19世紀末の芸術に魅了されすぎたら世界が広がった☆the decadence☆ Vol.20【展覧会2019-後編】

皆さん、こんにちは。
前回はこちらの写真についてちょっとだけお話させていただきました。

ディレクター:ロゼッティ
服飾デザイン:ロゼッティ
服飾制作:ジェーン・モリス
構図指導:ロゼッティ
フォト:ジョン・ロバート・パーソンズ
モデル:ジェーン・モリス
制昨年:1865

ジョン・ロバート・パーソンズはアイルランド出身のフォトグラファ兼画家です。
ジョンはロゼッティの依頼でジェーン・モリスをモデルに多くの写真を撮りました。
その中で、私がいちばん好きな写真はこれです。

「構図」が大好きです。
モデルのポーズや、モデルと衣装と花のバランス、光の明暗、昔のカメラのレンズ特有である周囲の光が回っているような感じやボケ感…どれもステキだなあと感じます。

今回も前回に引き続き2019年に足を運んだ展覧会ついてお話したいと思います。
2019年はラファエル前派繋がりの展覧会が例年より多く開催された印象がありますが、ファッション系の展覧会も比較的多かったと感じています。
ファッション系に関しては、2020年に開催予定の展覧会がさらに増える見込みです。

そこで今回は、2019年に足を運んだファッション系の展覧会についてお話していきますが「ファッション系」の定義ってそもそも何なのか…
おそらく解釈は様々ですよね。
ここでは服装のコーディネートではなく、モデルを使った芸術的な作品という観点からお話したいと思います。
冒頭で紹介した「ジェーン・モリス」の2枚の写真がそのイメージのひとつです。
現代なら、デサイナー、衣装、ヘアメイク、フォトグラファ、モデル、ディレクターなど様々な分野のアーティストがいて、世界観を作り上げます。
それを写真を通して表現する芸術といったイメージの作品をいくつかご紹介したいと思います。



不思議の国のアリス展

「不思議の国のアリス展」
(2019/09/21-11/17, そごう美術館)

現在も巡回中の展覧会です。

不思議の国のアリス展公式サイト
http://www.alice2019-20.jp/

『不思議の国のアリス』といえば、作者のルイス・キャロルが多才すぎる‼という印象が個人的には強いです。
数学者であり、作家であり、フォトグラファなど才能に溢れているんです。
ルイス・キャロルの場合、数学的思考が長けていた故に、執筆や写真においても理論的なアプローチという強みを生かして素晴らしい作品を創作できたのかもしれませんね。
「不思議の国のアリス展」で、私が特に惹かれたのはふたりのフォトグラファによる「写真作品」です。

ひとりは、『不思議の国のアリス』の作者ルイス・キャロル。
アリス・リデルという少女をモデルに撮影した『乞食娘』(1858)という作品です。
ルイス・キャロルはアリスをモデルとして多用し、自身で作品まで創作しました。
それにしても美しい!

因みに、ルイス・キャロルは、ラファエル前派兄弟団をはじめとする19世紀後半のイギリスの芸術家らとの親交が深く、ミレイ一家の写真を度々撮っていました。

ミレイとエフィとふたりの子どもの家族写真
(1865年撮影)
画像引用元:
http://junglefrolics.blogspot.com/2016/01/

ミレイとエフィの物語はこちらをご参照ください。

もうひとりのフォトグラファは、ロシア人のウラジミール・クラヴィヨ=テレプネフです。
『不思議の国のアリス』の物語をテーマにした写真作品を手掛けました。
展覧会で初めて目にした瞬間に惚れました。
芸術的すぎて溜息が漏れるほど。
10点近くの作品が展示されていましたが、実際に撮影されたシーンは50パターン以上ありそうです。
作品のための衣装と人形の創作のすべてを手掛けたロシア人のデザイナー、エレナ・スープレンがそれらを完成するのに約10年費やしたそうです‼

ヘアメイク展

『May I Start? 計良宏文の越境するヘアメイク』展
(2019/7/6-9/1, 埼玉県立近代美術館)

ステキすぎて、3回行った展覧会です。
資生堂のトップヘアメイクアップアーティストである計良宏文(けら・ひろふみ)さんの展覧会、どれも美しすぎて震えました。
ヘアやメイクに芸術性を取り入れる発想力‼当たり前ですが、自分には到底思い付かない作品が溢れていました。
特に印象的だった作品…はありすぎるので、ここでは「こういう発想力が欲しい!」と思った作品のうち、2点を紹介していきます。

ひとつは、「ヘッドフォン」です。
髪の毛で作られていました。
実用化できたら面白いなあと、ひそかに販売を心待ちにしています。
全部髪の毛で編み込みされていました。
ふたつ目は、花を使った作品です。

白を基調としたヘア&メイクアップと衣装に赤が映え、見た瞬間、惹かれました。

アーティストたちの創作が写真ひとつひとつに集約されており、作品そのものの展示ではなく、作品を写真のなかにしっかりと入れ込むフォトグラファとしての技術もスゴいと改めて感じました。

展覧会をさらに楽しむ!

