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己の信念を曲げず命を懸けて知る。先人たちの熱量に圧倒される。漫画「チ。-地球の運動について-」魚豊著 小学館

小さなころから勉強が大嫌いで、学校は友達と遊ぶことを目的に通っていた私の末の妹。3人姉妹の三女。
中学生の時もテスト勉強など全くしたことはないのでテストの結果は散々でした。
「よく高校へ入れたものだ」
といまだに母親に言われています。
車の免許を取る時も勉強をしないので仮免と本免は2回落ちているし。
けれど、ひょっとしたら三女が一番頭は良いのかもしれません。
彼女は興味を持ったことに関しては驚くほど集中し、習得するのです。
例えば、ハングル文字。20代の頃、旅行に行った韓国に興味を持った彼女は、帰国後、独学で2週間でハングル文字を習得しました。
今でも読めるんですよ。
そして、パソコンを習いに行っていた時は、ブラインドタッチを習得することに熱中し、タイピングだけはものすごく早く、そして、正確なのです。ああ、憎らしい。
父が病気で入院したときも病院の図書室にあった医学書で父の病気を調べ、専門用語まで覚えていたな。
そして、今は編み物に夢中。教えたのは私なのに、今は私より編み目も揃っていて綺麗なものを作るの。
本人も、「生き方間違えた。もっと勉強していたら、医者か弁護士になれたかもしれない」
なんてほざいているので、実は自分は頭がいいということをわかっているのかもしれません。
ならなくて良かった。きっと今よりもっと小憎らしいだろうから。

今回ご紹介するのは漫画「チ。-地球の運動について-」です。

では、あらすじを簡単に

物語の舞台は中世ヨーロッパのP国某所。C教が力を持ち、彼らが唱える、「天動説」“宇宙の中心は地球であり、全ての天体はその周りを複雑に回っている”が信じられていました。C教に背く異端者は拷問や火あぶりなどが当たり前。
ラファウは12歳で大学に行くことが決まった自他ともに認める天才児です。
孤児として生まれた彼の信念は”合理的に生きる“
愛や欲望と言った無駄なものに惑わされず、合理的な選択をすれば世界なんてチョロいもの…。
ラファウは養父である教師ボトツキや友人たちには神学を学ぶと言ってはいたものの本心では天文学を学びたいと思っていました。けれど、ポトツキはそれを許してはくれません。
しかし、ある日、ラファウの前に現れた一人の男によって彼の人生は大きく動かされることに…。

作家情報

作者は魚豊(うおと)さんです。ペンネームの由来は好物の『鱧(ハモ)』から。
幼い頃から絵を画く職業に就きたいと思っていたそうです。
中学生の時に出会った漫画『バクマン。』(週刊少年ジャンプで連載されていた作品。少年2人が漫画家を目指す過程を描いて大ヒットした漫画です)で漫画家になる流れを知り、投稿を始めたということです。
2017年に週刊少年マガジン新人漫画賞で入選した読み切り作品『佳作』で、別冊少年マガジンにて漫画家としてデビューしました。
本作は『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)にて、2020年42・43合併号から2022年20号まで連載された作品です。
単行本の累計部数は200万部を突破。2021年、「マンガ大賞」第14回(2021年)にて第2位、『このマンガがすごい!2022』オトコ編にて第2位、2022年4月には第26回手塚治虫文化賞のマンガ大賞に選ばれるなど、今、大注目の作品です。

タイトルが深い。

15世紀までは「地球は宇宙の中心にあり、太陽や月やなどのほかの惑星が地球の周りを回っている」と人々は信じていました。これを「天動説」といいます。
「地動説」なんて口に出そうものなら、もう、大変。
本作は本当はなんの情報もなしに真っ白なまま読んで貰いたい作品です。
ですので、あまり内容に関しては書くことを控えたいのですが、とにかく、一つのことに命を懸けて情熱と信念を持って追求することの尊さ、熱量に圧倒されます。
私たちが当たり前のように受け入れている真理は遠い昔は異端だった事。
そして、それを次の世代に繋げようとする研究者たちの葛藤があってこその今。
そう考えると、学ぶこと、知ることは無駄ではないということ。
本作を読み、もっともっといろいろなことを知りたい、学びたいと言う欲がムクムクと湧いてきました。
「チ。」は「地」であり「血」であり「知」なのですね。

チ。-地球の運動について-
著者:魚豊(うおと)
出版社:小学館
発行:2020年12月11日

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