コンビニを舞台に繰り広げられる人間ドラマ 小説「コンビニ・ララバイ」池永陽著
レジ袋
令和2年7月1日よりレジ袋が有料化になりました。
ほぼ毎日のようにコンビニやスーパーで買い物をするくせに、今までエコバッグをあまり使わなかった私はやっぱり忘れがち。
元来、物を持ち歩くのが嫌いなので近所に買い物に行くときは財布のみなのも原因なんでしょうね。
それならば車に“置きエコバッグ”をしておこうと思い2つほど車に。
でも、忘れる。
「もう、エコバッグをバッグにしなよ」
と妹。
「財布だけ出して買い物行きそう」
と息子。
「もう買い物しなきゃいい」
と母。
うーん…。
カンガルーみたいに袋があったらいいのに。
さて、今回ご紹介する小説は池永陽さんの「コンビニ・ララバイ」です。
では、あらすじを簡単に
小さな町の小さなコンビニ「ミユキマート」。
しかし、オーナーの幹郎は何に対してもやる気がありません。
息子を轢き逃げされて、精神的に弱っていた妻に1日中ついていてやりたいために開いた小さな個人経営のコンビニ。
その妻も息子が亡くなった1年後、事故で死んでしまいます。
幹郎は2人を幸せにできなかったことを悔やんでいるのです。
従業員の治子に終夜営業をやろうと言われても、いつものらりくらりとかわしています。
これではいつつぶれてもおかしくはありません。
そんな店には幹郎と同じように悩みや悲しみを抱えた人が集まってきます。
治子に惚れてしまったヤクザ者、声を失った女優の卵、彼氏に援助交際をさせられる女子高生…。
幸せになりたいと思う不器用な人々のささやかな願いは叶うのでしょうか?
7編からなる連作短編集です。
作者情報
作者の池永陽さんはグラフィックデザイナーを経てコピーライターとして活躍されました。
1998年「走るジイサン」で第11回小説すばる新人賞を受賞し小説家デビューし、2006年には「雲を斬る」で第12回中山義秀文学賞を受賞しています。
ちなみに「コンビニ・ララバイ」は「本の雑誌が選ぶ2002年上半期ベスト1」に選ばれた作品です。
少し重め
さて、物語は幹郎が経営しているコンビニ「ミユキマート」が舞台です。
7編の連作短編集で1話目と7話目は幹郎が語り手になります。
2話から6話まではコンビニに来る人物がそれぞれ語り手になっています。
幹郎をはじめとした登場人物それぞれが抱えるのは「コンビニ」という気軽さとは反対の結構重めなものです。
やる気のない幹郎ですが、困っている人、悩んでいる人には敏感で、手を差し伸べてしまう暖かい優しさを持っています。
それはきっと、自分もどうしようもない切なさ、やりきれなさを抱えているからなのだろうなと思いました。
痛みを知る人は他者の痛みを汲み取ることが出来るんですね。
どの話もスッキリとした結末はなく、また、同じ登場人物が登場するわけでもないので、それぞれの登場人物の行き先は読者に委ねられています。
しかし、幹朗との関わりで人々はほんの少しでも変わっていけるような、そんな気がします。
みんな幸せになって欲しいな。
ほぼ男女関係がメインで描かれているので、直接的な生々しい絡みが多かったのは、死の描写に対しての“生”を感じさせたかったからなのでしょうか?
ちょっとドキドキしてしまった。
ほっこり系と思いきや、胸にズドンとくる割とハード目な作品です。
コンビニ・ララバイ
著者:池永陽
出版社:集英社
発行:2005年6月22日
※画像はAmazonより引用させていただきました