お話したい展覧会はまだまだありますが、ここからは展覧会をさらに楽しむ方法をふたつお話したいと思います。

ひとつは普段から展覧会情報の収集をし、あらかじめ行きたい展覧会リストを作っておくことです。
スマホや手帳のスケジュール欄に興味のある展覧会情報を入力しておくのがオススメです。
行きたい展覧会の優先順位をつけ開催期間や開催場所を考慮しながら予定を決め、時間的な余裕があれば他の美術館や、美術館の近場のカフェやショッピング巡りをする予定を考えたり。
このように具体的な計画を立てると心がウキウキしませんか。

展覧会情報は主に、ネットや美術館で収集することができます。
例えばネットで「展覧会 大阪」をキーワード入力すると、大阪で開催される展覧会情報の一覧を見ることができます。
大阪以外でも大丈夫です。
すでに興味のある分野を持っている方は、それをキーワードに検索することもできます。

美術館に行った際には、館内に置かれた持ち帰り可能なパンフレットや壁に貼られた特大ポスターから展覧会情報が収集できます。
因みにパンフレット自体が美しいものもたくさんあるので、それらをコレクションしていくのもまた面白いかもしれませんね。

もうひとつは、展覧会で作品鑑賞する際に撮影可の作品に対しての好きな撮り方を持っておくことです。
例えば
・ひとつの作品を全体的に撮影する
・ひとつの作品のディテールを、好きな構図で撮ってみる
・複数の作品を好きな角度から撮影することで、展覧会の風景のように撮ってみる
などです。

勿論、本来は作品鑑賞がメインなので、長時間の撮影は控える必要があります。
自分の好きな撮影方法が分かっていると、写真に残したい作品をスムーズに撮影することができます。

一方で、最近は作品撮影にも時間をかけてOK!という展覧会もあります。
そういった展覧会では他のお客さんに迷惑をかけない範囲で、イロイロな構図で撮影を試してみて、自分の好きな撮影の仕方を身に付けていくのもありかもしれませんね。
会場内で係員の方が「こうするとうまく撮れますよ!」と声を掛けてくれることもあります。

一言で「展覧会」といっても、厳粛なものから気軽に楽しめるものまで幅広いので、臨機応変に撮影を楽しめると展覧会をより有意義なものにできそうですね。
個人的にはディテールの撮影が大好きなので、好きな作品をイロイロな構図で撮ることが多いです。

他には、例えばCHANELの展覧会では床のリフレクションも考えられていたので、そこを入れて撮影を楽しみました。

「マドモアゼル プリヴェ(Mademoiselle Privé)展 – ガブリエル シャネルの世界へ」(2019/10/19-12-1, 天王洲アイルB&C HALL )

ただし、展覧会での撮影にはマナーがあります。
・人がたくさんいるときは撮影を控える
・フラッシュは厳禁(作品が劣化してしまうため)
・作品と一緒に自撮りはNG(撮影可とは作品の撮影が可能という意味。作品を鑑賞したい人の妨げになってしまうため)

でもでも、様々な美術館で作品だけでなく仮装や自撮りなどを楽しめるスポットを設置している場所もどんどん増えているんです。

最後に、ファッション系の展示を楽しめる美術館とウェブサイトを紹介したいと思います。

神戸ファッション美術館(神戸);様々な企画展が定期的に開催されています
https://www.fashionmuseum.or.jp/about/#goods

文化学園服飾博物館(東京) ;様々な企画展が定期的に開催されています
https://museum.bunka.ac.jp/

メトロポリタン美術館(マンハッタン):ウェブサイトで様々な時代の衣装を見ることができます
https://www.metmuseum.org/about-the-met/curatorial-departments/the-costume-institute
吉田ユニさん公式サイト:展覧会で展示された作品を含め、多数の作品を見ることができます
http://www.yuni-yoshida.com/

前回から2回に渡って、2019年に私が足を運んだ展覧会についてお話しました。
「ラファエル前派兄弟団繋がり」「ファッション系」が多い、というのは、私自身が興味を持っているからそのように感じるのでしょうね。

次回は写真と絵画についてお話したいと思います。

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