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白光 連城三紀彦

小説「白光」連城三紀彦 夏の眩しい光が腐臭を放つ悪意に変化する

反抗期

息子が中学3年生のころ。
少し荒れた時期がありました。
受験、友人関係の悩み、そして反抗期が重なっていたのでしょう。
些細な言葉に反発して怒るんです。
そして、壁を蹴ったり殴ったり。
ふすまを破壊したり…。
息子の部屋には今でもその時の跡が…。

そのころすでに私より体が大きい息子(体重は私の勝ち。今も)を止めるのはもう無理だと思い、妹の旦那たちに一任。

「ひとしきり暴れれば気がすむよ」
と三女の旦那。
「俺も中学の時はおんなじことしたよ」
と次女の旦那。
「もう、ふざけんな‼って枕、蹴飛ばしたり…」
「…」
枕って、可愛い部類じゃん。
ふすまよりは。

そして、知り合いのお母さんたちにも聞いてみると
あらまあ、色々とやらかす子たちの多いこと。特に男子。
ふすまじゃなくてドアだったり窓だったり…。
中には
「いまだに家出中」
という猛者もいましたよ。いや、それ探して。
「同じ敷地内のおじいちゃんちに」
よかった。

ウチだけじゃないんだという安心感と、家庭によって色々と対応の仕方は違うんだなと学びました。
少し放っておくのがいいようです。
でも、ふすまは戒めのために直してやらないと決めた。

さて今回、ご紹介する小説は連城三紀彦さんの「白光」です。



では、あらすじを簡単に

ごく普通のありふれた家庭。平凡に過ぎていく日常。
しかし、ある夏の暑い日に起きた、ひとつの事件がいとも簡単に日常を崩していきます。
夫と娘、舅と暮らす家の庭に埋められていたのは、4歳の幼い姪でした。
何者かに殺害され、庭のノウゼンカズラの木の下に埋められていたのです。
犯人はいったい誰なのか?そして目的は?
家族全員に殺害動機が存在?
次第に明らかになっていく、家庭の闇と驚愕の事実。
果たして真犯人は誰なのでしょう?

作家情報

作者は連城三紀彦さんです。
愛知県名古屋市出身で1977年「変調二人羽織」で第3回幻影城新人賞(小説部門)を受賞しました。
同作が探偵小説専門誌『幻影城』1978年1月号に掲載され作家デビューします。

そして、1984年『恋文』で第91回直木賞を受賞しました。
代表作に『戻り川心中』『宵待草夜情』などがあります。
多くの作品がテレビドラマ、映画化されています。
繊細な心理描写や叙情的な作品で人気を博しました。
「戻り川心中」「宵町草夜情」、タイトルからして抒情的ですね。
私、タイトル買いしましたよ。はい。
2013年、胃がんのためお亡くなりになりました。
享年65歳でした。

「マウンティング女子」

物語はまだ幼い少女が殺害され、庭のノウゼンカズラの根元に埋められるという悲惨な事件で幕を開けます。

章ごとに語り手が変わり、一人称で語られたかと思えば三人称と視点が変わる文章。
そして、夏の眩しく白い光が印象的に描かれる現在進行形の庭の風景と、おじいちゃんが戦争中にいた南の島の密林の風景。
登場人物の心情や風景が鮮やかで丁寧につづられているのだけれど、皆、闇を抱えているので共感できないし、結構重いです。

それぞれが自分の都合のいいように相手を操ろうとするのはイライラ度MAXです。
特に殺された少女の母親にはイライラを通りこして嫌悪感がわきます。
いま、巷に生息していると言われている「マウンティング女子」の最上級ですね。
“姉よりも有利に居たい”それだけ。
ただ、姉もそれを上回る「マウンティング女子」だから始末に負えない。

しかし、美しく流麗な文章、二転三転するストーリー展開にいつの間にか引き込まれ最後まで一気に読んでしまいました。

2つの家族に起こる暑い夏の日の出来事。
しかし、事件の起きた季節は夏なのに終始、湿った冷たい空気感を持った不思議な作品です。

梅雨も明け暑い夏の日々がそろそろやってきます。
そんな季節にピッタリな作品です。

白光
著者:連城三紀彦
出版社:朝日新聞社
発行:2002年2月1日

※画像はAmazonより引用させていただきました

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