貧困

編集日記 VERY炎上から読み解く、代理母ビジネスの光と闇と未来

※ひとり時間を豊かにする情報をお届け、というテーマからズレますし、けして明るい話ではないので掲載するか悩みました。
しかし今を生きる女性が未来に向けて考えるべきテーマだと思いアップさせていただきました。
「正解はない」という前提で読んでいただけると助かります。

35〜45歳くらいの主に子育てをしている女性に向けたファッション紙「VERY」。
成功している女性のキラキラしたライフスタイルにスポットを当てた企画が多いことから、セレブ雑誌とも呼ばれています。
数日前、VERYのwebサイトに申真衣さんとスプツニ子!さんの対談が掲載されました。
※大炎上したため現在は削除されています。
↓こちらのURLは魚拓です。
https://megalodon.jp/2020-0823-1923-18/https://veryweb.jp:443/life/106461/



なぜ炎上?

この記事はおそらく卵子凍結事業を始めたスプツニ子!さんの広告記事でしょう。
妊娠・出産で女性のキャリアが分断されることや、生殖のタイムリミットについて問題提起されています。
そして卵子を凍結したら解決しますよ、ということで締められています。
問題は記事中で代理母すらビジネスとして捉え「次に来る」と言ってしまっていること。
これが多くの読者に、強者による「弱者からの搾取」として受け取られたのです。

・ブランドバックや海外旅行と卵子凍結の費用を比較している
・男性だって女性に代理で産ませている
・代理母に産ませているセレブもいる

こんなことを言ったら、そりゃ炎上するってもんです。
身代わりとして女性の体を使うことを、お金を払っているし合意の上だから問題なしと本気で考えているのであれば、売春婦を買う男性と同じ倫理観だと思われても仕方がありません。

代理母ビジネスとは

報酬を得るために、クライアントの代わりに妊娠・出産し、子供をクライアントに引き渡すのが代理母の仕事です。
現在、実際に代理母を認めている国がいくつかあり、エージェントがビジネスとして成立させています。
ウクライナなんかは有名ですよね。
500万円以下で子供を持てることから、世界中から注文が後を絶たないとか(新型コロナウイルスの影響で引き取りにいけないそうですが)

代理母になるのは多くが貧困層です。
代理母ビジネスでまとまったお金を稼ぎ、学費や起業の足しにして人生を変えようと夢見ている少女たちです。
しかし、現実はそう簡単ではありません。

・劣悪な環境
・約束された賃金が支払われない
・中絶の権利がない
・病気になっても薬を飲めなかったり、妊娠中に食べるものまで決められることも
・生まれた子供に障害があれば受取拒否される
・そもそも命がけ

リスクが大きすぎるのです。
貧困層の女性を使って代理母ビジネスをするようなエージェントが誠実だとは考えにくく、実情はもっと酷いものでしょう。
人権など無視で産む機械として扱われているのが容易に想像できます。

代理母が光となる

だからといって代理母を全否定して良いかというと、そうではありません。
そもそも貧困国に生まれた貧困層がまともな仕事に就けるかと言ったらそんなことはなく、性風俗・薬物の売買や製造・ゴミ拾い・スリ・物乞いなどで日銭を稼いだり、人身売買のような児童婚をさせられたり、農園や工場に売られ朝から晩まで働かされ過労から大人になる前に命を落とすこともあります。
もちろん学校に行かせてもらえませんから、読み書きすらできません。
代理母ビジネスでまとまったお金を稼いだら、その後、ステップアップできるかもしれない。
もしあなたが貧困国の貧困層の女性に生まれたら、選択肢のひとつにしようと思ってしまいませんか?

子供が欲しいけれど身体的な問題で作ることができない、不妊治療が実らなかった、同性婚であるなど、立派に育てる能力があるのに恵まれない人たちがいます。
藁にもすがる思いで我が子を望んでいますし、たくさんの愛情を持って育むでしょう。
代理母に産んでもらうことが最後の光となる人たちは確実に存在します。
真剣に子供を願う親を頭ごなしに否定しても良いのでしょうか?

