2人の時間に心が震える 映画「ヴァイブレータ」

コンビニやスーパーに買い物に行くといつの間にか独り言をつぶやいていることに気づきます。
「あ、これ、CMでみたヤツ。どうしようかな?買おうかな?」
「豆腐どこ?」
「あ、卵、なかった」等々…。
その都度、気を付けようとするのですが、ついつい声に出してしまうんですよね。
小さな声なので気付かれてはいないと思うのですが…。
先日、書店に行った際、私のいる本棚の裏側から何やらしゃべっている声がします。明らかに独り言です。(私みたいな人、いる。それにしてもあまりにも声が大きいではないか?)興味本位でそっと裏側を覗くと、そこにいたのは私の息子…。
(遺伝だな…)
見なかった振りをしてその場を離れました笑

さて、今回ご紹介する映画は寺島しのぶさん主演の「ヴァイブレータ」です。



では、あらすじを簡単に

3月14日、ホワイトデーの夜。外は雪が降っています。
コンビニでひとりごとをつぶやき店内をフラフラする彼女は早川玲、フリーのルポライター、31歳。
玲はワインを買いに来たのに、頭の中に聞こえる「声」が邪魔をしてなかなか目的のワインを買えません。彼女は頭の中に響く声に悩まされ、お酒の力を借りないと眠れないのです。
その時、コンビニに入ってきた金髪の男。中々に彼女好みです。
玲の頭の中で「食べたい、あれ、食べたい」と声がします。
金髪男はすれ違いざま玲の体に触れます。
彼女はコンビニを出た男を追いかけると、男はコンビニの駐車場に停めたトラックの運転席から玲を手まねきします。
導かれるように助手席に乗り込む玲。
男は岡部希寿(たかとし)という28歳のフリーの長距離トラック運転手です。
今積んでいる積み荷を明日の朝、納品した後、東京から新潟に行くと言います。
玲はスナック菓子をつまみに焼酎を飲むと「あなたにさわりたい」と言い、やがて二人は肌を重ねます。

作品情報

監督は廣木隆一さんです。1954年生まれ、福島県出身です。
脚本家、俳優としても活動しています。
1982年、ピンク映画 『性虐!女を暴く』 で監督デビューします。
本作『ヴァイブレータ』 では第25回ヨコハマ映画祭で監督賞をはじめ、国際映画祭でも数々の賞を受賞しています。
恋愛映画の名匠と称されており、近年は少女漫画原作の恋愛映画を多く手掛けています。
監督作には『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(2017年)『彼女の人生は間違いじゃない』(2017年)『オオカミ少女と黒王子』(2016年)などがあります。

主演を務めたのは寺島しのぶさんです。父は歌舞伎役者、母は女優、祖父は映画プロデューサーという演劇・俳優一家に生を受け、大学在学中から舞台、テレビドラマで活躍していました。
映画デビューは『シベリア超特急2』(2000年)です。2003年に公開された映画『赤目四十八瀧心中未遂』と本作『ヴァイブレータ』での演技が認められ、第27回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を始め、国内外で10以上の映画賞を受賞しています。
2010年には、『キャタピラー』でベルリン国際映画祭銀熊賞(最優秀女優賞)を受賞しました。

濃密な時間

物語はコンビニで出会ったゆきずりの男女が4日間と言う短い時を供にするロードムービーです。
2人の出会いのシーンがとても素敵。この時の主人公の心の震えがタイトルになっているのかな?
東京から川崎、新潟そしてまた東京に戻る…。
トラックの車内でかわされる他愛もない会話。時折、主人公の気持ちが字幕で表現されます。クスッと笑わされたり、「そうだよな」と共感できたり面白い演出です。
大人なんだけど大人になり切れていない不安定な主人公…。寺島しのぶさんの演技が光ります。
「結婚して子供もいる」と距離を置こうとするのですが、本能的な優しさで主人公を包み込むように受け入れる岡部。大森南朋さん、適役です。素敵。
夜の国道や蝋燭に照らされた冬の祭りの風景は淡々と進む物語に彩りを添えます。
拗らせ系の厄介な女性という最初に抱いたイメージが、ラストでは一変して「すっごい可愛い」に変わってしまった。
少し疲れた心にじんわり沁みる映画です。

【ヴァイブレータ】
監督:廣木隆一
脚本:荒井晴彦
原作:赤坂真理
出演者:寺島しのぶ
大森南朋
田口トモロヲ
牧瀬里穂
坂上みき
村上淳
主題歌:浜田真理子
製作年:2003年
製作国:日本

※画像はAmazonより引用させていただきました

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