映画「フランシス・ハ」人生の岐路に立った時、どうやって乗り越える？

小学生の頃、母親に買ってもらった本で、今でも私の大好きな作品が「若草物語」です。
「若草物語」はルイーザ・メイ・オルコットによる自伝的な物語です。
１９世紀後半のアメリカが舞台で、マーチ家の４人姉妹を描いています。

中でも活発で男勝りなジョーが大好きでした。
ジョーのセリフは声に出して読んでいたので、多分全部覚えていたと思います。
何度も何度も繰り返し読んだのでボロボロになってしまい、もう一冊同じものを買って貰ったほど。

何度か映画化もされていますが、印象に残っているのは、ウィノナ・ライダーがジョーを演じた1994年版です。
原作に忠実で、衣装も背景も素晴らしい作品だと思います。

昨年アメリカで公開された「ストーリー・オブ・マイライフ　わたしの若草物語」はアカデミー賞にもノミネートされていましたね。
日本では新型コロナウィルスの感染拡大により公開が延期になっていましたが、ついに、６月１２日に公開が決まったようです。

映画館で鑑賞したいと思っています。今から楽しみ。

さて、今回ご紹介する映画は「フランシス・ハ」です。
「ストーリー・オブ・マイライフわたしの若草物語」の監督グレタ・ガーウィグが主演です。

ニューヨーク、ブルックリンで、親友ソフィとルームシェアをしながら楽しい日々を送っていた27歳のフランシス。
彼女はプロのモダンダンサーを目指し、バレエカンパニーに研究生として所属しています。
彼女は鈍感で、空気が読めず、発言もなんとなく幼稚。
でも、なんだかとてもチャーミング。
そんな彼女にも、ある日転機が訪れます。
付き合っていた彼氏から、同棲の話を持ち出されたのです。
しかし、彼女はそれを拒否。
ソフィーと暮らしている方が楽しいと、親友を選び、彼氏との関係を解消してしまうのです。
にもかかわらず、今度はソフィーが別の友達とルームシェアをするといい、出て行きます。
家賃を払えないフランシスは、渋々アパートを退去。
そして居場所を求めて町を転々とするはめになります。
さらにダンサーとして所属していたバレエカンパニーからは解雇され、周りの友人たちは次々と身を固めていき、彼女は次第に焦りを覚え…

監督のノア・バームバックはウェス・アンダーソンとの共同脚本執筆作『ライフ・アクアティック』（2004）で注目を浴び、監督作『イカとクジラ』（2005）ではアカデミー脚本賞にノミネートされました。
2019年の米英合作映画『マリッジ・ストーリー』もアカデミー賞の作品賞、脚本賞にノミネートされていましたね。

主演を務めたグレタ・ガーウィグとは2011年から交際しており、2019年には第一子が誕生したそうです。

主演のグレタ・ガーウィグは女優としてだけではなく、制作志向も強いようです。そして、2017年に『レディ・バード』を監督。この作品は批評家から絶賛され、アカデミー監督賞とアカデミー脚本賞にノミネートされています。
自身の半自叙伝という『レディ・バード』は、思春期特有の“こじらせ”を寄り添うように肯定してくれる作品だと思います。
そのような側面が多くの女性の共感を呼んだのかな？
「ストーリー・オブ・マイライフわたしの若草物語」でもその才能がいかんなく発揮されているようですよ。

能天気で、大人になり切れない幼稚な面のあるフランシス。
けれど、頑固な一面や見栄っ張りなところもあります。
しかし、憎めない人懐っこさがあるんですね。
“こじらせ女子”と一言でくくってしまうには惜しい魅力的なキャラクターです。

がっしりした体格でドタドタ街中を疾走するシーンは、爽快で観ているこちらもなんだかウキウキします。

人生の岐路に立った時、誰もが感じる取り残されたような気分。
酔っぱらって暴言を吐いたり、衝動的に旅行に出かけたりしたくなる経験、そういえばあったなと思います。
しかし、どんなことがあっても前向きに走り続けるフランシスを観ていると、「何とかなるかも」と勇気を貰えます。

ラストに明らかになる“ハ”の意味。
「ああ、そういうことか」と洒落た演出に思わず笑みがこぼれます。

躍動感あふれる映像と音楽、クルクル変わるフランシスの表情に引き込まれ、モノクロ映像だということを忘れてしまいそう。
不思議な鮮やかさを感じさせる映画でした。

監督：ノア・バームバック
脚本：ノア・バームバック
グレタ・ガーウィグ
キャスト：グレタ・ガーウィグ
ミッキー・サムナー
アダム・ドライバー
マイケル・ゼゲン
パトリック・ヒューシンガー
2012年：アメリカ

※画像はAmazonより引用しました。