２人がいる空間は甘く繊細でそして、エロい…。映画「窮鼠はチーズの夢を見る」

021年第44回日本アカデミー賞が2021年3月19日(金)の授賞式で発表されましたね。
その中でも草彅剛さんの最優秀主演男優賞の受賞は私もとても感動しました。
いつも飄々とゆるゆるした感じの草彅さんはSMAPの中でも演技力がずば抜けていたと思います。
彼が出ているドラマや映画は欠かさず観ていました。
「ミッドナイトスワン」は残念ながら映画館で観ることはできませんでしたが、925秒という異例の長さの予告篇を観て、「やっぱりすごいな」と思いました。
これから、もっと映画やドラマに出演する可能性が出てきたと思います。
ほんと、良かった。

さて、今回ご紹介する映画は「窮鼠はチーズの夢を見る」です。私の中ではこの作品が最優秀作品賞です。

大学時代から、女性に言い寄られると断れないという流され体質な大伴恭一は、妻とも何となく結婚したという非情な男。
そんな恭一の前に学生時代の後輩、今ヶ瀬渉が７年ぶりに現れました。
再会を喜ぶ恭一ですが、興信所の調査員をしているという今ヶ瀬から資料を見せられた彼は青ざめます。
今ヶ瀬が見せた資料は恭一の妻が依頼した浮気調査の証拠写真だったのです。
流され体質な恭一は結婚しても言い寄る女性を断れず、浮気を繰り返していたのです。
今ヶ瀬は調査対象が恭一であることが分かったため、事前に報告に訪れたのでした。
恭一は今ヶ瀬に口止めを頼むのですが、今ヶ瀬が出した条件は恭一とキスをすることでした。
「ずっと、先輩が好きでした」「ごめん、無理」と断った恭一ですが、そうです、恭一は流される男なのです…。

監督は行定勲さんです。1968年生まれ熊本県出身。
岩井俊二監督作品の助監督を経て、『OPEN HOUSE』（1997年）で監督デビューしました。
『GO』（2001年）では第25回日本アカデミー賞作品賞・最優秀主演男優賞・最優秀助演男優賞・最優秀助演女優賞を受賞し一躍脚光を集めました。
主な作品に『世界の中心で、愛をさけぶ』（2004年）、『クローズド・ノート』（2007年）、『ナラタージュ』（2017年）、『劇場』（2020年）などがあります。
あ、私の中では『劇場』も昨年の映画の中ではベスト3に入ります。

主演は大倉忠義さんです。ジャニーズ事務所所属で関ジャニ∞のメンバーですね。
映画やドラマ出演も多く、端正な顔立ちで「必殺仕事人」など時代劇でも活躍されています。
お父様が居酒屋チェーン「鳥貴族」の創業者で社長と言うのは有名ですね。

今ヶ瀬を演じたのは成田凌さんです。『MEN’S NON-NO』のモデルとして活躍されていますが、今は映画やドラマでの活動の方が目立っていますね。
そして、様々な作品ごとに見せる顔が違うのは驚きです。
彼は本作で日本アカデミー賞の優秀助演男優賞を受賞しています。

本作は水城せとなさんの漫画『窮鼠はチーズの夢を見る』『俎上の魚は二度跳ねる』が原作になっています。ジャンルとしてはBL作品かな？

しかし、性別関係なく、本作は恋を知っているすべての人の心に深く刺さる作品だと思います。

好きな人が隣にいるときの高揚感、晴れて結ばれてからはいつか来る終わりにおびえる焦燥感が呼び覚まされます。

一度は拒否したものの流されるように関係を続けるうちに相手が愛おしく感じる、非情な男の大倉さんのうろたえが可愛い。
なによりも、大好きという感情を表情、仕草、眼で表す成田さんの演技は鳥肌ものです。こっちまで切なくなってしまう。
後半、恭一と彼の部下の岡村たまきとの急接近に今ヶ瀬は嫉妬心を募らせます。
挙句、お互いの不安が爆発し激しく言い争う羽目に…。
そして、別れを決意した２人が訪れた朝方の海辺で、今ヶ瀬が恭一に言った
「心底惚れるって、全てにおいて、その人だけが例外になる」
今ヶ瀬と別れた後、恭一と付き合うことになったたまきが、彼が前の恋を引きずっていることを察して言った、
「好きになり過ぎると、自分のかたちが保てなくなり、壊れる」
この２つのセリフと場面がとても印象的で心に残りました。
濃厚で生々しいベッドシーンもありますが、２人が美しすぎて愛しすぎて…。
苦しくて切なくて甘い余韻に浸れる映画です。

【窮鼠はチーズの夢を見る】
監督：行定勲
脚本：堀泉杏
原作：水城せとな
『窮鼠はチーズの夢を見る』
『俎上の魚は二度跳ねる』
出演者：大倉忠義
成田凌
吉田志織
さとうほなみ
咲妃みゆ
小原徳子
製作年：2020年
製作国：日本

※画像はAmazonより引用させていただきました