• HOME
  • ブログ
  • 映画
  • 「A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー」そこにいるものの意識と記憶を旅する映画

「A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー」そこにいるものの意識と記憶を旅する映画

ごんげんさん

息子が4~5歳の頃「ごんげん」という空想上の友達と話したり、遊んだりしていました。
これは「イマジナリーフレンド」(英: Imaginary friend)と言われています。
主に長男、長女、一人っ子に現れる現象で児童期には自然消滅します。
発達過程においては正常な現象のようですよ。

友人の息子さんもやはり一人っ子で彼には「よっちゃん」という友人がいたと言います。
1人で空中に話しかけ笑っている姿はちょっぴり不気味で怖かったです。

面白いのは実在する人物のように姿形がはっきりとしているところ。
一般に言われているのは同性で同年齢くらいの友人らしいのですが、うちの「ごんげん」さんは、中年で白髪交じりの男性だったようです。

着物のようなものを着ていて、少々恰幅がよいおじさまのイマジナリーフレンドなんて面白いですよね。

今はそう思えます。
そして、大きなお屋敷に住んでいるお金持ちということでした。
そのまま消えずに私たち親子を養ってくれればいいのにと考えた母でした。

さて、今回ご紹介する映画は「A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー」
ホラーではありません。

では、あらすじを簡単に

アメリカ・テキサスの郊外、小さな一軒家に住む若い夫婦のCとMは、静かで愛にあふれた幸せな日々を送っています。
しかし、ある日、突然、夫Cが交通事故で死亡してしまいます。
妻のMは病院でCの遺体にシーツを被せ、そのまま病院をあとにします。
ところが、死んだはずのCは突如シーツを被った状態で起き上がります。
周囲の人は誰もそのことに気づきません。
彼は幽霊になってしまったのです。
そして、そのままMが待つ自宅に戻ります。
しかし、Mは彼の存在には気が付くはずがなく。
それでも幽霊となったCは、悲しみに苦しむ妻を見守り続け…。

作品情報

監督の デヴィッド・ロウリーは映画監督、脚本家、編集技師、映画プロデューサーとして活躍しています。
長編映画『St. Nick』(2009年)はサウス・バイ・サウスウェスト映画祭にてプレミア上映されました。
監督作品『セインツ -約束の果て-』(2013年)でもケイシー・アフレックとルーニー・マーラとタッグを組んでいます。

主演の幽霊を演じたのはケイシー・アフレックです。
俳優、監督として活躍されているベン・アフレックはお兄さんです。
目元が似ていますね。
『チェイシング・エイミー』『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』『200本のたばこ』には兄弟で出演しています。
『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(2016年)ではアカデミー主演男優賞を受賞しています。

妻を演じているのはルーニー・マーラです。
先ごろ妊娠中と報道されましたね。
お相手は「ジョーカー」(2019年)のホアキン・フェニックスです。
めでたい。

幽霊目線

全編、セリフが少なく私たちは静かにその場所に居続ける幽霊の目線で、物事の移り代わりを見せられます。
自分がいなくなって悲しむ妻を静かに見続ける。

見守るのではなく、見続けるという感じ。
何もできない。

映像は幽霊の視点で淡々と進んでいきます。

印象に残ったのは、妻が友人からの差し入れのパイ?キッシュ?をキッチンの床に座り込みひたすら食べ続けるシーンです。
ただ一心にフォークを動かし、口に入れ続け咀嚼します。
1人では食べきれないほどの大きなパイ皿を抱えながら、食べる、食べる、食べる。吐くまで食べる。
長回しで写されるルーニー・マーラの姿は少し冗長でしつこいと思われるかもしれません。

大切な何かを失い、それでも正気を保ったまま生活していこうとするのですが、押し寄せる悲しみをどうすることもできずいる怒りとも思えるシーン。
妻の感情、それをただ見ているしかできない幽霊のもどかしさ。
切なさが押し寄せてきました。

人生に終わりはあるけれど、魂の終わりは?

生活音と静かなBGMが幽霊の孤独を際立てていて寂しさが伝わってきます。
眼だけがくりぬかれたシーツを被った幽霊ですが、観ているうちに可愛らしく思えてきます。

ホラーではありません。
幽霊と一緒に旅をしているような感覚に陥るふしぎな余韻を残す映画です。

【A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー】
監督:デヴィッド・ロウリー
出演者:ケイシー・アフレック
ルーニー・マーラ
2017年 アメリカ

※画像はAmazonより引用させていただきました

関連記事一覧