映画「きみに読む物語」ニック・カサベテス監督 2005年2月日本公開
私は、映画・小説・アニメ・漫画、どのジャンルでも恋愛ものはあまり好きではありません。
捻くれているのかもしれません。
「かもしれない」ではなくて捻くれているからです、すいません。
例えば、幼いころ親とみていたテレビドラマで、急にラブシーンが始まってしまった時のように、一人で観ているのに気まずい気分になってしまうんですよね。
そんな私がうっかり観て泣いてしまった映画が今回ご紹介する
「きみに読む物語」です。
物語は施設(介護施設かな?)で老人男性が認知症と思われる老女に読み聞かせをしている場面から始まります。
その本に書かれているストーリーの舞台は1940年代。
お金持ちのお嬢様のアリー、17歳。夏の休暇で訪れていた地でノアという青年と出会い恋に落ちます。
最初は色々と気を引こうとしてくるノアを、アリーはあまりよくは思っていませんでした。
うん、あまりイケメンじゃないしね。
だけど、彼の自由さにだんだん惹かれていきます。
そして、二人は恋人関係になり、夏の日差しに負けないほど熱い日々を過ごします。
だけどアリーはお嬢様。両親(特に母)は貧しい労働者の青年との交際を許すはずはありません。
アリーは地元に連れ戻され、二人の仲は引き裂かれます。
ノアは毎日、アリーに手紙を書きますが返事が来ることはありません。
そして、戦争が始まりノアは招集され、地元に戻ったアリーはお金持ちのロンとイイ感じになったり。
しかし、ある時、二人は運命に引き寄せられるかのように再会してしまうのです。
「うん、王道だ。ベタだな」
捻くれ者の私は共感もできず鼻で「ふん!」なんて言って観ていたと思います。
しかし、なぜ老人はこの話を老女に読み聞かせているのだろう、この二人の関係は?
物語の中のアリーとノア、現実世界の老人と老女の話が交錯しながら映画は進んでいきます。
ラブストーリー嫌いな(あ、嫌いって言っちゃった)私がどうしてこの作品を観たのか?
ストレスが溜まっていた時期だったと思います。大きな仕事を任されて重圧で押しつぶされそうになっていた覚えがあります。
「気分転換が必要だ!」
それで、「全米が泣いた!感動のストーリー」的な作品を探す中で、この作品と出会ったのです。
要は、現実逃避ですね。
しかし、私は「泣く」ことを目的にこの作品を選んだわけではなく、むしろ
「ひと夏の恋は大概、秋には終わる」
「夏って暑いのになんでくっつきたがるんだろう?」
「夏を恋人と過ごしたことないし」
なんて、普段見ないジャンルの映画を見て色々突っ込みを入れたくて選んだので、まさか
「全米が泣いた。私も泣いた」
となるとは思ってもなく、鑑賞した後は鼻をぐずらせながらも、菩薩のような笑みを浮かべていたと思います。
(思い出したらちょっと気持ち悪い)
ノア役のライアン・ゴズリング、イケメンではないのが逆にノアの一途さを際立てています。
(けなしていない、ほめている)
そして、認知症の老女を演じたジーナ・ローランズ。彼女は監督であるニック・カサベテスの実の母親です。
認知症で記憶を失っている時と、記憶が甦った時の演技の振り幅、鳥肌が立ちます。
旦那様のジョン・カサベテスも監督で、彼の作品「こわれゆく女」「グロリア」でも主演を務めました。
特に「こわれゆく女」の感情のコントロールが上手くとれず、タイトルのまま壊れていく主婦の演技が凄まじかった!
観終わった後は軽い疲労感を感じるほどです。
とにかくこの作品、王道のラブストーリーの手順は踏んでいますが、様々に張られた伏線が終盤にあきらかになるにつれ、涙腺も決壊していきます。
奇跡のような愛の物語に触れ、余韻に浸り、しばし現実を忘れることが出来る作品だと思います。
涙はストレスと、捻くれて淀んだ心さえも洗い流してくれるかも?
(捻くれているのは私だけかもしれないですね…ごめんなさい)
※画像はAmazonより引用しました。