静かな余韻がずっと続く…。映画「静かな雨」

最近、眠る時にはYouTubeで雨音を聞いています。
落ち着くんですよね。雨音。
そういえば昔「雨音はショパンの調べ」という曲がありました。世界的にヒットした曲で日本では小林麻美さんがカバーしていました。
イントロと間奏のピアノの旋律がとても美しく、小林麻美さんのアンニュイで囁くような歌声にマッチしていて素敵な曲です。雨音と聞くと今でもこの曲を連想します。
雨音、風の音、小川のせせらぎ…。自然音には癒しの効果があるようですね。
本当は実際の雨の音が一番癒されるんですけれど、今はいろんな音がそろっていて選ぶのも楽しいのです。
少し前は「たき火の音」にハマっていました。
しばらくしたらまた変わるんだろうな。次はなんの音で眠ろうかしら?

さて、今回ご紹介する映画は「静かな雨」です。



では、あらすじを簡単に

大学の研究室に勤める青年、行助。彼は左足に障害があるためいつも引きずって歩いています。
そんなある日、彼は屋台でたい焼きを売っている女性こよみと出会います。
ささいな会話を重ねながら次第に親しくなっていく行助とこよみ。
しかし、行助がこよみに電話番号を渡したその夜に、彼女が交通事故に遭ってしまいます。
しばらくして、昏睡状態から目覚めたこよみは、新しい記憶を1日しかとどめておけない記憶障害を患っていました。
行助は、今日のことを明日には忘れる、そんなこよみと生きていこうと決意するのですが…。

作品情報

監督は中川龍太郎さんです。1992年生まれ、神奈川県出身です。
映画監督、脚本家であり、そして詩人、エッセイストとしても活動をしています。
2012年、自主制作で監督した『Calling』がボストン国際映画祭にて最優秀撮影賞受賞しました。
2017年の監督作品『四月の永い夢』が世界四大映画祭の一つ、第39回モスクワ国際映画祭にて国際映画批評家連盟賞を受賞しています。
新鋭の映画監督として国内外で注目されています。

本作品は仲野太賀さんと元乃木坂46の衛藤美彩さんのW主演作です。
仲野さんは演じる役柄によってさまざまな顔を見せてくれる演技の幅が広い役者さんですね。
衛藤美彩さんはアイドル卒業後、女優としての初主演作ということです。
モデルとしても活動されているようですね。

心に染入る

さて、本作は映画化もされた2016年本屋大賞受賞作『羊と鋼の森』の著者である宮下奈都さんのデビュー作で2004年文學界新人賞佳作に選ばれた『静かな雨』(文春文庫刊)が原作です。
知らずに観たのですが、観た後に調べて、「ああ、そうか」と納得。

監督は原作ありの作品を監督するのは初めてということですが、宮下奈都さんの言葉が紡ぐあざやかで繊細な世界観が忠実に表現されています。
この世界観だけでもう満足。

物語は行助とこよみの2人の世界が淡い色彩で、淡々とつづられていきます。
しかし、こよみの記憶は1日しか持たない…。
毎朝、目が覚めると「雨、やんだね」と聞きます。
記憶を失った日に雨が降っていたからです。
そしてそれは記憶がもどっていないことの合図。
行助はいつも優しく、答えるのですが…。
繰り返されるこの朝のルーティーンともいえる言葉を聞いた時のかすかな絶望を含んだ行助の表情、胸が締め付けられます。仲野さん、凄い。
そして、透明感あふれる衛藤さんの頼りなげだけど、凛としたたたずまいのこよみ…。素晴らしい。
2人の世界は、儚さも感じられますが、優しくて穏やかで心地良い静けさがあります。
目覚めるたびに記憶を失うこよみと彼女を支えていく行助。
2人が出会う哀しみ、喜び、そして奇跡を、そっと寄り添うように観ていたい作品です。

【静かな雨】
監督:中川龍太郎
脚本:梅原英司
中川龍太郎
原作:宮下奈都「静かな雨」
出演者:仲野太賀
衛藤美彩
三浦透子
坂東龍汰
古舘寛治
川瀬陽太
河瀨直美
萩原聖人
村上淳
でんでん
上映時間:99分
製作年:2020年
製作国:日本

※画像はAmazonより引用させていただきました

関連記事一覧