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タルト・タタンの夢

後味ほっこり、まったりなグルメミステリー「タルト・タタンの夢」近藤史恵著

外食

先日、久しぶりに息子とラーメンを食べに行きました。
新型コロナウィルスの感染拡大による緊急事態宣言が解除されて最初の外食がラーメンです。
自粛期間中は家でもラーメンを食べたのですが、やはりお店で食べるラーメンに勝るものはないと気付きました。
いろんなラーメン屋さんを巡るようなラーメン好きでもないのに、なぜか無性にラーメンが食べたかったんです。
しかし、お店の座席の配置が変わっていたり、食べ放題のライスが無くなっていたりと以前とは違っている部分もあります。
ほんの2ヵ月くらいなのに世間は大きく変わったのだなと実感しました。

でも、ラーメン、とてもおいしかったです。
餃子もおいしかったな。
その2日後にまた別のラーメン屋に行ってしまいました。
ひょっとして私はラーメンが大好きなのかもしれません。
猫舌で食べるのに時間がかかってしまうけど。

ああ、でも外食ができるって幸せですね。

さて、今回ご紹介する小説は「タルト・タタンの夢」です。

では、あらすじを簡単に

下町の小さなフレンチ・レストラン〈ビストロ・パ・マル〉。
“パ・マル”とはフランス語で「悪くない」という意味です。
シェフの三舟は長めの髪を後ろで結び、無精ひげを生やした無口で風変わりな男です。
しかし、彼のつくる料理は、フランスの家庭料理っぽいメニューの気取らない、本当にフランス料理が好きな客の心と舌をつかむものばかり。
そんなシェフは客たちの巻き込まれた事件や奇妙な出来事を鮮やかに解く名探偵でもありました。
常連の西田さんはなぜ体調をくずしたのか?
甲子園をめざしていた高校野球部の不祥事の真相は?
フランス人の恋人はなぜ最低のカスレをつくったのか?
7篇の連作短編集です。

作品情報

作者の近藤史恵さんは1993年『凍える島』で第4回鮎川哲也賞を受賞し、デビューしました。
著書に『ねむりねずみ』『ガーデン』『モップの魔女は呪文を知っている』『ヴァン・ショーをあなたに』など多数あります。
2008年『サクリファイス』で第10回大藪春彦賞を受賞しています。
人間心理の機微を描く筆力の見事さに定評がある作家さんです。

フレンチ&ミステリー

物語の舞台は下町にある小さなフレンチ・レストランのビストロ・パ・マル。
従業員は変わり者のシェフでもあり店長でもある三舟さんと、正統派フレンチの修業を積んだ志村さんの厨房2人。
ソムリエの20代後半の女性金子さん。
物語の語り手であるホール係の高槻君4人がいます。

人が死んだり血しぶきが飛んだりする凄惨な事件は起こらず、お店のお客様のお悩み相談的なものを解決する感じです。
しかし、舞台がフレンチ・レストランだけあってその出来事の一つ一つが料理や食材に関係しています。

無口で変わり者と言われているシェフの三舟さんですが、料理がかかわっているだけに、謎解き場面では饒舌で鮮やかに謎を紐解いていきます。

私はフレンチには疎いのですが、詳細に描かれる料理はどれもおいしそうで、子羊や鴨肉、フォアグラは苦手なのですが食べたくなります。というか、お腹が空いてくる感じ。
不思議です。
また、料理人がおいしく食べてもらうための料理と家庭で作られる料理の根本的な違いを知ったのもこの作品からです。

どのお話にも必ず出てくる“ヴァン・ショー”は秘密のメニューです。
ワインをスパイスミックスと一緒に温めてお湯で割り、オレンジの薄切りを浮かべたもの。
悩みを抱えたお客さんは謎解きの終わりに出されるヴァン・ショーで、心も身体も温かくほぐされていきます。

こんなお店あったら絶対に行きたいな。
読後は“ヴァン・ショー”を飲んだかのように胸がホッコリと温かくなりますよ。

タルト・タタンの夢
著者:近藤史恵
出版社:東京創元社
発行:2014年4月27日

※画像はAmazonより引用させていただきました

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