ケーキの切れない非行少年たち

編集日記 ほとんどの日本人はまともな文章を書くことができない

「自分の考えを言語化し文章にする」
ここ数年で、これができる人は一握りなのかもしれないと思うようになりました。
私はこのwebマガジン以外にも世界経済を扱った金融系サイト、車関連ブログ、金融リテラシーに特化したブログ、ギャラリーサイトなど様々なメディアに関わってきました。
現在も並行していくつかのメディアを動かしています。
そのため今まで数えきれないくらい多くのライターさんたちと接してきましたが、文章を書いて報酬を得ている人ですら「てにをは」が合っていなかったりするのです。



なぜ文章が書けないのか?

小学生の頃は絵日記や読書感想文など、よく作文を書いたと思います。
しかし中学生以降はだんだんと試験に合格するための勉強が中心となり、自分の意見を文章にする機会が減っていきます。
大学に進めば論文を書くこともあるでしょうが、日本の大学進学率は約54%ですから、およそ半数の人たちは小学校を卒業してから文章を書くことがないということになります。
専門の学部に進学できる環境があれば別ですが、文章を書きたいと思っても独学で勉強するしかないため、なかなか正しい知識を身につけることができず苦労している方はたくさんいます。
SNSにアップするのは話し言葉のみという人も多いのではないでしょうか?
しかしこれは書く機会に恵まれなかっただけですから、努力次第でどうにかなります。
逆に大学でどれだけ論文を書いても、卒業後に文章を書かなければその能力は落ちていきます。

ただ、中にはどれだけ丁寧に指導しても同じ間違いを繰り返してしまう人がいます。
どうしたら良いのかと悩んでいた時に出会ったのが「ケーキの切れない非行少年たち」です。

※入試用の論文は志望校に受かるための文章であり、個人の考えを言語化するのとはズレるので除きます。

ケーキの切れない非行少年たち

こちらは医学博士、臨床心理士であり児童精神科医の宮口幸治さんが書かれた、多くの非行少年たちが抱えている問題のひとつ「境界知能」に焦点を当てた著書です。
なぜ少年たちは非行に走ってしまったのかを医学的に分析しています。

・認知機能の弱さ……見たり聞いたり想像する力が弱い
・感情統制の弱さ……感情をコントロールするのが苦手。すぐにキレる
・融通の利かなさ……何でも思いつきでやってしまう。予想外のことに弱い
・不適切な自己評価……自分の問題点が分からない。自信があり過ぎる、なさ過ぎる
・対人スキルの乏しさ……人とのコミュニケーションが苦手
+身体的な不器用さ……力加減ができない、身体の使い方が不器用(子供の頃に運動をしている場合を除く)
—「ケーキの切れない非行少年たち」より抜粋

非行少年にはこれらの特徴があるそうですが、なるほど、現代社会ではかなり生きづらそうです。

軽度知的障害

現在、日本ではIQ70以下の人を知的障害、IQ71~85くらいの人を境界知能としているそうです。
割合としては35人クラスで5人、日本人の7人に1人がグレーゾーンに入るのではないかと言われています。
どこにでもいる身近な存在ということですね。
この著書を読まなければ生きづらさを感じている人がこれほど多いと知ることはなかったと思います。

物事を理解するにはある程度の知能が必要です。
聞く力・見る力・想像する力が大切になってくるんですね。
境界知能の人は文章を正しく認識する能力が弱いと理解できてからは、よりわかりやすく説明するよう心がけています。

また、彼らの文章には以下のように癖が強く出るとわかってからは、文章改善のアプローチをそれぞれに合った形に変えるようにしています。

・改行や句読点の位置がおかしい
・変なスペースがある
・誤字脱字が多い
・てにをはが合わない
・漢字の使い方が独特
・表現がまわりくどい
・唐突に視点が変わる

発達障害や境界知能でも物書きになれるの?と思われる方がいるかもしれませんが、ADHDなどでも現役でご活躍されている人は多く、発想が面白いので意外と重宝されています。
特に放送作家さんなんかは社会に適応できないぶっ飛んでいる部分が良しとされる場面が往々にしてあります。
周りの環境次第でどうにでもなるんですよね。

やたらポジティブな当て字

余談ですが独特な漢字の当て字をする人には注意が必要です。
これらはネズミ講(ネットワークビジネス)や詐欺的な新興宗教、特殊詐欺を行っている人によく見られます。

・親友→心友
・会いに行く→愛に行く
・気→氣
・気合→氣愛
・成功→成幸
・仕事→志事
・頑張ろう→顔晴ろう
・最高→最倖
・忘年会→望年会
・奇跡→輝跡
・人材→人財
・起業→輝業
・ありがとうございます→ありがとうご財増す
・助け合い→助け愛

ワクワクが止まらない、引き寄せの法則が…などと言い出したら距離を置きましょう。
経験上、相槌が「なるほどですね」という人もヤバめです。
なんとなく相手のことが判断できるのですから、文章って面白いですよね。

社会が豊かになること=多様性を受け入れられる世界

ADHDの特徴が顕著で本人も生きづらさを感じている女友達がいます。
先のことを想像したり相手の言葉の意味を汲み取ることが苦手で理解が足りていないことが多く、軽度知的障害もあるのではないかと感じたので何度も受診を勧めました。
行く行くと言いながら病院に行かず同じような迷惑をかけられるばかりだったので、そのうち疎遠になってしまいましたが、風の噂で水商売のお客様(妻子持ち)の子供を産んで未婚で育てることにしたと聞きました。
なんとも言えないモヤモヤした気持ちになってしまいます。

大人になるとなかなか受診まで辿り着けません。
本人はそれが普通だと思っていますから。
事件を起こして初めて障害があることに向き合う人も多いとか。

もし彼女が子供の頃にきちんとした医療を受けサポートを得られる環境にあったなら、未来は変わっていたでしょう。
それこそぶっ飛んだ放送作家さんたちのように大活躍していたかもしれません。

私は「社会が豊かになること=多様性を受け入れられる世界」だと思っています。
多様性を受け入れられる世界になれば、生きづらい人や非行少年はもっと減るはずです。
それには経済活動で豊かになることはもちろん、多種多様な知識を得ていろいろな考え方を学び、お互いの意見を否定しないことが必要不可欠でしょう。
そして、自身の思考を言語化し理性的に話し合える能力を持つことが大切なのかもしれませんね。
(口では簡単に理想を言えるけど、だいぶ難しい話だわこれ)

※画像はAmazonより引用させていただきました

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