらえるようになるのでしょうか?
新型コロナウィルスが蔓延するこんなご時世なのも相まって、今、私たちがしなければならないことは何だろう?と深く考えさせられる作品だと思います。
※画像はAmazonより引用させていただきました