19世紀末の芸術に魅了されすぎたら世界が広がった☆the decadence☆ vol.19【展覧会2019-前編】
皆さん、こんにちは。緊急事態宣言も解除され、「日常」が戻りつつありますね。
今回の緊急事態宣言によってテレワークが相当数導入されましたが、その有効性から今後もテレワークを継続する企業が増え「日常」の在り方そのものが変化しそうだな、と感じています。
美術館に関しては、国内では再開しつつありますね。
毎年数多くの展覧会があちこちで開催されています。
2020年は「ファッション系」の展覧会が例年よりさらに多く開催される見込みなので個人的にとても楽しみです。
そして昨年2019年は「ラファエル前派繋がり」の展覧会が多く開催されたという印象があります。
そこで今回は、2019年に私が足を運んだ展覧会をいくつか紹介したいと思います。
ラファエル前派展
「ラスキン生誕200年記念 ラファエル前派の軌跡」展には会期中、5回行きました。
何度見ても魅力的でした。(2019/03/14-06/09 ,三菱一号館美術館)
なかでも、大好きなアーサー・ヒューズの作品を見ることができたことは感無量でした。
アーサー・ヒューズの作品は、ミレイの作風よりも繊細で儚い感じがします。
この絵画のモデルは彼の妻であるトライフェナ・フォードです。美しい!
アーサー・ヒューズは家庭を愛し、彼の妻をモデルに複数の作品を描きました。
アーサー・ヒューズの描く絵画はどれも優しさが溢れているなあ、と思いながら鑑賞していましたが、この展覧会に一緒に行った芸術に精通している友人が彼の作品を総じて「怖い」と言っていたんです…
詳細は聞かず自分で考えようと思ったのですが、自分の視点では怖さが分からず。
そろそろGoogle先生に頼ろうと思っていますが、皆さんはこの絵画に何らかの怖さを感じますか?
そして、実物を見れるとは思わなかった「ジェーン・モリス」の写真‼
なんと撮影可能エリアに展示されていました(*‘∀‘)
感動、ひたすら感動です。
このドレスは、19世紀、ヴィクトリア朝時代においては前衛的なデザインでした。
コルセットやクリノリンなどによる身体の締め付けがなく、本来の身体の造形を大切にしています。
後に「エステティックドレス」と総称されるドレスの走りです。
その特徴から、この「絵画から生まれたドレス」は現代のファッションの源流と言っても過言ではない‼と個人的に思っています。
この類のドレスは後に老舗百貨店であるリバティ商会を中心として、洗練されたお洒落なデザインとなって販売され、人気を博していきます。
「ジェーン・モリス」と「エステティックドレス」については以前お話したので興味のある方はぜひ読んでみてくださいね。
クリムト展
2019年は日本とウィーンの国交150周年ということで、ウィーンの芸術家、特にクリムトを中心とした複数の展覧会が開催されました。
その中で私が特に魅了された作品を2つ紹介したいと思います。
ひとつは「クリムト展 ウィーンと日本 1900」(2019/4/23-7/10, 東京都美術館)で目にしたクリムト作の『裸のヴェリタス』(1889)です。
縦2.5m以上、横50cm以上の作品です。
どこをとっても美しい。
クリムトの絵画の特徴のひとつである金箔とブルー系の配色が美しく、ふわりとした透明感や繊細な色使いなど、飽きることなく、ずっと見ていました。
この絵画に描かれた女性が手にしている「鏡」、髪周りの「花」、足元の「蛇」、女性の半身を占める「水」、「下ろした髪」「裸体」などは隠語のように何らかの意味合いをほのめかしています。
「象徴主義」と呼ばれる絵画様式です。
ところで、ラファエル前派兄弟団の絵画は、イギリスの芸術家だけでなく、海外の芸術家にも影響をもたらしました。
クリムトもそのひとりです。
ロゼッティ作の『レディ・リリス』(1867)という作品に描かれた静物や、下ろした髪や髪の色などに多くの共通項がみられます。
制作年は20年以上違いますが、どちらも19世紀後半。
ちょうど「女性解放運動」が盛んに行われた時代と一致しています。
当時の社会状況とこれらの絵画には何らかの関係がありそうななさそうな…。
