ピカソやシャガール、モディリアーニなどのヨーロッパ近代美術が無料で楽しめる、パリ市立近代美術館のススメ
こんにちは。
皆さんは、中世美術と近代美術、どちらがお好きですか?
私は以前、中世美術の虜でした。
ですが、パリに来てからは近代美術の魅力にも目覚めてしまいました。
近代美術(モダンアート)は、主に1860年代から1970年代までに制作された芸術作品を指します。有名どころで言うと、マティスやピカソ、ゴッホやモネの作品がそうです。
それぞれ独特な画法が光っていますし、自由さや画家の感情が伝わってくる名作ばかりですよね。
パリ市立近代美術館では、そんな近現代の作品が数多く展示されています。
幅広い作品を取り扱うポンピドゥーセンター(パリの国立近代美術館)とは異なり、ここではフォービズムとキュビズムを中心に20〜21世紀の近現代美術に焦点を絞っています。
コンパクトで見やすく、立地も最高な(しかも無料!)パリ市立近代美術館の魅力をご紹介しましょう。
所蔵品は約15,000点!
パリ市立近代美術館は、規模の面ではルーブル美術館やオルセー美術館には劣るものの、1920年代から現代に至るまでのコレクションは世界的に見てもトップクラスです。
実はパリ市が運営しているので、これだけの作品を有しているにもかかわらず無料で観賞することができるんです。
ほとんどの商業施設が閉まる日曜日にもオープンしているので、観光客のみならず時間に余裕のある近隣住人にとってもありがたい限り。
エントランスから入ってすぐの巨大アート。
個人的に思ったのは、近現代美術は“空間込みでアートになっている”ということです。配置する場所、背景の壁の色、音、採光。全部が演出になりますね。
日本の古民家なんかにこういうモダンアートを飾るとお洒落になりそうです。
巨匠たちのコーナー
近代美術を代表する画家として、ピカソの作品もいくつかありました。
パリ・オペラ座の天井画を担った画家、シャガールの作品も。やっぱりシャガールの活き活きとした色使いは良いですね。
ありのままの自然を写し取る自然主義的な色使いではなく、ダイナミックでリズムがあります。それに彼の絵は何だかステンドグラスのようです。
退廃芸術家、モディリアーニの『青い目の女』。
瞳を描かないことが大半のモディリアーニ作品のなかで、瞳が描かれている貴重な作品です。
フランスに帰化した日本人画家、レオナール・ツグハル・フジタ(藤田嗣治)。
日本画の技術と西洋絵画を融合させた彼の絵は、フランスでは「浮世絵」に次いで有名なのではないでしょうか。
20世紀初頭のパリ芸術黄金時代に、日本人画家として唯一活躍した前衛画家でもあります。
乳白色の女体画はフジタ絵の特徴ですが、水墨画のようなタッチと細かい描写が素晴らしいですね。近代美術のなかでもかなり繊細でナイーブな作品だと思います。
ダダイズムとシュルレアリスム
ダダイズムとは、第一次世界大戦中にヨーロッパやアメリカの都市で起きた芸術運動です。
特徴的なのは、「人間の理性」を否定していること。
これは何かというと、例えば文明は理性のもとで創られています。「人間の理性」の否定は、すなわち作為の否定であり、意識の否定でもあります。
戦争でたくさんの人を殺め、破壊を繰り返す世界。
これが理性なのか?それならこの世で意識的に作ったものなんか全部クズだろう。となったわけです。
そこで生まれたのが意味の無い芸術です。
偶然に生まれたものが無作為の美となって、アートとなったんですね。
ニューヨーク・ダダイズムの創設者、フランシス・ピカビアの作品。
そしてダダイズムの後に起きた芸術運動がシュルレアリスムです。
日本語に訳すと「超現実主義」となり、芸術の流れが「理性を壊す」ものから「無意識の世界」へと移行します。
つまり、自由です。
無意識は自由ですし人間の本質ですよね。
ホンモノの芸術でもありますし、それが美にも繋がります。このような思考のもとで、シュルレアリスムは20世紀パリにおいて盛り上がりを見せました。
現代アート
シュルレアリスムの後に巻き起こった芸術運動が「抽象表現主義」と呼ばれるものでした。
それまでパリが中心となっていた美術の中心地がニューヨークへ移り変わった運動でもあります。
キャンバスに絵具をしたたらせる画法によって、絵を描く工程自体が強調された「アクション・ペインティング」。
完成品ではなく、「作品を生み出すことに注目」すること自体が斬新と言えますし、絵画を見る際の視点も増えますね。
激動の1960年代。
こちらは廃車を圧縮させたオブジェクト。何らかのアンチテーゼでしょうか。
現代美術ではアジア系のアーティストも台頭しています。
こちらは韓国系アメリカ人の美術家、Nam June Paik(ナム・ジュン・パイク)の作品。ビデオ・アートの開拓者です。
絵画以外にも、本当に興味深い作品がたくさんあって、良いインスピレーションを得ることができました。
穴場です!
近代美術はやはり躍動感がありますね。
中世美術との違いは、画法の縛りがなく自由度が高いところ。そして映画のように、「受け手に解釈を任せる」といった謎解きの部分が多いところではないでしょうか。
それにパリ市立近代美術館の出口にあるテラスのカフェでは、エッフェル塔やセーヌ川を眺めながらのんびりすることもできますよ!
2021年の6月9日からは、日本を含む一部の国がPCR検査・隔離措置なしでフランスに入国できるようになりました。
以前のように、自由に海外旅行できる日ももうすぐ♪
ルーブルなどの大規模な美術館に疲れたら、このパリ市立近代美術館を訪れてみたらいかがでしょうか。
パリ市立近代美術館 Musee d’art moderne Paris
ホームページ : http://www.mam.paris.fr/en/exhibitions