後述しますが、世界が資本主義経済体制下にある限り、貧困はなくなりません。
もしフェアトレードが可能になり環境が整備され、貧困から少女が抜け出せる方法のひとつになるならば、代理母ビジネスは光となるでしょう。

ミクロで見る

なぜ代理母を求めるのか?
恋愛して結婚して子供を作り生み育てるのがそんなに難しいことなのか?
まず身近なところで考えてみましょう。

日本の女性は社会的に追い詰められています。

若いうちに産めば、子供に子育てができるのか?どうせすぐ離婚すると罵られ。
女も社会で活躍しろと言うわりには男女の賃金格差は埋まらず。
少子化を食い止めろ、結婚して子供を産めと言われいざ出産してみたら、仕事が今までどおりできないなら部署移動か退職を迫られる。
年齢を重ねてから産めばキャリアは分断され、産まなかったら女の幸せを問われ、未婚で産めば子供がかわいそう。
仕事と子育ての合間に家事をこなし、行事の手伝いやPTA、病気になった時の世話も当然のようにのしかかる。
塾や習い事など教育に時間とお金をかけられないと子供が格差社会で負ける現実に直面し、送り迎えに明け暮れながら、1人産んだら兄弟は?子沢山なら育てていけるのか?と干渉される。

地獄か!
産んでも地獄、産まなくても地獄、仕事は忙しいのに賃金は安く、恋愛する暇もないのがまた地獄。

もうめちゃくちゃです。
精神が崩壊し、子供を持つことと仕事をすることの時間的・身体的バランスを取るために、最終手段は代理母だと追い込まれても不思議ではありません。

男尊女卑思想がなくなればもっと自由に生きられるようになるのかもしれませんが。
世界経済フォーラムによる政治・経済・ジェンダーギャップ指数が100位以下のこの国が、少なくとも昭和生まれが生きているうちに変わるとは思えません。

マクロで見る

次に、大きな視点でこの国の経済体制を考えてみましょう。
そもそも資本主義を自由な経済体制としか思っていない人が多いのですが、ちょっと違います。
資本家や企業家が労働者を働かせ富を得る…ざっくりいうと強者が弱者から搾取するのが資本主義です。
ですから、それが長く続けば富は資本家へ集中し、格差はどんどん広がります。
世界を見渡せば先進国や発展途上国、新興国、いまだ争っている国などがありますが、ほとんどの国は資本主義に則り富を求める経済活動をしています。
社会主義国を謳っている中国だって中では強者による弱者からの搾取が行われています。
そして本音では、世界中のほとんどの人が本当の平等なんて望んでいないのです。
今よりも良い暮らしがしたい、そう思っています。

世界を平等にするから明日から仕事と衣食住は世界平等機関が振り分けます。
お給料は全員同じ。
受けられる医療も通える学校も選べません。
頑張っても頑張らなくても未来は変わりません。

……こんなの嫌ですよね?
平等とはなんと不自由なのでしょう。
上に立てば下から搾取する構図に絡みとられると、格差が広がるだけだと理解しているのに、抜け出そうと思えないのが資本主義のつらいところです。
(根強く共産主義的な考えを持っている方もいますが)

日本に生まれて生活している私たちは、世界レベルで見たら良い暮らしができています。
本当に困ったら生活保護もありますし。
今のところ多くの日本人は今回の炎上のように、代理母ビジネスを倫理的に否定できる余裕があるのです。
便利な生活を安価でできているのは貧困国の外国人労働力のおかげなのに、それを見て見ぬふりをして倫理を振りかざすことができるんですね。
なぜか安く買えるチョコレートを食べ、奴隷のように使われている技能実習生をスルーしながら代理母ビジネスは叩く。

しかし日本国内にも格差は確実に広がっています。
いつまでこの余裕を保つことができるでしょうか?
セーフティーネットが性風俗と言われているこの国、次は代理母ビジネスとなるかもしれません。
本当の貧困に陥れば、倫理なんて知ったこっちゃないですから。

結局、ミクロで見てもマクロで見ても解決の糸口は見つかりませんね。

代理母ビジネスの未来

生き物は本能に自分の子孫を残せとインプットされています。
資本主義のこの世界では、残念ながら代理母ビジネスはこれからも発展していくでしょう。
人類の歴史から人身売買が消えたことはありませんから、世界的に禁止となったとしてもおそらく代理母ビジネスがなくなることはありません。
だとしたら「あるもの」として光が差す方向へ持っていく方法がなにかを考える。
私たちにできることは、それだけなのかもしれませんね。

個人的には人口子宮ができれば女性が代理母ビジネスから解放されるのではないかと期待していますが、貧困がなくならない限り別の形で搾取は続くので、なにを良しとすれば良いのか難しいところです。

書くだけではなにも変わらないので、わずかですが貧困国へ募金させていただきました。
私は今よりも良い生活を求めますし、世界レベルでの平等なんて望んでいません。
しかし貧困がなくなれば良いとも思っています。
矛盾しているし、ずるいのです。
この資本主義社会の中で経済活動をしているならば、間接的に貧困を生むことに、代理母ビジネスに加担している。
それだけは忘れないようにしたいと思います。

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