最初の晩餐

食卓が育む家族のかたち 映画「最初の晩餐」

皆さんは「最後の晩餐」に何を食べたいですか?
職場や家庭でこの手の話題になると私はいつも
「桔梗屋の信玄餅!」
と答えます。
晩餐なので多くの方は

「肉じゃが」
「ステーキ!」
「すき焼き」
「あわび!」

なんて、おふくろの味や普段は手が出ない高級な食材などを挙げますが私は
「信玄餅」
一強です。

きなこと黒蜜の絶妙なハーモニーとお餅の歯ごたえ、想像しているだけでよだれが…。

どうやら、桔梗信玄餅工場テーマパークにて信玄餅の詰め放題ツアーもあるようで、我が家でも本当は今年の4月あたりに行く予定だったのですが新型コロナウィルスのせいで中止に…。

先日、息子が友人の付き合いで静岡に自衛隊の戦車の見学会に行く機会があったのでサービスエリアで買うように頼んだのですが、忘れられてしまい、ちょっと本気で怒ってしまいました。

詰め放題もGoToトラベルでツアーがあるようなのですが、よくよく考えると、お土産などで貰った一つの包みを勿体ぶってゆっくり味わうのが至高の極みなので、一度に何個も食べたいものではないからちょっと躊躇してしまいます。

なので「最後の晩餐」がちょうどいい。

さて、今回ご紹介する映画は「最初の晩餐」です。最後ではなく、最初というのがポイント。



では、あらすじを簡単に

ある夏の日。東京に住むフリーのカメラマン東麟太郎は、65歳になる直前だった父・日登志の訃報を受けます。
そして、九州の田舎に帰り、姉の美也子らと葬儀の準備を進めていた麟太郎たちですが、通夜振る舞いの弁当がまだ到着していないというトラブルが発生します。
美也子が弁当屋に電話を入れると、弁当はキャンセルされたとのこと。
しかもキャンセルしたのは一家の母のアキコで、彼女は日登志の遺言だと言い自分が料理を作ると言い出すのです
そして、最初に麟太郎や参列者たちの元に運ばれてきたのは、何と目玉焼きでした。
目玉焼きを食べた麟太郎は、日登志が初めて作ってくれた思い出の料理が目玉焼きであったことを思い出します。
それは、20年前、自分たちが初めて“家族”になった日のことでした。

作品情報

監督は常盤司郎さんです。
CMやMVを数多く手がけ、2006年に、サザンオールスターズ初のドキュメントムービー「FILM KILLER STREET-Director’s cut-」を監督し話題を呼びました。
「最初の晩餐」は長編映画デビュー作になります。

主演は染谷将太さんです。7歳から子役として活動を始め、9歳で映画デビュー。
2011年に第68回ヴェネツィア国際映画祭に出品された園子温監督作品『ヒミズ』で共演した二階堂ふみさんとともに、最優秀新人賞にあたるマルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞しています。日本人の同賞受賞はこれが初だそうです。
私の中ではいまだにこの時の染谷さんの演技が印象に残っています。
絶望と狂気、鬼気迫る演技でした。

姉役は戸田恵梨香さん、兄役は窪塚洋介さん、両親を演じたのは永瀬正敏さんと斉藤由貴さん。
日本映画界を支える豪華キャストが勢ぞろいです。

家族のかたち

この作品の家族は親同士の再婚で“家族”になります。
長男は母の連れ子、長女、次男は父の連れ子です。

そして、出てくる料理が誰もがなじみのある家庭料理で、その料理にまつわるエピソードが、登場する家族の空気感を絶妙に表しています。
赤みそと白みそ、好みがそれぞれ違うなら合わせればいい。
そうやって家族として歩み寄る、温かな家族の食卓に並べられた料理は子供の頃の思い出を呼び覚まします。
しかし、あることがきっかけで兄が家を出ることになり、ようやく出来上がった家族の形がほころびを見せ始めます。

それは、父と母が抱える秘密でした。

通夜の夜、母から真実を聞かされ激高する美也子の気持ちもわかります。
親の生々しいことは聞きたくない気持ち。
それを、終始ほんわかとした雰囲気を崩さず受け入れる斉藤由貴さんの演技が冴えています。
永瀬さんのお父さんもなんだかとてもこの物語にあっていました。
懐の深い、いいお父さんです。

過去のシーンで起こる出来事は少しミステリータッチで不穏な空気を感じさせますが、食事によって温かさが失われることはなく、食卓を囲むことで家族の形を築いているんだなと思わされました。
温かく優しく、ほんのりと切ない作品です。

【最初の晩餐】
監督:常盤司郎
脚本:常盤司郎
出演者:染谷将太
戸田恵梨香
窪塚洋介
斉藤由貴
永瀬正敏
森七菜
楽駆
製作年:2019年
製作国:日本

※画像はAmazonより引用させていただきました

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