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「その女アレックス」次々と予想を裏切られるミステリ小説ピエール・ルメートル著 橘明美訳

先日、久しぶりに息子と少し離れた書店に行った帰り道での出来事。

信号で停止中、歩道で犬を散歩させていたおじいさんがいました。
多分、ポメラニアンをサマーカットしたのでしょう。
柴犬をうんと小さくしたようで、とても可愛らしかったです。

「可愛いね。ポメラニアンだよね」
「そうじゃね?」
信号が青になり、車を発進させた途端、息子が

「サーターアンダギー」
とひとこと。

「へ?」
なぜ突然沖縄のお菓子?
「サーターアンダギーみたいな犬いるじゃん」
「…。トイプードルのこと?」
私は茶色のトイプードルを連想しました。

「違うよ。形じゃなくて」
どうやら犬種のことを言っているようだったのですが、私はもう“サーターアンダギー”が頭から離れず
「?????」状態。

「ほら、散歩させないとすごくデブる犬」
「ウェルシュコーギー!!」
「それな!」

“ギ―”しかあってないじゃん。

言葉を感覚や響きで捉えてしまうので息子はいつも想像の斜め上をいく。
「エベレスト」を「アメジスト」とかね。
そんな息子は国語が大の苦手。

でしょうね。

さて、今回ご紹介する小説は「その女アレックス」です。
予想や予測が次々と覆されます。

では、あらすじを簡単に

非常勤看護師のアレックスは30歳の女性です。
ある日、行きつけのウィッグ店に行った帰り道、彼女は、ずっと自分をつけてきていた謎の男にいきなり拘束され、誘拐されてしまいます。
気が付くと彼女は格子状の檻に監禁されていました。

彼女を誘拐した男は「淫売がくたばるのを見てやる」「おまえが死ぬのを見たい」と答えるのみです。
アレックスは食べ物もろくに与えられず、次第に衰弱していきます。
一方、パリ警視庁犯罪捜査部カミーユ・ヴェルーヴェン警部は二人の部下とともに、犯人の身元も女の素性も不明な状態から誘拐事件を追っていくのですが。

作品情報

作者はピエール・ルメートルです。
1951年、パリに生まれました。
教職を経て、2006年、カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズ第1作「Travail soign´e」でデビューしました。
同作でコニャック・ミステリ大賞ほか4つのミステリ賞を受賞しています。
『その女アレックス』はヴェルーヴェン・シリーズ第2作で、イギリスで話題となり、イギリス推理作家協会インターナショナル・ダガー賞の受賞作となりました。

目まぐるしい展開

冒頭、あまりアレックスのことを詳しく語られないうちに、いきなりの拉致、監禁シーン。
「どうして?」
「なんでこんな目に?」
とその暴力の生々しさ、凄惨さに少々気が滅入ったことは事実です。

物語は3部構成になっており、アレックス視点、カミーユ視点で進行していきます。
淡々と短いセンテンスでテンポよく描かれていますので非常に読みやすい構成になっています。

読み進めるうちにアレックスに抱く印象が自分の中でも二転三転するのがとても面白い。

通常、ミステリー小説や推理小説などは中盤辺りから何となく展開や予想がついてしまい、やや冗長な印象をもってしまうこともあります。
しかしこの作品は、中盤でものの見事に読者を裏切ってくれますので、最後までページを捲ることを止められません。
そしてその裏切りはラストまで継続していきます。
450頁一気に読んでしまいました。

陰鬱な空気が漂う世界観は北欧ミステリーに似た雰囲気です。

「ミレニアム」シリーズが好きな方はハマると思いますよ。

その女アレックス
著者:ピエール・ルメートル
出版社: 文藝春秋

発行:2014年9月2日

※画像はAmazonより引用させていただきました

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