心をひとつに…。映画「フラガール」

先日、しばらく会っていなかった友人から久しぶりに連絡が来ました。
彼女は20代の初めに早々と結婚をし、3人の子供たちはもう40代の頃には巣立ちを終え、50代の今は2人の孫もいるという状況で相変わらず仕事に家事に忙しい毎日を送っているようです。

そんな彼女が熱中しているのが「フラダンス」。
私も誘われて1度、体験したのですが、なにしろ、若いころに大きなお祭りで踊りに参加することになったはいいが、「両手の平を交互に返す」という基本的な踊りが出来ず、毎日居残りさせられた私には無理な事…。
諦めて座って見ることに専念したのでした。
フラ独特の手の動き、一つ一つ意味があるんですね。
ゆったりとした手の動き、音楽、優しい微笑みを見せながら踊る生徒さんたちはきれいでした。
そうそう、彼女が電話してきたのはもう一人孫が増えるということと、フラダンスの発表会が中止になったということでした。
コロナ過で、集団で練習することもままならず、毎年目標にしていた発表会も中止になるなどストレスがたまる一方だと愚痴をこぼしていた友人ですが、家では毎日踊っているようですよ。
「来年のために」と決意を胸に…。
私も来年開催されることになったら花束でも持っていこうかしら?
それまで私も色々と頑張ろうかな?パワフルに動き回っている彼女と話すと、いつも元気がもらえるんです。

さて、今回ご紹介する映画は「フラガール」です。



では、あらすじを簡単に

昭和40年、福島県いわき市。本州で最大の炭鉱・常磐炭鉱も今や石炭から石油へとエネルギー革命が押し寄せ、かつての隆盛は見る影もなくなっています。
そんな町を救うため、この北国に”楽園ハワイ”を作り上げるという一大プロジェクトが持ち上がりました。
目玉は華やかなフラダンスショーです。
盆踊りしか知らない炭鉱の娘たちにフラダンスを教えるため、東京からダンス教師、平山まどかがやってきます。
元花形ダンサーで気位の高い彼女は、都会からさびれた炭鉱の町にやってきた自身の境遇を嘆き、フラダンスを踊ったこともない娘たちを馬鹿にしています。
しかし、やがて、炭鉱の現状と娘たちそれぞれの抱える事情に触れることによって彼女の熱も次第に高まり始め…。

作品情報

監督は新潟県出身の李相日さんです。日本映画学校(現・日本映画大学)での卒業制作作品『青〜chong〜』(1999年)が高い評価を得て、次作の『BORDER LINE』(2002年)では最も将来性を期待できる監督に与えられる新藤兼人賞金賞を受賞しています。
「フラガール」は第30回日本アカデミー賞最優秀作品賞および文化庁芸術選奨新人賞を受賞しています。

講師の元花形ダンサーを演じたのは松雪康子さんです。
踊るシーンは少なかったのですが迫力があり、とにかく美しかった…。

そして、最初の生徒役の蒼井優さん。
透明感に溢れた美しさが印象的な女優さんですね。

夢中になれること

この映画は常磐ハワイアンセンター(現・スパリゾートハワイアンズ)の誕生を支えた人々の実話を元に製作されています。
実話と同じく全くフラダンス経験のない役者さんを揃え、全員が一からフラダンスのレッスンを受け撮影に挑んだようです。
厳しいレッスンを受け、気持ちを一つにして常磐ハワイアンセンターを築いた踊り子さんたち。
彼女たちを倣ってレッスンを受けたキャストの方々の熱意が画面を通じて伝わってきます。

寒風吹きすさぶ荒んだ炭鉱の町の色のない背景は、歴史の移り変わりが感じられ物悲しい郷愁を誘います。

最初は自身が都落ちをしたような気持ちを抱き、やさぐれて酒を煽っていたまどかですが、娘たちが人生を賭けて真剣に踊りに取り組む姿を見て、本格的な指導を始めます。
娘たちの熱意は彼女に再び火をつけたのです。
少しずつ縮まってゆくまどかと娘たちの距離に心がじんわりと温かくなります。
そしてみんなが一つになって作り上げていくフラダンスは素敵です。
実話なので結末はわかっているのですが、「がんばれ!」とつい応援してしまいます。
ラストの蒼井優さんのダンスシーンは圧巻です。
コロナ過で変化する日々、徐々に変わっていく日常。
しかし、何か夢中になれるものを見つけることで現状を打破することが出来るのではないか?
そんなことを感じさせてくれる映画です。

【フラガール】
監督:李相日
脚本:李相日
羽原大介
出演者:松雪泰子
豊川悦司
蒼井優
山崎静代
岸部一徳
富司純子
音楽:ジェイク・シマブクロ
製作年:2006年
製作国:日本

※画像はAmazonより引用させていただきました

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