漫画「蟲師」漆原友紀著

やっと冬らしい雪景色になりました。
私の住むのは長野県の北部、やや標高が高めの山間部です。

昨年まで、大晦日はしんしんと底冷えする中、雪を踏みしめながら近くの神社に二年参りをしていたのですが、この冬ときたら、雪は降っても積もらないというおかしなことになっています。

日本は四季がはっきりしていて情緒的なのがいいのですが、いきなり熱帯になってしまったらどうしよう?
今から南国モードに慣れておいたほうがいいのかな?
南国に行ったことがないのでわからないや。
などと、たまに考えを巡らせてみたりも。

さて今回ご紹介するのは漆原友紀さんの作品「蟲師」です。
1999年から2002年アフタヌーンシーズン増刊、月間アフタヌーンで連載されていた漫画作品です。

では簡単にあらすじを

~“蟲”とは生と死の間に在るモノ。動物でも植物でもなく微生物や菌類とも違う命の原生体に近いモノ。蟲は形や存在が曖昧でその存在を知るものは限られたヒトのみ。時にヒトに影響を及ぼし奇妙な現象を引き起こす妖しいモノ。そのような時が来て初めて人は蟲の存在を認識します。
そして“ヒト”と“蟲”を繋ぐのを生業としているのが“蟲師”なのです。
蟲師であるギンコは旅をする中で様々な人々とそれに関わる蟲に出会い、妖しい現象を紐解きながら人と蟲の共生の道を紡いでいきます。その旅の果てには何が待っているのでしょうか?~

この作品は2003年に文化庁メディア芸術祭・漫画部門で優秀賞を受賞しています。
さらに2007年同じく文化庁メディア芸術祭において「日本のメディア芸術100選」の漫画部門にも選出されています。
2005年から2006年にかけてアニメ化され、2007年にはオダギリジョー主演で実写化もされています。

作者によると時代背景は「鎖国を続けた日本」もしくは「江戸と明治の間にある架空の時代」ということです。

“蟲”は人には見えない存在ですが、雨や虹といった自然現象を含んだものや、人の形であったり、人にとり憑くようなものまで存在し形は定まってはいません。

例えば、子供の額に鬼のような角を生やしたり、人の記憶を食べてしまったりもします。
緑の動く沼のこともあります。
そのような人に悪影響を及ぼしたり、動植物の生命を脅かしたりする蟲が絡んでいる現象を、解決に導くのが蟲師の役割です。
ギンコは蟲を屠ることが前提である他の蟲師とは違い、蟲との共生を考えています。
感情的になることはあまりなく、淡々と冷静に蟲と対峙します。
あ、ギンコという名ですが男性ですよ

登場人物は和服を着用していますが主人公のギンコだけは洋装といういで立ちが異彩を放っています。

漫画なので白黒で描かれてはいますが、日本の昔の街並みや、緑が鬱蒼とした深い山々、雪深い山間地にひっそりと固まる集落、蔵のある古い家などの描写はどこか懐かしさ感じます。

日本の民俗学や各地に伝わる昔話、伝承などを題材にした話もあり和風ファンタジーや伝記、妖怪などが好きな方はこの世界観にハマると思いますよ。
1話完結のオムニバス形式でギンコが訪れた土地が舞台となり、毎回異なる登場人物を中心に物語が展開していきます。

日本の原風景を背景に淡々と静かに語られる物語は、良質な短編小説を読んだ時のような深い余韻に包まれます。そして、表紙のイラストも水彩画のようで味わい深いですよ。
掲載誌がアフタヌーンだけあって、大人向けの日本昔話のような雰囲気を持ったこの作品、寝る前に1話ずつゆっくり読み進めることをお勧めします。
(アニメも原作に忠実で見ごたえありますよ)

蟲師
著者:漆原友紀
出版社:講談社
発行:2000年11月22日第1巻発売

※画像はAmazonより引用させていただきました

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