月蝕楽園

普通の裏側の異端な愛 小説「月蝕楽園」朱川湊人著

息子をバイト先まで送り届ける16時ごろ、ここの所お天気が続いているので西日が眩しいことこの上ない。
そして、最近、太陽が以前より大きいような気もします。
車についている日除けでも防ぎきれないし本当に大きすぎる。
眩しすぎて目が焼けそう。

余りの眩しさに
「頼むから早く引っ込め!!!」
とお天道様に対して罰当たりなことを言ってしまった。ごめんなさい。

だがしかし、家でいいものを見つけてしまった。

『眼鏡の上からもかけられるサングラス!』

とてつもなくデカいのだけれど、眼鏡使用者の私には願ってもないものです。
釣りが趣味の妹の旦那(眼鏡男子)が買ったものらしいのですが、サングラスを買ったので使っていない様子。

早速、息子のお迎えにかけていきました。
息子の第一声は
「アイルビーバックの人じゃん」
ターミネーターですね。ホントだ。
でも、もう外せない。
それでも太陽は大きく、いささか眩しいのは否めないのです。
太陽、最強ですね。

さて、今回ご紹介する小説は朱川湊人著「月蝕楽園」です。
太陽ではなく月ですね。私はどちらかというとお日様よりお月様派です。



では、あらすじを簡単に

「他の女性よりも多くのものを持っている自分が、肝心のものを持っていない」
子供はいなくても経済的には恵まれている、穏やかな時間を過ごしている中年夫婦…。友人たちにはそういわれることが多い私たち夫婦。
でも、結婚以来、1度も肉体的には結ばれたことはないのです。
「噛む金魚」

壁を覆いつくすような熱帯植物に囲まれた部屋にいる蜥蜴。サラと名付けられた私は蜥蜴。「サラは本当に可愛いね。僕の宝物だ」あの人はいつもそういうと優しく体を撫でてくれるのです。
「夢見た蜥蜴」

みつばち、金魚、蜥蜴、猿、孔雀が題名になった5編の恋愛短編集です。

作家情報

作者は朱川湊人さんです。
昭和30年代~40年代の下町を舞台とした「ノスタルジックホラー」を得意とする作家さんです。
代表作に2005年第133回直木賞を受賞した「花まんま」、以前ご紹介した「かたみ歌」などがあります。

とっても耽美な世界観

朱川湊人さんといえば郷愁を誘う切なくなるようなホラー作品のイメージですが、本作は朱川さんのお得意の郷愁は影を潜め、その代わりがっつり闇を感じさせる偏執的な恋愛小説になっています。というか偏愛小説かな?

恋をしたことがない世間的にはお局と言われるような立場のOLが、同性である後輩社員の指に執着するという1話目の「みつばち心中」。
主人公の欲望の高まりは、読んでいるうちにこちらもドキドキしてしまうほどエロいです。
そういえば、知人の知り合いに“彼女の眼球を舐めるのが好き”という人がいるという話を聞いたことがあります。
フェティシズムやマゾヒズム、身体改造、アブノーマルな内容ですが、彼らが愛するモノに対して真剣なことは痛みと切なさを伴って伝わってきます。

残酷で決して幸せな結末を迎えることが出来ずとも、命を懸けて何かを愛するというのは儚いけれど強いなと感じました。

耽美でダークで不気味、少し異質な世界観の小説です。
月が綺麗な夜に読みたい作品です。

月蝕楽園
著者:朱川湊人
出版社:双葉社
発行:2014年07月18日

※画像はAmazonより引用させていただきました

関連記事一覧