熱い愛はじわじわとくる。映画「湯を沸かすほどの熱い愛」

毎週土曜日にNHKのBS放送でまとめて放送される連続テレビ小説を観るのが楽しみです。
昨年放送された窪田正孝さん、二階堂ふみさん出演の「エール」にがっつりハマったからなのです。
「エール」が終了してから言いようのない寂しさを感じ「ああ、これが”ロス“ってヤツね」としんみり。
しかし、現在放送されている「おちょやん」も中々に面白いのです。
「エール」とほぼ同じ時代のお話ですのですんなり話に入れました。
松竹新喜劇で活躍した上方女優で「大阪のお母さん」として親しまれた浪花千栄子さんを題材にしたお話です。
主演の杉咲花さんは東京出身ながら大阪弁に違和感がなく、なによりも元気で可愛くこちらも笑顔になってしまいます。もう、毎週楽しみ。

さて、今回ご紹介する映画はその杉咲花さんが出演している「湯を沸かすほどの熱い愛」です。



では、あらすじを簡単に

銭湯「幸の湯」を営む幸野家は、父の一浩が1年前に蒸発したため現在は休業中です。
母の双葉は持ち前の明るさとタフさで、パン屋のパートの仕事をこなしながら娘・安澄を育てていました。
一人娘の安澄は高校生ですが、なにやら最近学校でいじめにあっている様子。
学校に行きたくないようです。
そんなある日、双葉は店で接客中に倒れてしまいます。病院で精密検査をしたところ、ステージ4の末期がんで余命もあとわずかと宣告されます。
休業中の銭湯の湯船でひとしきり泣いた双葉ですが、死ぬまでにやるべきことを決心します。
まずは、探偵を雇い蒸発した一浩の居場所を突き止め、銭湯を再開させることから始め、気弱で優しすぎる娘を独り立ちさせること…。
そして秘められていた家族の秘密も解き放されることに…。

作品情報

監督は京都出身の中野量太さんです。大学を卒業後上京し、日本映画学校に入学し3年間映画製作を学び、卒業後は映画やテレビの助監督、ディレクターとして活動していたようです。
本作『湯を沸かすほどの熱い愛』で商業映画デビューを果たすと、その年の国内の主要な映画賞を次々と受賞しました。

主演の双葉を演じたのは宮沢りえさんです。若い頃はとにかく奇抜な企画や話題が先行していましたが、現在は本作のような母親役や時代劇で見せる落ち着いた演技が評価され、演技の幅の広い本格女優としての地位を確立しました。
中野監督によるとダメ元でオファーしたようですが、脚本を読んだ宮沢さんは即決したようです。

娘役は杉咲花さん。彼女が泣いてしまうとついつい誘われて泣いてしまう。
本当に感極まって泣いている人そのものという感じがします。
演劇漫画『ガラスの仮面』に登場する指導者・月影先生だったらきっと「恐ろしい子…」と言うでしょう。

お湯は熱めがいい

双葉は明るくて強い人ですが、かと言って完璧なスーパーウーマンではありません。
癌を宣告された時は湯船の中で夕食を作るのを忘れるほど泣いたり、夫の居場所に乗り込み、お玉で思い切り叩き出血させたりと、感情のままに行動もするごく普通の女性であり母親です。
双葉がすごいのは、感情を切り替えることができること、引きずらないことです。
そして何よりも家族のことを第一に考えて行動すること。
宮沢りえさんのすごく慈愛のこもったまなざしは母そのもの。それを受ける杉咲花さんの目にも母親に向ける子の信頼が感じられ本当の親子のよう…。
すごい人たちだ。
感極まって私も泣いてしまいました。
物語の終盤に向けて家族の秘密も明かされていきますが、秘密は一つだけではありません。
ラストもアッと驚く展開が待っており、そこで私たちはタイトルの意味を知ることになります。
ちょっと熱めの銭湯のお湯に浸かった後のように身体の芯から温まる、そんな作品です。

【湯を沸かすほどの熱い愛】
監督:中野量太
脚本:中野量太
出演者:宮沢りえ
杉咲花
伊東蒼
松坂桃李
オダギリジョー
音楽:渡邊崇
主題歌:きのこ帝国「愛のゆくえ」
製作年:2016年
製作国:日本

※画像はAmazonより引用させていただきました

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