ロマン主義とケセラセラ!
皆さん、こんにちは。
皆さんは最近、どんな場面で「ロマンチック」という言葉に触れましたか?
実際には口に出して言うより、ドラマや小説などで見かける方が多いのではないでしょうか。誰もがうっすらと心の中で求めているものかもしれません。
実はこのロマンチックの語源は、18世紀末ヨーロッパの精神運動「ロマン主義」から来ているんです。
この時代の著名人にはショパン、ジョルジュ・サンド、ドラクロワ、ゲーテなど傑物が揃っていました。
そんな歴史的人物が集まった洋館が今でもパリ・モンマルトルに残されています。
芸術に対する懐の深さは世界一、なフランスはその館を「ロマンチック美術館」に改装し、なんと無料で開放しています。
このコロナ禍の時代、皆さんと同じく色々と思うことがありまして。
こんな時こそアートが必要!ということで、「ロマンチック美術館」に足を運んできました。そこには、ヘトヘトになった脳を回復させてくれる素敵な作品がたくさん詰まっていました。
心がふっくらする作品に出会えたので、ぜひお伝えしたいと思います。
ロマン主義を簡単におさらい
ヨーロッパの芸術家・活動家がそれまでの諸国における理性重視・合理主義といった文化芸術に疲弊し、感受性や主観、恋愛賛美に重きを置いた芸術を生みだした時代をロマン主義時代といいます。
18世紀末から19世紀後半の短い期間だったにも関わらず、後の写実主義に影響をもたらした重要なエポックだったと言えます。
日本ではこの西洋ロマン主義に影響を受け、森鴎外の『舞姫』によってロマン主義文学が始まりました。「大正ロマン」はここから来ていますね。
続く内戦、産業革命に疑問を投げかけたロマン主義は、あらゆる専制に対する人間性の解放をも目指していたのです。
私はこの時代に、世界を座巻した今年のコロナ禍を重ねずにはいられませんでした。
早いもので2020年も残り1ヶ月となりましたが、今年は本当に、疲れましたね。
私が暮らしているパリでは、今までの生活やロックダウンに疲れた人々が束の間の夏を思い切り楽しんでいました。
そんなフランス人たちを横目に、社会経済が変化するならば、アートも比例して変化するかもしれない、と思ったのです。
「もしかしたら今後、新しい芸術活動が世界中で芽生えるのでは?」と淡い期待を抱きつつ。
いざ原点回帰!と、吸い込まれるように、パリはモンマルトルにある「ロマンチック美術館」に足を運びました。
麗しの館
モンマルトルの小さな小さな美術館。
入って数分、第一印象から癒されてしまいました。やはり視覚は大事ですね。
この場所は、フランスを代表するロマン主義者たちが集った館です。文学、音楽、絵画とそれぞれの業界のスターたちが訪れていました。
作家はジョルジュ・サンド。音楽家はショパン。画家はドラクロワ…教科書に載っているスーパースターたちがこの居間で芸術談議に励んでいたのを想像しただけで、感激のあまり身震いしてしまいました。
この館の雰囲気のせいもありますが、なんだか全体的な印象が「柔らかい」。
展示されている絵画をじっくり見てみると、なるほど古典ヨーロッパ絵画との違いがハッキリしています。
良くも悪くも「人間らしさ」を解放したロマン主義。
“社会における自由、芸術における自由…この精神こそが足並みそろえて目指すべき目的である。”と、文人ヴィクトル・ユゴーも語っています。
私の考えですが、このロマン主義思想は現在のフランス人に多大な影響を与えていると思われます。恋愛賛美、主観第一主義、ケセラセラな人生哲学などなど。
そう思うと、ロマン主義がいかに人間の本質をついた思想だったか、改めてその深さを感じたのでした。
ショパンとジョルジュ・サンドの愛
繊細な天才ピアニストのショパンと、男装の作家ジョルジュ・サンドは恋人関係にあり、よくこの館を訪れていたそうです。
当時、ぶっ飛んだ女性と評判だったジョルジュ・サンドとショパンは凸凹カップルのように見えたようですが、お互いの才能に心底惚れ込んでいたとか。
事実、ショパンはジョルジュ・サンドとの交際中に「子犬のワルツ」や「幻想」といった名曲を生み出しています。
この場でどんな会話をしていたのか、名曲が生まれるまで何を感じたのか、妄想することももはやロマンチック。
結局この二人は別れてしまうのですが、その3年後にショパンは39歳で短い生涯を閉じました。自身の恋愛事情を、これほど分かりやすく作品に投影させたアーティストはいないのではないでしょうか。
ですが、本来ならば女々しく感じる部分も、この「ロマン主義」の大切な特徴の一つです。
人間らしく生きていいんだ!と背中を押されているような気がして、心がふっくらしました。
ケセラセラがいい
ロマンチック美術館を後にした日曜日の昼下がり、足取りは軽くなっていました。無料で入ったのに、大きな豊かさをもらえました。
やはりこれが、アートの素晴らしさだと思います。
コロナ禍の傷口が癒えるにはもう少し時間がかかりそうですね。
そういえば、ケセラセラとはフランス語で「なるようになる」の意味ですが、今、世界中の人が必要としている魔法の言葉かもしれません。
感受性を大事にし、人間らしく生きるのが第一のロマン主義と、ケセラセラの精神。
このセットで、大変な時代を乗り越えていきたいものです。
今後来るかもしれない芸術の爆発に、秘かに期待しています!