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ブルーピリオド

マンガ「ブルーピリオド」山口つばさ著 アートの魅力とは!?クリエイターは一見の価値あり

普段はマンガを読まないクリエイターの友人が、珍しく勧めてくれた作品「ブルーピリオド」。
友人いわく、創作モチベーションが爆上がりするのでぜひ読んで欲しい、とのこと。
比較的趣味が近いのもあって、そんなに彼女が言うのであれば一度読んでみるか、と思い手に取りました。
過去に「ゴールデンカムイ」を排出したマンガ大賞や、「コウノドリ」が受賞した講談社漫画賞を2020年にダブル受賞しているこの漫画。
早速読んでみたのですが、その評判に違わぬ名作だな、とのめり込むように最新刊まで追いついてしまいました。

ストーリーは端的に言えば、頭も良くて要領の良い高校生が、ひょんなことから美大受験に挑む、というお話です。

音楽や絵といった芸術、アート。
特に今回この漫画で題材とされる、美術作品。
有名な芸術家ですと、ゴッホやモネ、ルノワール、ピカソやサルバドール・ダリなど。
これらの作家の絵に、なぜ億を超えるほどの値がつくのか。
この作家の作品の、優れている部分とはどういった所なのか。
今まさに駆け出しとされている芸術家と、彼らの作品の何が違うのか。
皆さんは、それらを言語化することはできるでしょうか?

学校で習う勉強にも、人との関係性にも、全てには最良となる答えがある。
それを知るからこそ、その最良だけを拾い集め、要領良く日々を過ごしてきた主人公・矢口矢虎。
彼の興味を美術の道へと導いた一番最初の入り口となったのが、美術に対するこの問いでした。

上記の問いには、それぞれキチンとした答えがあります。
それならば、その答えを網羅して作られた美術作品は、この世で一番価値のある美術作品となりうるのでしょうか?
答えはもちろん、NO、ですね。
技術や理論を越えたところにある、芸術・美術の魅力。
それを知ったことで、どんどん美術の道に魅了されていく主人公。
彼と同じように、この漫画を読めば芸術に興味のない方でもその魅力に気づくことができるのではないかと思います。
またこの漫画の面白いところは、作中に登場する美術作品について、全て実在する新進気鋭の芸術家の作品を使用している点にもあります。
もともと美術や芸術が好きな方はより楽しめるのではないでしょうか。

さらにこの漫画には個人的に人生の金言とも呼びたくなるような、最も注目したいコマがあります。
それはやはり美大受験も差し迫り、いよいよ自室で精神的に追い詰められている矢口矢虎を描いたシーンでの言葉でしょう。
「好きなことをやるって いつでも楽しいって意味じゃないよ」
胸に刺さりました。

「好きなことやって遊んで金がもらえるっていいよね」
「趣味を仕事にはしない方がいいよ、楽しくなくなるからね」
美術や音楽といった、いわゆるカルチャーや娯楽に近い進路や仕事を選んだ人へ、こんな言葉をかける人がいますよね。
もしかしたら、実際に口にしたことがある方もいるかもしれません。
中にはそんな気持ちで娯楽を進路に選ぶ人も存在するでしょうから、この言葉は確かにあながち間違いではありません。
娯楽やカルチャーにおける仕事で人の入れ替わりが多いのは、上記のような軽い気持ちで志した人が多いのも確かに理由の1つでもあるのでしょう。

ですが芸術に関わる道を本気で歩んでいる人から言わせてみれば、自分の選んだ道はまさに、漫画に登場する矢口矢虎のシーンの一言に尽きるでしょう。
さらに言えば、それを知ってなお、毒を食らわば皿まで、と、彼らは腹を括っているのです。
楽しくない、という気持ちで好きなことが嫌いになれるのであれば、始めから自分の思いはその程度のものだったのだ、と。
アートを本気で仕事にしている人たちは、強い執念で決意しています。
そう強く断言するのは、私自身も、その人間の内の1人だからです。

好きなことを仕事にしている人。
あるいはどんな形であれやり続ける人。
彼らの中で大人になっても、10年、20年、30年とそれを続ける人間には、2種類のパターンがいると思っています。

・好きなことに関しては、楽しいことも辛いことも全て受け入れる自信のある人。
・好きなことが文字通り、自分の人生においての生き甲斐である人。

大人になれば、世間からの目だったり責任だったり、守らなければいけないものもたくさんできます。
それでも仕事や趣味として、好きなことをずっと続けている人たち。
彼らはみな同じく、好きなことに対する執念を纏っているように見えます。

一度はその熱を失ったとしても、心の奥底から、その執念による熱を思い起こさせてくれるような。
今もなおその執念を燃やしている人にとっては、よりその熱をさらに熱く燃やしてくれるような。
この「ブルーピリオド」は、そんな作品なのではないかと思います。

ブルーピリオド
著者:山口つばさ
出版社:講談社
発行:2017年12月22日第1巻発売

※画像はAmazonより引用させていただきました

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