ロマンチックな雪にまつわるトリビア!イタリアの雪はおいしい?

南国のイメージがあるイタリアですが、降雪量は決して少なくありません。
北イタリアはもちろん、南イタリアでも雪が積もることが珍しくないのです。そのイタリアには雪にまつわる楽しいお話もたくさんあります。
今日はそのうちのいくつかをご紹介したいと思います。

ピーテル・ブリューゲル作《雪中の狩り》1565年ウィーン美術史美術館所蔵

雪にまつわる伝説

イタリアの首都ローマには、バチカンのサン・ピエトロ大聖堂を含む重要な教会が4つあります。
サン・ピエトロ大聖堂、サン・ジョヴァンニ・イン・ラテラーノ大聖堂、サン・パオロ・フオーリ・レ・ムーラ大聖堂、そして聖母マリアに捧げられたサンタ・マリア・マジョーレ大聖堂です。
テルミニ駅からも近いサンタ・マリア・マジョーレ大聖堂は、いかにも女性的な美しい教会です。この大聖堂には雪にまつわる伝説があります。
西暦352年、ローマの貴族のジョヴァンニという人が妻の懐妊を祈るために聖母マリアに捧げる教会を建てようと決心します。8月のある夜、なんとジョヴァンニの夢に聖母マリアが現れて「雪が降る場所に教会を建てよ」と示唆したそう。
しかも同じ夜、ローマ教皇リベリウスも同様の夢を見たというのです。そして8月のローマに雪が積もった場所に、現在のサンタ・マリア・マジョーレ大聖堂が建てられたというお話。
現在もその雪が降ったといわれる8月5日は、雪を模した白い花びらが撒かれる儀式が行われています。
この伝説、何人かのローマ教皇は「根拠がない」という理由で否定したのですが、ローマっ子は8月の雪というロマンを愛し、数世紀に渡ってこの儀式を守っているわけです。
サンタ・マリア・マジョーレ大聖堂はそのため、別名をサンタ・マリア・デッラ・ネーヴェ、つまり「雪の聖母の大聖堂」とも呼ばれています。

マゾリーノ・ダ・パニカーレ作《サンタ・マリア・マジョーレ大聖堂の建立》1423年頃 ナポリ・カーポディモンティ美術館所蔵

雪で生計を立てた人々

ところで、ローマ近郊の山の街には「雪の」という形容詞が着く教会が目につきます。また「ビアンカ(白)」とか「ビアンカマリア(白いマリア)」という女性の名前が多かったという記録が残っています。

実は19世紀に冷蔵庫が発明され普及するまでは、富裕層は食物の保存やシャーベットを食べるためにこうした街から雪を購入していた歴史があるのです。
たとえばシチリア島のパレルモならばマドニエ産地から、ナポリならばヴェスビオの山から、ローマならばトルファやテルミニッロの山から雪が都市部に運ばれて、夏の暑さを癒していたのです。雪質にまでこだわった貴族によれば、ローマの南部に位置するロッカ・プリオーラの雪はことのほか珍重されたのだとか。
貧しい山の村にとってこうした雪は、まさに生活を支えてくれる貴重な資源。できるだけたくさん雪が降るように祈るために、雪の名を冠した教会が建てられているわけです。雪には女性的な美しさを感じるのか、そのほとんどが聖母マリアに捧げられているのがイタリアの特徴かもしれません。
えげつないことに、こうした雪にも税金がかけられていたのだとか。
それでも小麦畑もない山の人々にとっては貴重な収入源であったことでしょう。

雪はすなわちジェラート!


雪を購入した貴族は、これをジェラートにして食べていました。
とはいえ、ジェラートに牛乳が加えられるようになるのは18世紀。それまでは牛乳は貧しい人々の食材という概念が存在していたため、富裕層は雪に砂糖やはちみつ、卵やフルーツを混ぜてたべていたそう。
いわゆるシャーベットですが、この冷菓を愛した偉人にはアレクサンダー大王、カール大帝、カテリーナ・ディ・メディチなどのお歴々が。
今もフランスのパリに残る創業1686年のカフェ「ル・プロコープ」は、このジェラートを看板にしたシチリア人フランチェスコ・プロコッピオによる開業。
雪がもたらした食文化ジェラートは、イタリアから欧州各地に広がっていったというわけです。

ローマの町も数年に1度は大雪に見舞われます。
雪に覆われたローマは交通が遮断されてけが人も続出という体たらくですが、その景色の美しさは無類。
さあ、今冬はどうなることでしょうか。

【参照元】
https://www.fanpage.it/roma/miracolo-della-neve-il-5-agosto-a-roma-come-nata-la-basilica-di-santa-maria-maggiore-allesquilino/#:~:text=La%20leggenda%20vuole%20che%20il,chiesa%20dedicata%20alla%20Vergine%20Maria.&text=Pu%C3%B2%20nevicare%20di%20agosto%3F,Secondo%20la%20leggenda%20s%C3%AC.
Il libro dei simboli Matilde Battistini著 Electa刊
Il genio del gusto Alessandro Marzo Magno著 Garzanti刊

関連記事一覧