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ちょっと背伸びしたオシャレをしてみることで逆に「無理をしている自分」に気づくかも?小説『試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。』尾形真理子著

ファッションの好きな友人に、なぜそんなに服が好きなのか、と尋ねたことがあります。
服を買うことなんて年に2回の年中行事と化し、行く店はもっぱらユニクロかイオン。
Tシャツ1枚に数万円をはたく友人の金銭感覚が分からず、私は冒頭の質問を投げかけたのです。
その友人の答えは「自分の身体を赦してくれた服に出会ってしまったから」というものでした。
身長の割に長すぎる手足や怒り肩、周りの同性に比べ薄い身体の線。
コンプレックスだった自分の身体の箇所を、受け入れてくれる服に出会ってしまったから。
服を着た自分の姿が、赦された時の感覚を忘れることが出来なかったから、と。

この小説に登場するセレクトショップ「closet」は、女主人が1人で切り盛りするファッションショップです。
そこに訪れる様々な女性がこの店で出会った服を試着することによって、自分の中の抑圧していた気持ちや気付くことのできなかった感情を拾い直し、新たな気持ちを持って自身を取り巻く環境に向き合う。
そんな5篇の物語が集められた短編集となっています。

付き合いの長い彼氏との向き合い方に悩むメイコ、不倫相手との関係を断ち切れず悩むクミ、九つも年下の後輩に泣きたくなるほどの恋慕を抱いてしまったチヒロ…。
様々な形で思いを寄せる相手との関係や、醜い自身の感情に囚われてしまう自分に悩む彼女たちの気持ちは、きっと多くの女性が思い当たる感情なのではないでしょうか。

この小説の中で彼女たちに共通しているのは、一度無理をしたファッションを身につけることで同じように無理をしている自己に気付き、ショップの女主人の一言によって無理をしないファッション、そして無理をしない自己への気付きを得る、という心情の変化。
長年誰よりも一緒に付き添ってきた自分を一番理解しているのは、確かに自分自身です。だからこそ、そんな自分の弱さや強がりを素直に受け入れるということはなかなか勇気がいるもの。
彼女たちは、それを目に見えるファッションというアイテムを通すことによって、自分にとって良い変化が起こることを目の当たりにし、それによって無理をしない自分も良いのかもしれない、と自分を赦すことができているのではないかと思います。

物語を全て読み終えた時、思い出したのは冒頭の友人の言葉でした。
そして彼女の言葉の一端を、遅ればせながら理解できたような気がします。
彼女が語った「自分が赦された感覚」というのは、まさにこのことなのかもしれません。
もしそうなのであれば、私たち女性は恵まれたことに、男性に比べ自分自身を赦してあげることのできる手段を多く持っているということ。
ファッションやネイル、メイクにヘアケア。
毎日が忙しいと、ついいつもと全く同じものをチョイスしてしまいがちですよね。
ちょっと背伸びをしたオシャレをしてみることで逆に「無理をしている自分」に気づくなら、試してみるのも素敵かもしれません。

試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。
著者:尾形真理子
出版社:幻冬舎
発行:2014年2月6日

※画像はAmazonより引用させていただきました

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