
絵本「たいせつなこと」マーガレット・ワイズ・ブラウン著 レナード・ワイスガード挿絵 うちだややこ(内田也哉子)訳
あっという間に年末ですね。
今年は年号が変わったりプライベートでも息子の進学、自身の退職など色々と変化があり慌ただしかったです。
でも、年末は職場でも家でもなんだか落ち着かない感じは毎年のことです。
さて、今回ご紹介する本は絵本です。
「たいせつなこと」
息子が小学校低学年の頃に買ってあげた本です。
懐かしさを感じるやや抑えた色使いの絵とグラス、スプーン、ひなぎく、雨といった私たちの生活の中に、普通に在るモノ、その役割を優しい文章で丁寧に書いています。
面白いのが視点。
“グラスにとってたいせつなのは むこうがわがすけてみえること“(本文より)
私たちがグラスを選ぶときのポイントは何でしょう?
「持ちやすい」
「割れにくい」
「デザインが良い」
それは使用する側から見た「たいせつなこと」ですよね。
しかし、この本に書かれている「たいせつなこと」はそのモノ自体がモノであるための「たいせつなこと」
モノ自体が決めているんですね。
それは、「ありのままでいること」ではないかな?と思います。
「ありのまま」
数年前によく聞きましたね。「アナと雪の女王」の主題歌、「レット・イット・ゴー」は松たか子さんの伸びやかで透明感のある歌声が素晴らしかったです。
でも、「ありのまま」とか「自分らしく」ってなんだかよくわからないってこと、ありませんか?
ありのままでいたら嫌われるとか、躊躇してしまうのが普通なんじゃないかなと思います。
でも本当は、ありのままでいるということは、「自分自身をすべて受け入れる」ことではないかな?と思うのです。
自分の良いところ、嫌なところもすべて。
そこから
「自分らしさ」
が見えてくるのではないかなと思います。
決めるのは自分自身なのでいくつあってもいいのではないかしら?
人生で一番長く付き合っていくのは自分自身ですもんね。
この本の最終ページは手書きの文字で一番伝えたい「たいせつなこと」が書いてあります。
作者のマーガレット・ワイズ・ブラウン氏の本は「おやすみなさい おつきさま」も有名ですね。
子ウサギが眠る前に部屋の中のあらゆるものに「おやすみなさい」という本。
だんだんと静けさが満ちてきてシンとした部屋の空気感が伝わってくる絵本です。
人によっては少し怖いと感じる人もいるようです。
息子が3歳位の時に毎晩、読み聞かせていました。
かわいかったな。
そして、この本の訳者、「うちだややこ」さんは…
そうです、樹木希林さんと内田裕也さんの娘さんですね。
翻訳は本書が初めてということなのですが、あとがきの文章を読むと、言葉の選択が美しく丁寧で「大切に育てられたんだなー」という空気が伝わってきます。
亡くなった樹木希林さんは、彼女が幼い時から世界のあちこちに連れて行ったということです。
実際、アメリカ、スイス、フランスなどで学んできたようですね。
そして、そして、最後の「たいせつなこと」の手書きの美しい文字は、なんとご主人の本木雅弘さんが書かれたようです。
奥様の仕事に理解を示し、愛情深く見守ってる感がありますよね。
お二人の穏やかで優しい関係性が好きです。
この本は息子のために買ったのですが、なぜか今でも私の本棚にあります。
不安だったり、自分を見失いそうになったとき、いつもこの本に助けられてきました。
ある意味、読む「サプリメント」のような一冊です。気持ちがスーッと浄化される感じがします。
忙しく時間に追われている大人の方に、おすすめしたい一冊です。
眠る前に、ゆっくりと読み、目を閉じて
「今日も頑張った。お疲れ様、ありがとう」
と自分を褒めてあげる。
「たいせつなこと」ですね。
たいせつなこと
著者:マーガレット・ワイズ ブラウン
挿絵:レナード ワイスガード (イラスト)
翻訳:うちだややこ(内田也哉子)
出版社:フレーベル館
発行:2001年9月1日
※画像はAmazonより引用しました。