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女學校

夢と現の境目に漂う甘美で毒の効いたゴシックロマン小説「女學校」岩井志麻子著

夜、眠りに落ちるときは感じないのですが、どうしても寝てはならない時に我慢できず眠りに落ちそうになる瞬間って、なんであんなに気持ちがいいんでしょう?

ウトウト…( ゚д゚)ハッ!
ウトウト…( ゚д゚)ハッ!
ス~ッ…がくん。

私は仕事中、特にお昼休み後によく睡魔に襲われました。

職業訓練校で講師をしていた頃は居眠りを注意しなければならないのに、なんてこと!

幸いにも気づかれることはなかったのですが、あの微睡みに落ちる瞬間は至福でした。

訓練生さんが寝ているとそばに行って
「おい!」
とデカい声で起こしていたんですけどね。

何たる理不尽!ごめんなさい。反省してます。

さて、今回ご紹介する小説は岩井志麻子さん「女學校」です。
微睡みに始終襲われるような不思議な作品です。



では、あらすじを簡単に

時は大正。
親友同士の花代子と月絵。2人は花代子の家で、花代子が一番好きな西洋式の居間で女学校時代の麗しい思い出を語り合っています。
花代子は月絵の2歳上。お互い通った女学校は違います。
月絵はいつも花代子の女学校時代の話を聞きたがります。
中庭にはどんな花が咲いていたのか。
音楽室の蓄音機から流れてくる音楽は何か…。
もうとうに人妻ですが今も女学生で通用しそうな可憐な月絵。
花代子は月絵にも話をしてほしいとせがみます。
しかし、琥珀色の紅茶を飲んだ後に月絵の赤い唇から語られる話は花代子を恐怖に陥れ、いつしか花代子は自分を見失っていきます。
「花代子さんの語る女学校はこの地上のどこにもないのです。」
ここは何処なのか?夢か?現か…。

作家情報

作者は岩井志麻子さんです。
高校在学中に第3回小説ジュニア短編小説新人賞に佳作入選しました。
1986年、少女小説『夢みるうさぎとポリスボーイ』で作家デビュー
1999年、岡山桃子名義で投稿した『ぼっけえ、きょうてえ』で第6回日本ホラー小説大賞を受賞します。
2000年、『ぼっけえ、きょうてえ』で第13回山本周五郎賞を受賞。2002年、『岡山女』で第124回直木賞候補となります。
同年には、『trái cây〔チャイ・コイ〕』で第2回婦人公論文芸賞、『自由戀愛』で第9回島清恋愛文学賞を受賞しました。

多くのホラー小説を執筆しているせいか、心霊現象や奇妙奇天烈な人物と遭遇することが多いようです。
引き寄せているのでしょうか?
本人は霊感がまったくないと著書の中で語っています。
自身の作風に最も影響を与えたのは楳図かずおの漫画『洗礼』だということです。
うん、納得。

境目がなくなる感覚

「女學校」は10章からなる作品です。
時は大正時代。
花代子と月絵は花代子の家で、花代子が家の中で一番好きな西洋式の居間で思い出を語り合っています。

2人とも今は夫を持つ身で多分とてもお金持ちなのでしょう。
家の装飾、家具などどれをとってもとても豪華でお金がかかっている感じ。

語り口も上品でうっとりさせられます。

しかし、そこは岩井作品。

月絵の口から語られる妖しくも恐ろしい世界。

花代子が家の中で一番好きな西洋式の居間の描写が何度も何度も繰り返し語られたり、一転、汚濁の入り混じった凄惨な環境に堕とされたりと目まぐるしく場面展開する様は、読者である私たちも夢か現かわからない不安を抱えます。

万華鏡を覗いたような煌びやかな世界、何もない枯れ果てた世界。
芳醇と香る薔薇の匂いに含まれる腐臭。

ページを開くたびに目覚めない悪夢に踏み込んだような気分になります。

とても詩的で美しい耽美な文章には眩暈を覚えます。
寝苦しい夜にピッタリの作品です。
眠れなくなるかもですが(笑)

女學校
著者:岩井志麻子
出版社:マガジンハウス
発行:2003年2月1日

※画像はAmazonより引用させていただきました

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