ままならないけれどぬるーく…。エッセイ「ぬるい生活」群ようこ著 朝日文庫
我が家の8キロ超のおデブ猫(♂)は膝の上に乗ってゴロゴロと喉を鳴らしながら甘えるのがお気に入り。しかし、
「男の人にだけ、抱っこされるんだよね。私たちのところには来ない」
と、妹は言います。
確かに、ゲームをする息子の膝、TVを見ている妹の旦那の膝といつも男の人にくっついていることが多いです。
デブちゃんは里親さんから引き取った猫で、妹が言うには里親さんの家の“お兄ちゃん”(当時小学校5年生くらい)が面倒をみていたようです。
「だから男の人が好きなんだと思う」と妹。
「でも、私の膝にも乗ってくるよ」と私。
そうなのです。デブちゃん、多分私のこと大好き。
「デブちゃんはかしこいから優しい人を見分けているの」
と、ドヤ顔で言った私にムカついたのか、妹たちは猛反撃。
妹1「おっさんだと思ってるんだよ」
妹2「この間、落語、聞いてたし」
妹1「相撲も観てた」
妹2「“仁義なき戦い”も観てた」
妹1「パジャマのこと“寝間着”って言うよね」
妹2「そのパジャマの上着の裾、ズボンにinしてるよね」
ああ、余計な事言わなければよかった。
そして、どちらかというと「おっさん」ではなく「おじいちゃん」。
私、おじいちゃん化してる?猫に聞いても答えは得られず‥‥。
さて、今回ご紹介する一冊は群ようこさんのエッセイ「ぬるい生活」です。
では、あらすじを簡単に
1年間に通販で買った品物の伝票を眺めていて愕然とした。
「便利だ」と思うものを買っていたのですが、そこにあったのは、すべて「中高年仕様」の品物ばかりだったのです。-すべては中高年仕様
洗顔後、しみじみと顔を見ると、明らかに以前よりも老けている…。
そして「ひとつ、ふたつ…」と数えられるくらい毛穴がくっきりと見えるのです。
老眼気味の視力ではっきりと見えるのだから普通の視力の人だと、紅白歌合戦における日本野鳥の会の人みたいにすぐさまカウントできるのではないのかというほど…。-毛穴問題
年齢を重ねるにつれ体調や心の不調といった様々な問題は出てきます。
でも、無理しなくてもいい、ぬるくていい…。ユーモアあふれる文体でつづられた25篇です。
作家情報
群ようこさん(1954年12月5日~)は東京都出身のエッセイスト、小説家です。
1984年7月、本の雑誌社在籍中に単行本『午前零時の玄米パン』(本の雑誌社刊) を発表し、本格的に作家デビュー。
本の雑誌社は目黒考二さん、椎名誠さん、沢野ひとしさん、木村晋介さんによって設立された出版社で、群さんは最初に事務職として採用された社員だそうです。
軽妙でユーモアたっぷりな語り口は女性からの支持を集めています。
著書に「無印良女」「鞄に本だけつめこんで」「かもめ食堂」など多数あります。
「かもめ食堂」は2006年小林聡美さん主演で映画化もされていますね。
共感しきり!
本作は群さんが50歳前後のころに執筆されたエッセイです。
群さんの周囲の方々の更年期の症状のあれこれ、そして群さん自身も衰えていく身体の変化を感じています。
私自身も同年齢ですので、ひたすら共感しまくりでした。
たとえば、肌質の変化、老眼の進行、たるみ、毛穴…。あと、様々なことに怒りを感じたり等々。ああ、挙げていったらきりがない…。
食べ過ぎを更年期症状と思い込んだり、知っていたはずの単語が中々出てこなくて、文字数だけ合っている全く別の単語が頭の中を占領してしまったり(特にカタカナだとよくある)を面白可笑しく描かれるので爆笑してしまいました。
更年期は人によって症状は違いますし対処法も様々です。
しかし、誰にも訪れる老いにあらがうのではなく、ままならない状態でもそんな自分を受け入れ、無理をしない、頑張らなくてもいいと、そっと寄り添ってくれるような作品です。
私の場合はこれ以上“おじいちゃん化”しないように、もう少し頑張りは必要だけれど…(笑)
ぬるい生活
著者:群ようこ
出版社:朝日新聞出版
発行:2006年8月8日
※画像はAmazonより引用させていただきました