映画「つぐない」圧倒的な映像美に酔い、ストーリーに感情が揺さぶられる

私には2歳違いの双子の妹がいます。

幼いころは男の子よりも元気が良く(今もそうだけど)
あちこちでいたずらをするものだから、そのたびに謝りに行く母も大変だったと思います。

しかし、身体が小さいのと愛嬌があって可愛いので、それで許されていたような気がします。

この双子の結束は本当に厄介で、私はいつも損な役回りでした。

自分たちがしたいたずらを、私がやったことにされたり、私が本を買うために貯めておいた貯金箱から100円玉だけを取り出して、アイスやお菓子を友達に振る舞ったり…。
「これ、あげる」
と言って私にくれたキーホルダーを
「お姉ちゃんに取られた」
と母に虚偽の申告をしたり…。

思い出したら腹が立ってきた。

どれだけ母に叱られたか…。

それを2人で見ながらクスクス笑っている姿は本当に悪魔のようでした。

私が怒って口を聞かないと、
「お姉ちゃんがおこったー」
と2人で嘘泣きをするもんだからなおさら私が怒られる…。
もう無限ループでしたよ。

私も双子が良かったな、と何度思ったことやら。
今では笑い話になっていますが、当時は本当に憎らしかったですよ。

さて、今回ご紹介する映画は「つぐない」です。
この映画にもイライラする双子が出てきます。

1935年のイングランド。
官僚の娘セシーリアとセシーリアの妹ブライオニーが暮らす緑豊かで広大な敷地を持つタリス邸。
セシーリアは幼なじみで大学の同窓生でもある使用人の息子ロビーと身分の壁を越えて愛し合っていました。
妹のブライオニーは小説家を夢見る13歳の多感で勝気な少女です。
彼女は、姉とロビーの噴水での際どいやり取りや、ロビーから姉への卑猥な手紙などを目の当たりにし、言いようのない不安とショックを受けます。
そんなある日、姉妹の兄リーオンが友人のポールを連れて屋敷に戻ってきます。
屋敷には姉妹の従妹ローラとその双子の弟たちも、母親が家出をしたため、しばらくの間、滞在しています。
その夜、姉とロビーが熱く絡み合う姿を目撃したブライオニーは激しい嫌悪感を抱き、その後に起きた事件の犯人をロビーだと証言してしまい…。

監督はジョー・ライトです。
2005年に長編映画初監督作品でもある『プライドと偏見』で高い評価を受け、一躍注目を浴びました。
この作品で英国アカデミー賞新人賞などを受賞しています。
辻一弘さんが第90回アカデミー賞のメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞した『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』（2017年）
も彼の監督作品です。

主演を務めたのはキーラ・ナイトレイです。2003年公開の『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』のヒロイン、エリザベス・スワン役に抜擢され、17歳にして一気にハリウッドのトップスターの仲間入りを果たしました。
ジョー・ライト監督とは『プライドと偏見』、『アンナ・カレーニナ』（2012年）でもタッグを組んでいます。
時代物の衣装が似合うクラシックな美貌は女性人気も高いようですよ。

妹のブライオニーを演じたのは、シアーシャ・ローナン、ロモーラ・ガライ
ヴァネッサ・レッドグレイヴです。
年代別に3人の女優さんが演じています。
そのまま自然に年を取ったかのように全く違和感がありません。

まずこの作品、映像がとても美しいです。
前半は姉妹の暮らす屋敷の部屋、木々、花々、池、そして人物たちが夏の光を纏い美しく輝いて描かれています。
しかし、無垢で純粋な少女が持つ嫌悪感は、歪んだ正義となり2人を貶めます。
そこに計算された事実があるとは知らずに…。

少女期のブライオニーが聡明で気が強くてとにかく可愛い。
いつも白い服を着ているのは無垢の象徴なのかな？
天使のようでした。

一転して中盤の第二次世界大戦で起こったダンケルクの戦いの舞台、ダンケルク海岸の長回しのシーンはとても迫力があり、戦争の悲惨さがリアルに迫ってくるようでした。

この映像の対比が恋人たちの哀しい運命を際立たせています。

そして、今までの世界観がひっくり返されるようなラストの展開に唖然としました。
恋人たちがひたすら哀れで辛い物語です。
しかし、罪を背負ったブライオニーの贖罪の人生のお話でもあります。深く静かな空気が漂う、しかし感情が揺さぶられる映画でした。

【つぐない】
監督：ジョー・ライト
脚本：クリストファー・ハンプトン
原作：イアン・マキューアン『贖罪』
製作：ティム・ビーヴァン
エリック・フェルナー
ポール・ウェブスター
製作総指揮：ライザ・チェイシン
リチャード・エアー
ロバート・フォックス
デブラ・ヘイワード
出演者：ジェームズ・マカヴォイ
キーラ・ナイトレイ
シアーシャ・ローナン
ロモーラ・ガライ
ヴァネッサ・レッドグレイヴ
ベネディクト・カンバーバッチ
製作年：2007年
製作国：イギリス・フランス・アメリカ

※画像はAmazonより引用させていただきました