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宮本浩次「P.S. I love you」大人たちの当たり前の姿を宮本浩次は美しいと歌う



デビュー30周年を迎え、これまでに様々な楽曲で多くの人の背中を押し続けてきたロックバンド、エレファントカシマシ。
そんなエレカシのボーカル・宮本浩次が2018年から始めたソロ活動の集大成として2020年初頭に発売されたのが、アルバム「宮本、独歩。」でした。

デビュー30年を超えてなお、ソロ活動というフェーズへの新しい挑戦を始めた宮本浩次。
1stアルバムという一区切りを終えても、彼の挑戦はまだまだ続きます。
彼のソロ活動は、どうやらたった一作のアルバムだけに留まることはないようですね。
それを示すこととなったのが、2020年7月にリリースされたシングル「P.S. I love you」です。

森鴎外や太宰治、夏目漱石、滝沢馬琴にゲーテやニーチェ。
古き良き文豪・詩人をこよなく愛する男として有名な宮本浩次。
名だたる作家たちの作品からインスピレーションを多大に受ける彼の詞は、聴いているとあたかも詩や散文のような、文学作品を読んでいるような気にすらさせられます。
けれど宮本浩次の書く詞の最も大きな魅力は、文学作品の中に織り込まれているような言葉と、私たちの心にすっと何の抵抗もなく馴染む言葉が同時に成立している部分なのではないかと、私は思っています。

彼がこの曲で主題としているのは、どんなことがあっても歩みを止めず、歩き続ける大人たちの姿です。
悲しいことや辛いことがあっても、子どもの頃や若い頃に比べれば、涙を流したり大きく落ち込むことは大人になってからずいぶん減りました。
たかがこれくらいのことで、立ち止まっている場合じゃない。
これまで幾度となくそんな風に思ってきたはず。

子どもみたいに、若い頃みたいに、いちいち立ち止まっていられない。
当たり前のことだろう、と思う方も多いでしょう。
子育てや介護や仕事や家事など、日々たくさんのものに背中を押されるように生きている私たち大人の生活は、小さな負の感情程度で立ち止まっていたら途端に回らなくなります。
ですがこの歌では、宮本浩次は立ち止まらない人間の姿を当たり前だとは考えていません。
当たり前だと考えていないからこそ、そうやって生きる「大人の姿の美しさ」を、とても鮮明に描いています。

目の前の大きな壁にぶつかっても、小さな段差につまずいて転んでしまっても。
自分の歩む道のりが、ずっと雨が降り続いていたとしても。
大人たちは当たり前のように再び立ち上がって、また自らの脚で歩き始めます。
困難に屈せず歩き続けることが、どれだけ大変で苦しい道のりなのか。
音楽活動を30年続ける彼もまた、それを心の底から知る大人の1人です。
だからこそ、自分と同じように歩き続ける人々へ、どこまでも真っすぐな言葉を使ってメッセージを投げかけてくれるのでしょう。
歩き続ける大人の姿は美しい、そんな大人たちの姿を僕は愛しく思う。
「P.S. I love you」。追伸、愛しているよ、と。

P.S. I love you
アーティスト:宮本浩次
レーベル:Universal Music
発売日:2020年9月16日

※画像はAmazonから引用させていただきました

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