これについてはまたの機会にお話したいと思います。
ふたつ目は、クリムト作の『愛』(1895)です。
「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」展(2019/4/24-8/5, 国立新美術館)で展示されていた作品です。
私の知ってるクリムトの作風じゃない!と自身の無知さを嘆きつつも、魅了された作品です。
よくよく考えたら、作風って変わっていくものですよね。
抱き合う男女の頭上に3人の人物が見えます。
これは「生・老・死」の象徴です。
クリムトは、生死や輪廻をテーマとした作品も生み出しました。
クリムトの作品では、この絵画のように薄っすらとちょっと不気味な何かが描かれていることは珍しくありませんが、この絵画のもうひとつの特徴は「ジャポニズム」と呼ばれる芸術様式です。
「日本趣味」とも呼ばれています。
日本が鎖国の終わりを迎え開国した1854年(江戸後期)以降、日本の文化は西洋に輸出していくこととなり、西洋の芸術家らは日本の芸術に魅了されました。
そして、西洋のあちこちで「ジャポニズム」が流行しました。
ラファエル前派兄弟団のリーダーである画家のロゼッティを始めとする19世紀後半のイギリスの芸術家や、ウィーン出身の画家クリムトなどもジャポニズムに魅了され、自身の作品に日本趣味を取り入れました。
クリムト作の『愛』は、掛け軸のようなデザインで描かれています。
この作品以外でも、クリムトは様々な作品で「ジャポニズム」を取り入れています。
上記の『裸のヴェリタス』に描かれた「金箔」や、金箔の下に描かれた「模様(渦巻き模様や流水文様)」は、琳派の屏風図に魅了されて描かれました。
クリムトの作品の特徴のひとつである「金箔」は日本文化の影響だったのですね。
サラ・ベルナール展
ラストは「パリ世紀末ベル・エポックに咲いた華-ラ・ベルナールの世界展」です。
(2019/12/7-2020/1/31, 渋谷区立松濤美術館)
2018年に群馬県立近代美術館で開催された際に魅了され、渋谷でも同展覧会が開催されるとのことで喜んで飛んでいきました。
「サラ・ベルナール」は、19世紀半ばから20世紀初頭にかけて活躍したフランス出身の大女優です。
パリを中心に活躍し、欧米諸国にも進出し、各地で人気を博しました。
サラといえば、チェコ出身の画家アルフォンス・ミュシャ作のポスターのモデルとしても有名です。
ミュシャもジャポニズムの影響を受けた画家のひとりです。
女性の体のS字ラインは、19世紀末前後に西洋で流行した芸術様式「アール・ヌーボー」の特徴です。
S字ラインは、浮世絵に描かれた見返り美人のS字ラインをはじめとする日本画の影響を受けて確立された芸術様式です。
今回は、イギリスだけでなく、オーストリア、フランス、チェコ、日本と様々な国を跨いでラファエル前派兄弟団と繋がりを持つ展覧会についてお話しました。
サラ・ベルナール展は直接的な繋がりはありませんが、日本趣味繋がり、という観点で書いてみました。
最後に、個人的におススメの美術館をいくつか紹介させてください。
「みんなのミュシャ展」の公式サイトには、オンラインショップがあります。
https://www.ntvshop.jp/shop/g/g210-yc00088/
ヤマザキマザック美術館(名古屋):オンラインで所蔵作品を楽しめます。
http://www.mazak-art.com/index.shtml
大塚国際美術館(徳島):1日では周り切れない陶板レプリカミュージアム。世界各地の芸術作品が展示されています。絵画と同じ構図で写真撮影ができます。
https://o-museum.or.jp/
バーチャル空間で美術館をたのしめる体験型ミュージアムを特設中
ナショナル・ギャラリー(ロンドン)
https://www.nationalgallery.org.uk/visiting/virtual-tours
バーチャル空間で美術館をたのしめる体験型ミュージアムを特設中
ルーブル美術館(パリ)
https://www.louvre.fr/en/visites-en-ligne
興味を持たれた方はぜひ覗いてみてくださいね。