心がホッコリする推理小説はいかが?小説「月曜日の水玉模様」加納朋子著 集英社文庫
仕事を辞めて家にいるようになってからもなぜか月曜日の朝は苦手です。
起きた時から憂鬱な気分。
日曜日の3時過ぎくらいからふつふつと湧いてくる憂鬱。
休みが終わってしまう寂しさと新しく始まる週への不安。
小学生からずっと感じているような気がします。
息子にも遺伝したのか、小学校、中学校の頃は月曜日によく休んでいたな。
「頭痛い」
「お腹いたい」
そのうちストレートに
「行きたくない」
と言っていたっけ。
気持ちはわかるので強くは言えないけれど、時には布団に潜りこむ息子を無理やり起こして学校に連れていったこともあります。
息子は学校に行けば気分も晴れるのです。朝だけ嫌なのです。
息子の気持ちの切り替えの早さは私には無い部分なので少し羨ましい。
私は仕事に行ってもしばらくは憂鬱が続いていたな…。
そんな話を妹にしたところ、妹は
「月曜どころか土曜だって日曜だって朝は機嫌が悪いじゃない。毎朝だよ。全身から不機嫌オーラ漂ってるよ」
ですって。
だから、朝の私には話しかけないようです。そういえば猫も寄って来やしない。
そういうことだったんだ。少し反省。
さて、今回ご紹介する小説は加納朋子さんの「月曜日の水玉模様」です。
では、あらすじを簡単に
丸の内にある会社に勤める一般職のOL片桐陶子は、彼女が乗っている通勤電車で、毎朝、彼女の目の前の座席ですやすや寝息を立てている若いサラリーマン荻とふとしたことから知り合うことになります。
いつもと同じ時間、同じ車両、同じ吊革につかまり1週間が始まるはずだったのに…。
彼女が感じた日常の違和感はちょっとした謎となり、リサーチ会社に勤務する荻と共に解明していくことになり…。
普通の毎日に隠された謎は時にほろ苦く、そして愛しくもある。
月曜日から日曜日まで7編の連作短編ミステリーです。
作家情報
作者は加納朋子さんです。1966年生まれで福岡県北九州市出身です。
1992年『ななつのこ』で、第3回鮎川哲也賞を受賞し作家としてデビューしました。
1995年に「ガラスの麒麟」で第48回日本推理作家協会賞(短編および連作短編集部門)を受賞しています。
ジャンルとしては推理小説ですが、凄惨な殺人事件などはあまり起こらず、本作のような「日常の謎」を明かしていくようなストーリー展開が特徴です。
「せめて物語の中だけでも楽しいことが起こってほしい」という加納さんの思いからだそうですよ。
ほっこり
陶子は普通のOLなのですが、観察力と洞察力に優れています。そして、ちょっぴり勝気なところも見受けられます。
対する荻君はのほほんとしていてたまに「おい!」と喝を入れたくなるような人物です。
この2人の掛け合いが絶妙で面白い。
普通の日常にある違和感。
気付かずにそのままにしていれば過ぎ去ってしまったかもしれない事。
それを柔らかな表現で鮮やかに紐解いていくさまにぐいぐいと引き込まれます。
登場人物がみんな魅力的に描かれているのもいい。なんだか憎めないのです。
全体に流れるほんわかとした空気感はミステリということをたまに忘れてしまうほど。
月曜から日曜まで7篇ありますのでゆっくり1週間かけて読むのもありですが、
面白いのでついつい終わりまで読んでしまうと思います。
そして、タイトルにちりばめられた仕掛けも可愛いんです。
推理小説だけれど読後は心がホッコリと温かくなる不思議な作品です。
月曜日の水玉模様
著者:加納朋子
出版社:集英社
発行:2001年10月19日
※画像はAmazonより引用させていただきました