Cocco「スターシャンク」自らの呪いと共に生きていく、彼女の光に満ちた祝祭の詩
2017年、「もう表に立ちたくない」という言葉を残し、音楽活動から身を引いたCocco。
歌というもの以外に自らを表現できる活動を模索し、絵本制作やアパレルブランド設立、アクセサリー制作など彼女らしい様々な創作活動に勤しんでいたようです。
音楽から距離を置き、絵本やファッションの世界での表現活動を行っていたCocco。
2019年、そんな彼女は唯一無二の歌姫として再び我々の元に帰ってきたのです。
「スターシャンク」と名付けられた、夜空に輝く星のような光を帯びた素晴らしい音楽たちと共に。
アルバム「スターシャンク」のタイトルの由来は、アクセサリー制作における「シャンク留め」という技法から。
1つ1つのパーツを繋ぐこの技法のように、人生を照らす星の光を繋いで生きていきたい、という思いでまとめられた12曲によって、アルバムは形作られているのです。
リードトラックとなる命の輪廻転生をただ静かに真っ直ぐ受け止める「海辺に咲くバラのお話」、沖縄の真っ青な海と空に対峙している様子を思わせるかのような「願い叶えば」、音楽フェスで会場の空気を一瞬で支配した狂気に満ちたパフォーマンスがSNSで話題となった「極悪マーチ」など、今のCoccoだからこそ紡ぐことのできる珠玉の音楽たちが、まるで宝箱に詰められた宝石のような輝きをキラキラと放っているのです。
また今回のアルバムから制作された楽曲のMVは、なんと彼女と二回りも年の離れたまだ20代前半の若手映像監督や美術スタッフを起用したことでも大きな話題となりました。
さらに、「願い叶えば」のMVには彼女の息子らしき青年も出演しているのではないか、ということも音楽ファンの間では大きな噂となっています。
自分を形成する大きなファクターであったはずの音楽。
しかし同時に、これまでの人生において、彼女の精神を追い詰める劇薬ともなっていました。
ですが、それでも彼女は自身の頭の中に鳴り響くメロディを止めることはできなかったと語ります。
そんな彼女の想いから生まれたこのアルバムからは、どことなく良い意味での音楽に対しての諦めや吹っ切れを感じることができます。
音楽とCoccoという人間の間で絡まっていた鎖が解け、きっと今の彼女はどこまでも高く飛んでいくことができるような気がする。
彼女の、これからの活躍への希望のような光すら感じさせる。
そんな作品となっているのではないでしょうか。
これまで生きてきた数十年の人生。誰しもが、自らに課された宿命や運命との戦いを経験したことがあったでしょう。
時に呪いのように自らの身に纏わりつく様々なそれに、今現在も苦しめられている人々も少なくないのでは。
けれどいつか必ず、その戦いに終止符の打たれる日が来るはずです。
自らに課された音楽という宿命から、呪いから、解き放たれた彼女のように。
生きることの喜びに、祝祭感に満ちたこの音楽は、そんな運命からあなたを解き放つ鍵になる大事なエッセンスを、もしかしたら教えてくれようとしているのかもしれません。
スターシャンク
アーティスト:Cocco
レーベル:ビクターエンタテインメント
発売日:2019年10月2日
※画像はAmazonから引用させていただきました