• HOME
  • ブログ
  • 書籍
  • 着物好き、コーヒー好きさん必見!漫画「ちろり」小山愛子著 ゲッサン少年サンデーコミックススペシャル

着物好き、コーヒー好きさん必見!漫画「ちろり」小山愛子著 ゲッサン少年サンデーコミックススペシャル

20代の頃、少しだけカフェでアルバイトをしたことがあります。
老舗洋菓子店の2代目が趣味でやっていたようなお店で、流行りモノ好きな社長はスイス製の200万円以上もするマシンを導入したり、私の住んでいる長野ではあまりなかったセルフサービス方式を取り入れたりと、当時としては最先端のお店でした。
制服は赤のチェックのベストに蝶ネクタイ、黒のタイトスカートでした。
いつもコーヒーのいい香りに包まれてそれなりに楽しく仕事をしていました。
コーヒーも私たちは自由に飲んでもよかったんですよ。
でも、店のコーヒーの味には最後まで馴染めなかったな…。
それよりも毎日のように通っていた行きつけの喫茶店で飲むコーヒーの方が私は好きでした。
ちっともお洒落なお店ではなくて、昼からビールを飲んで酔っぱらっている人もいる怪しい感じの薄暗いお店でしたが、店長が丁寧に時間をかけてドリップしてくれるコーヒーはとてもおいしかったな。
カウンターで他の常連客とたわいもない世間話をしたり、窓際で本を読んだり…。
好きにしていても誰も何も言わない、邪魔をしない、あの居心地の良い空間がコーヒーと結びついているので、自分の店のコーヒーがおいしく感じられなかったのだと今は思います。
いつの間にかそのお店にも行かなくなってしまいましたが、あれ以上においしいコーヒーにはいまだに遭遇してはいません。

さて、今回ご紹介するのは漫画「ちろり」です。



では、あらすじを簡単に

文明開化に沸く明治時代の横浜。
蔦の絡まる洋館を改装したカフェー「かもめ亭」。
そこで働くのは矢絣の着物を着た小さな女の子“ちろり”。
色っぽいマダムと店に訪れる様々な人々との関りは、ゆったりと移ろう四季の中でちろりの日常にほんのりと色を添えてくれます。

作家情報

作者は小山愛子さんです。青森県十和田市出身、横浜育ちです。だから横浜が舞台の作品が生まれたのでしょう。
以前ご紹介した『舞妓さんちのまかないさん』も彼女の作品です。
『ちろり』は『ゲッサン』で2011年7月号 ~2015年12月号まで連載されていた作品です。
小山さん自身、レトロ趣味があり、普段着も着物が多いようですよ。

“カヒー”が飲みたくなる

本作は明治時代の横浜のカフェーが舞台です。
とりたてて大きな事件が起こるわけでもなく、ちろりとマダムのいる「かもめ亭」のゆったりとした日常が描かれています。
作者が着物好きということもあり、第一話はちろりが着物を身に着ける描写が8頁にわたり詳細に描かれています。
明治時代の女性は着物が普段着であるので、着付けも現在のようにタオルなどで補正をすることなく、身体に沿わせた、ゆったりとした着方です。
ちろりの年齢(多分、12~13歳くらい)からすると少し襟を抜き過ぎかなと思うのですが、明治時代のカフェの女給さんなのでちょうどよいのかもしれないですね。
そして、着物って、柔らかで重みがあるんだよな、ということが良くわかります。
現在の着付けが、折り紙の人形のように角ばって固そうな印象を受けるので、ちろりとマダムのこなれた感じの着物の着こなしがとても素敵。
着物好きさんにはたまらないと思います。
そして、夏に身に着ける「薄物」という透けた着物の存在も知ることが出来てビックリ。とても色っぽい。
「舞妓さんちのまかないさん」でも思ったのですが、店内に置いてある調度品や家具などが細かく丁寧に描かれています。
これも作者の小山さんのこだわりと好きが溢れています。
文字は少なく、柔らかで繊細なタッチで描かれる空間は、優しい空気が満ちていることを感じさせてくれます。
ゆっくりとコーヒー、いえ、作中では“カヒー”でした、カヒーを飲みながら世界観に浸りたい作品です。

ちろり
著者:小山愛子
出版社:小学館
発行:2012年2月10日第1巻発売

※画像はAmazonより引用させていただきました

関連記事一覧