父、母、どちらの望みも辛く哀しい 映画「望み」

先日、息子と私の妹2人(双子)が3人で美容室に行った時のこと。
今までは行きつけの床屋さん(かなりお洒落なんですよ!)に行っていたのですが、髪型をマッシュにしたいということを妹たちが聞きつけ、自分たちが通っている美容室に予約を入れ、連れて行きました。
ところが、帰って来て3人は大げんか!
「何があったの?」
と聞く私に妹たちは、
「態度が悪い。女性は嫌だというから男性美容師を指名したのに相手が話しかけても“ハァ~、そうですね…”とかそっけなくて、失礼だ」
とのこと。
息子の言い分は
「いつもの床屋に行きたかった。プライベートのこと聞いてくるし、そういうの苦手なんだよ」だそうです。
わかる。私もすごく苦手。
そして、最大の原因は
「なんで高2にもなっておばさんと、美容室行かなきゃいけないの?」
はぁ…。やっぱり。
息子が洋服が欲しいとか、お洒落な髪型にしたいと言うと妹たちは昔から張り切ってしゃしゃり出てくるから…。でも、なんでも与えて貰っているのだから、そこはうまくやればいいのに…。私も助かっているし…。
まったくもう、17歳、扱いにくい年ごろです。

さて、今回ご紹介する映画は「望み」です。



では、あらすじを簡単に

1級建築士の石川一登は自身がデザインを手がけた自宅で、編集の仕事をしている妻の貴代美と、高校1年生の規士、そして高校受験を控えた中学3年の娘の雅と4人で幸せに暮らしていました。
しかし、息子の規士は怪我でサッカー部を辞めてから無断外泊が多くなりました。ある晩、一登は家族で夕食を囲む最中、規士に言います。
「何もしなかったら何もできない大人になる」
バン!とテーブルをたたくと規士は自分の部屋にこもってしまいました。
年があけ、冬休み中のある日、規士は家を出たきり、帰らなくなります。連絡も途絶えたままです。翌日、夫婦は警察に届け出るか相談していると規士の同級生が殺害されたというニュースを目にします。
そして、一登の家にも警察が訪れ規士も関与している可能性が高いと言います。
どこから聞きつけたのか、一登の家の周辺はマスコミで溢れかえり、更にもう一人殺されているかもしれないという噂も広がり始め…。

作品情報

監督は堤幸彦さんです。1955年生まれ三重県出身です。
監督デビュー作は1988年、森田芳光さんが総監督を務めたオムニバス映画『バカヤロー!私、怒ってます』の『英語がなんだ』です。1990年『![ai-ou]』で長編映画デビュー。
堂本剛さん主演のTVドラマ『金田一少年の事件簿』で一躍注目を集め、その後の『ケイゾク』『TRICK』『SPEC』シリーズは映画化もされ、大ヒットしました。
斬新で独特な演出は癖になります

石川家の父、一登を演じたのは堤真一さんです。
シリアスからコメディまで演技の幅は広く、TVドラマ、映画を始め舞台でも活躍されています。

そして母親役を演じたのは石田ゆり子さんです。
ナチュラルな美しさは年齢を感じさせません。SNSで発信される丁寧な暮らしぶりも注目されていますね。

行方不明になる規士を演じたのは岡田健史さんです。
デビューしたころの初々しいイメージは一掃され、演技にも磨きがかかり、今、最も注目を集めている若手俳優です。

胸が苦しい

原作は雫井脩介さんの小説です。執筆時、これまで最も苦しみ抜いたというのが本作「望み」です。
息子が加害者ではないと信じたい父親、加害者であっても生きていてほしいと狂ったように願う母親の気持ち。どちらにも共感できるし、どちらに転んでも不幸。
そして、兄は大好きだけれど自分の将来を気にしてしまう妹の気持ちもわかります。親子、兄妹、家族であっても思いは食い違うものだということを痛感しました。
そして、事件を嗅ぎつけ、スキャンダラスに報じるマスコミ。それに踊らされる人々の軽薄で愚かな行為…。吐き気を催すほど醜いし憤りを感じました。
登場人物の心の揺らぎは、観ているこちら側の心まで揺さぶられます。

はたして、愛する息子は殺人犯なのか、それとも被害者なのか。
父親と母親の望みは真逆ですが、息子への愛情と信頼はゆるぎなく、そして強い。
自分自身の家族との向き合い方を改めて考えるきっかけを与えてくれる映画です。

【望み】
監督:堤幸彦
脚本:奥寺佐渡子
原作:雫井脩介
出演者:堤真一
石田ゆり子
岡田健史
清原果耶
加藤雅也
市毛良枝
松田翔太
竜雷太
主題歌:森山直太朗『落日』
製作年:2020年
製作国:日本

※画像はAmazonより引用させていただきました

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