イタリアのクリスマスを彩るお菓子いろいろ!その歴史もまた愉し!

イタリアのクリスマスは食道楽。

一族郎党が集ってとにかくよく食べます。そしてこの時期にしか食べることができないお菓子もいくつか存在し、クリスマスの雰囲気をいやがうえにも盛り上げてくれるのです。今日はそのクリスマスのお菓子についてご紹介したいと思います。

24日夜から続くクリスマスシーズン

日本では25日が過ぎればお正月のデコレーションが始まりますが、イタリアは12月24日の夜半からクリスマスの行事が開始し、25日は当日、26日は聖ステファノの祭日と続きます。この3日間は家族と過ごし、年末から年明けは友人たちと大騒ぎをするのが常。1月6日の公現祭という宗教的な祭日が、冬のイベントの締めくくりとなります。クリスマスの飾りもこの日まで据え置き。
ちなみに、24日の夜は肉類は食さず魚介類や野菜が主役、25日と26日はお肉も大量に登場する食卓を囲むことになります。
これらの膨大な量の料理にもかかわらず、欠かせないのがイタリアのクリスマスのお菓子「パネットーネ」と「パンドーロ」なのです。

ルネサンスの時代に誕生したパネットーネ

パネットーネはドライフルーツが入ったドーム型のケーキ。12月に入るとスーパーからバール、お菓子屋さん、ありとあらゆる場所に値段もピンキリのパネットーネが並びます。
パネットーネの起源には諸説ありますが、よく引き合いに出されるのがルネサンス時代に誕生したという説。それはこんなお話です。

16世紀、レオナルド・ダ・ヴィンチも滞在していたミラノの宮廷でクリスマスの晩餐が行われていました。ところが宮廷付きのコックはデザートに用意したお菓子を焦がしてしまったのです。その様子を見ていた皿洗いの少年トーニが、食糧庫にあった小麦粉、バター、卵、干しブドウ、シトロンの皮を使って自分用に作ったお菓子があると名乗り出ます。背に腹は代えられないと覚悟を決めた料理人が、このトーニのお菓子をデザートに供したところ、公爵も客人もその美味しさに驚きお菓子の名前を尋ねます。
料理人は、こう答えました。
「トーニのパンです(パン・デ・トーニ)」。
これが、パネットーネの起源とされているのです。

パンドーロの故郷はヴェローナ

パネットーネにはドライフルーツが入っているため、子供たちがより好むのはシンプルなパンドーロのほうです。
パンドーロの故郷はヴェローナ。そう、ロミオとジュリエットの舞台となった町です。パンドーロはふわふわとした食感が特徴の高さのあるカステラのようなお菓子です。粉砂糖をこれでもかとまぶして食べます。

そもそもヴェローナには13世紀までさかのぼる「ナダリン」というお菓子があったことがわかっています。しかしこのナダリンは、現在のパンドーロとは似ても似つかない形状で、ふわふわ感もよい香りもないお菓子であったそうです。
パンドーロ(金色のパン)がその名にふさわしくなるのは18世紀以降といわれ、卵をふんだんに使うため黄身が目立つ生地であること、イースト菌が普及してふわっとした食感と高さのある形状が可能になった時代に入ってからです。
北イタリアらしくバターをたくさん使ったパンドーロは香りもよく、温めて食べると朝食用のカプチーノにも格好の美味。
クリスマスのごちそうのあとでも、別腹で食べられてしまうデザートなのです。

バリエーションもさまざま

クラシカルなバネットーネとパンドーロは比較的シンプルな味わいですが、近年はバリエーションが非常に豊富になりました。
チョコレートはもちろん、ピスタチオクリームが入ったもの、アーモンドパウダーを使ったものなど種類は様々。値段も、スーパーで売っている大手の菓子メーカーの安価なものから、数量限定の高価なものまでピンキリです。
ちなみに我が家はシチリアの菓子工房から毎年取り寄せていますが、とにかくチョコレートクリームやピスタチオクリームの量が尋常ではなく、100gあたりのカロリーが390kcal超。
どうせこのシーズンにしか食べないのだからと言い訳をしながら、家族で豪快にほおばっているわけです。

その他のクリスマス菓子

イタリア全土で名前こそ異なるものの、食感がよく似たお菓子も存在します。我が町では「パンジャッロ」と呼ばれますが、多少風味を変えた「パンペパート」「パンドゥーロ」と呼ばれることもあります。これは大量のドライフルーツを蜂蜜で練りこんでわずかに小麦粉を加えて焼くお菓子。オレンジピール、アーモンド、クルミなどが入ったこのお菓子、とにかく重さがあり度し難く胃にくる重々しさが特徴。
まだ貧しかった時代のイタリア人が、クリスマスの寒い時期にエネルギー補給も兼ねて食べていた長期保存が可能なお菓子といった趣です。
ただしこれも薄く切って食べると非常に美味しく、田舎の小さなパン屋さんでもオリジナルレシピを駆使したこのお菓子を見ることがしばしば。
飽きがこない素朴な味わいが愛されているのです。

コロナの時代のクリスマス

この2年弱の新型コロナウィルスの影響で、イタリアのクリスマスの在り方も少しずつ変わってきました。
かつては親戚一同がにぎやかに集い、食べきれない量の料理をマンマたちが用意するのがクリスマスの光景でした。
しかしコロナの感染拡大で大人数での集いは避けられるようになり、ごく親しい人たちと食料廃棄を避けるべく分別を持った過ごし方をする家庭も増えました。
愛する人たちの健康と笑顔があればそれが一番。
家族至上主義のイタリアのクリスマスはそれこそがなによりの御馳走といったところかもしれません。

【参照元】
https://www.lacucinaitaliana.it/news/in-primo-piano/panettone-e-pandoro-origini/
https://www.visitareroma.info/pangiallo-romano-storia-e-ricetta-del-dolce-capitolino/
https://www.ilgiorno.it/cronaca/natale-regali-anticipo-e-prenotazioni-bloccate-1.7064340

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