夢も希望も光もない圧倒的な狂気 映画「光」

夏の太陽のギラギラとした光は苦手ですが、今くらいの時期に部屋に差し込む光は柔らかくてホッコリします。
気分が落ち込んでいても少し和らぐ気がします。

出不精な私もなんだかお出かけしたくなるような気分になります。

以前、勤めていた会社の窓際につるされていたキラキラしたオブジェ、サンキャッチャーというのかな?
事務員さんがどこかへ行った時のお土産だと思うのですが、晴れた日には壁にゆらゆらと揺らめく光が反射され、水族館にいるようでした。
ずっと眺めていると眠くなってきます。
癒されていたんでしょうね。
あれ、いいな。買おうかな。

さて、今回ご紹介する映画は「光」です。



では、あらすじを簡単に

東京の離島である、美浜島に住む中学生の信之の世界は、美しい恋人の美花を中心に回っています。
輔(たすく)は父親から激しい虐待を受けています。そんな輔は年上の信之をとても慕い、信之にいつもくっついて歩いています。
輔の置かれた悲惨な環境を気の毒には思う信之ですが、美花にしか関心のない信之は輔を疎ましく感じることもあります。
ある日、信之は、輔に人を殺めるところを見られてしまいます。
信之が殺した男性は、美花に乱暴をしていたのです。
そして、その夜、理不尽で容赦ない天災が島に襲いかかり、生き残ったのは信之と美花と輔、そして数人の大人たちだけでした。
3人は高台に居たために難を逃れられたのです。
それから25年後、島を出て妻子とともに暮らしている信之と、過去を捨て、きらびやかな芸能界で活躍する美花の前に、誰からも愛されずに育った輔が突然姿を現し……

作品情報

監督は大森立嗣さんです。
以前ご紹介した「セトウツミ」の監督さんですね。
弟は俳優の大森南朋さんです。
最近『タロウのバカ』(2019年)『MOTHER マザー』(2020年)『星の子』(2020年)と立て続けに心をかき乱されるような作品を発表されていますね。
『タロウのバカ』と『MOTHER マザー』は私も観たのですが、しんどかった…。
グサッと心がえぐられる作品でした。
本作も別な意味でえぐられますよ。

主演は井浦新さんです。最近、ドラマにもよく出演されていますね。私の推しの一人です。大人の色気を感じますね。
そして、瑛太さんです。こちらも観るたびに演技の引き出しの多さに驚かされます。
信之の妻、南海子は橋本マナミさんです。生活感のある主婦役、意外と合っていました。生々しい色気を感じます。
長谷川京子さんは大人になり女優になった美花=“篠浦未喜”を演じています。
ミステリアスで妖艶ですよ。底知れない闇を感じました。

ヒリヒリとする

映画や小説もそうですが、心に染み入る感動作もあれば、ぐさぐさと刃でさされるような後味の悪い作品もあります。
この作品はどちらかといえば後者であり、意図的に狙った作品かと思います。

25年前の大津波による理不尽で圧倒的な暴力から逃れ生き延びた3人。
災害は信之の犯した罪も覆い隠してしまいました。

しかし、犯した罪からは25年経っても逃れられることはなく、徐々に追い詰められ、自身の暴力的な側面も露わになっていく…。
井浦新さんの無表情に近い表情は何を考えているかわからない怖さがあります。

一方で、愛された記憶のない輔は、子供の頃の無邪気さと狂気が入り混じって不気味。こういった役を演じさせると瑛太さんの凄さがわかります。
輔が求めた光は信之だったのかな?

島の茹だるようなまとわりつくようなジメジメとした空気が終始漂っている感じがします。

時折カットインしてくる謎のアート、リモコンの音量調節が必須なささくれだったBGM。心がざわざわとひりつきます。
光は闇を覆うけれど、闇を暴くものでもあるのだなと感じました。

【光】
監督:大森立嗣
脚本:大森立嗣
原作:三浦しをん『光』
出演者:井浦新
瑛太
長谷川京子
橋本マナミ
音楽:ジェフ・ミルズ
製作年:2017年
製作国:日本

※画像はAmazonより引用させていただきました

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