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規則正しく丁寧な生活を送ることから始まり、学校では教えてくれない生きるヒントを与えてくれる魔女。大切なことを思い出させてくれる小説「西の魔女が死んだ」梨木香歩著

暖冬で気温が高いせいか、庭の片隅にオオイヌノフグリと菜の花が咲き始めました。
もう春なんですね。
早くないですか?

一時期、私はターシャ・テューダー(絵本作家で園芸家。30万坪の広大な敷地で昔ながらの質素な自給自足の生活を送った“スローライフの母”と呼ばれる人)や京都大原の古民家に住むハーブ研究家のベニシアさんのライフスタイルに憧れ、庭の片隅にハーブや花を植えて育てていたことがあります。
でも、私の興味は長続きすることが滅多にないので、翌年にはハーブは雑草と化し、母親が大切に手入れをしていた小さな花壇にまで進出したため、全部抜かれてしまいました。
ハーブ、特にミントって強いんですよね。
「抜くのにも一苦労だった」と叱られました。
でも、今もハーブは大好きだし、スローライフにも憧れはあるんですよ。
ただ自分には向いてないのではないかとも思うのです。

さて、今回ご紹介する作品は梨木香歩著「西の魔女が死んだ」です。
スローライフに憧れたのはこの作品の影響もあるかな。

では、あらすじを簡単に。

中学に進んでまもなく、どうしても学校へ足が向かなくなった少女まい。季節が初夏に変わるひと月を、西の魔女のもとで過すことにしました。西の魔女というのはママのお母さん、つまり大好きなおばあちゃんです。おばあちゃんはイギリス人。若いころに日本に移り住み、理科教師だった夫(まいのおじいちゃん)が亡くなった後は、自然が豊かで静かな場所で一人暮らしをしています。おばあちゃんの家系は代々「魔女」としての素質があるといいます。そして、おばあちゃんとの暮らしは、まいにとって魔女修行を兼ねることになるのです。魔女修行のなかで一番重要なことは「何でも自分で決める」ということでした。喜びも希望も、もちろん幸せも…~

作者の梨木香歩さんは児童文学作家、小説家、絵本作家です。
この作品で日本児童文学者協会新人賞、新見南吉児童文学賞、小学館文学賞を受賞しています。

「オズの魔法使い」に出てくる「西の魔女」は悪い魔女でしたが、この作品の「西の魔女」はすべてを受け入れる器の大きさを持つ「善い魔女」です。
おばあちゃんは生きていくために必要なスキルをまいに丁寧に教えてくれます。
基本は

・早寝早起き
・食事をしっかり取る
・運動をする
・規則正しい生活をする

魔女的に言うと「悪魔に打ち勝つため」だそうです。
悪魔に打ち勝つには精神を鍛えることが必要だと言います。
精神を鍛えるためには規則正しい生活をすることが大切なんですね。
そして何よりも一番大切なのは「なんでも自分で決める」そして決めたことを「やり遂げる」こと、つまり“意志の力”だとおばあちゃんは言います。

まいは元々とても繊細な感受性を持つ子だと思います。
それに思春期が重なったことで身動きできないほどの窮屈さを感じていて、その頃の女子によくある歪な距離感に合わせることが出来なかったのでしょう。
作者自身もひょっとしたらまいのように繊細な少女時代を過ごしたのではないかと思うくらい、多感な少女の描写が痛いほど伝わってきます。
大人の異性に対する嫌悪感などはとてもリアルに感じました。

しかし、そんなまいも、おばあちゃんの元でゆったりと自然と触れ合い生活していくうちに強く成長していきます。
自分のことを客観的に見ることが出来るようになるんですね。
この魔女修業の描写がとにかく素敵!
女子の「好き」がたくさん詰まっています。
私がいつかやってみたいとずっと思っているのは、洗いたてのシーツをラベンダーの上で乾かすこと。
シーツにラベンダーの香りってもう幸せに決まっているじゃないですか。

規則正しく丁寧な生活を送ることから始まり、学校では教えてくれない生きるヒントを与えてくれる魔女。
簡単なことでも続けることで達成感を感じ、そして、それは成功体験となり自己肯定感を高めることにつながります。

幾つになってもスローライフを送るための魔女修業を始めることができるはず。
この作品は素敵な魔女になるためのバイブルなのかもしれません。

西の魔女が死んだ
著者:梨木香歩
出版社:小学館
発行:1996年3月

※画像はAmazonより引用させていただきました

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