舟を編む

静かな情熱に満ちた作品 映画「舟を編む」

コロナ禍により家で過ごすことが多くなり、夏ごろから母親につられ私も編み物沼にハマりこんでいます。
これまでも毎年、冬になると毛糸を買い込んではいたのですが、編みたいものがたくさんあり、その中から何を編もうと悩んでいるうちにイヤになってしまうので何も完成させたことはなかったな…。

今年は時間だけはたくさんあったので、麻ひもで編んだバック2点、毛糸のバックは妹に3点、自分用に2点、他にも膝掛、ストール、靴下などを完成させることが出来ました。
今までため込んでいた毛糸たちもやっと陽の目を見ることが出来ました。
年齢のせいか、最初の内は指が攣ったり、手首が腱鞘炎のように痛んだりしたのですが、今は慣れたのか平気です。
一目一目編むことは根気がいるし集中力も必要で大変ですが(どれも私には欠けているので…)、それだけに出来上がった時の喜びはひとしおです。
冬が終わるまでにはこたつカバーかベットカバーを編みたいな…。

さて今回ご紹介する映画は「舟を編む」です。



では、あらすじを簡単に

時は1995年。出版社玄武書房の辞書編集部は、本社ビルの隣の古い小さなビルの中にあります。
監修するのは高齢の国語学者・松本先生。
彼の片腕ともいえる編集者の荒木は定年と妻の病気を理由に部署を去ろうとしていました。
辞書編集部には荒木の他に若手の西岡という社員がいるのですが、チャラチャラしている彼は、辞書編集には向いていません。
そこで、荒木に代わる編集者を他部署に探しに本社に行くと、宣伝部に馬締光也という若手社員がいました。西岡と親密な関係にある三好麗美からの情報では、大学院で言語学を学んだようです。
オタク風で変人な馬締は部署でも浮いた存在でした。
荒木は馬締に「右という言葉を説明してみろ」と言います。
彼はぼそぼそと「西を向いたとき北に当たる方」と答えます。
馬締の言語感覚に感心した荒木は、馬締を辞書編集部に引き抜きます。
そして松本先生が熱意を燃やす新しい辞書『大渡海『(だいとかい)』の編纂を進める辞書編集部の一員となるのです。

作品情報

監督は石井裕也さんです。商業映画デビュー作の「川の底からこんにちは」で第53回ブルーリボン賞監督賞を史上最年少(28歳)で受賞するなどで注目を集め、本作「舟を編む」はこれも史上最年少(30歳)で第86回アカデミー賞外国語映画部門日本代表作品に選出されました。
以前ご紹介した「町田くんの世界」も彼の作品です。
主演は松田龍平さんと宮﨑あおいさんです。
オダギリジョーさん、小林薫さん、そして加藤豪さん八千草薫さんといった演技派が脇を固めています。

分厚くて重い辞書

学生時代にお世話になった辞書。分厚くて重くて小学校の頃はランドセルに入っていると重くていつもの道が倍の距離に感じられました。
「こんなに分厚い本はどうやって作られるのだろう?」
当時、疑問に思っていたことがこの映画で解明されました。
すっごく大変で手間も時間もかかるんですね。
そして紙の質にも拘りがあって…。そういえば辞書を捲るのってなんだか気持ち良い手触りだったなと思い出しました。

見るからに変人な馬締(まじめ)さん。コミュ力ゼロですが言語感覚に優れています。
学生時代からお世話になっている下宿先では部屋を好きに使わせてもらっていてその部屋は本で溢れています!
この下宿先の郷愁を感じるなんとも言えない空気感。いいな。
松田龍平さんがピッタリと役に溶け込んでいます。

日本語は繊細で複雑で一つの言葉にも色々と意味があって、その海に深く潜れば潜るほどのめり込んでいく。
辞書を作ることを「編む」と表現していますがとても秀逸だと思いました。
多くの人の手によって作られていく辞書。大変だけれど楽しそうにも思えます。
そして、日本語はやっぱり美しい。

ひとつのことに15年も情熱を注ぐ…。果てしなく思えますが完成したときの喜びは計り知れないものですね。
辞書作りという地味で緻密なテーマを、静かな情熱が満ちた作品に編み上げた「舟を編む」
きっと辞書に触れたくなると思いますよ。

【舟を編む】
監督:石井裕也
脚本:渡辺謙作
原作:三浦しをん
出演者:松田龍平
宮﨑あおい
オダギリジョー
小林薫
池脇千鶴
黒木華
渡辺美佐子
伊佐山ひろ子
八千草薫
加藤剛
製作年:2013年
製作国:日本

※画像はAmazonより引用させていただきました

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