米津玄師「STRAY SHEEP」激動の時代に咲き誇る音楽
どれだけ多くの方が、彼の新作を待ちわびたことでしょう。
もちろん私も、首を長くして楽しみにしていた人間の1人です。
前作「Bootleg」から約2年10ヵ月。
米津玄師通算5枚目のアルバムとなる「STRAY SHEEP」が、2020年8月についに発売となりました。
これまで数々の名曲を世に送り出し、その度に自らで打ち立ててきた記録をさらに自らの手で塗り替えてきた米津玄師。
そんな彼によるこの「STRAY SHEEP」は正式な発売日である8/5の前日、いわゆるフラゲ日と呼ばれる8/4にはなんと100万枚出荷を達成していました。
この記録は、今やYouTubeで楽曲が当たり前のように聴ける時代に異例のヒットといえるでしょう。
大記録を残すこととなった理由は、やはり収録曲の密度の濃さではないでしょうか。
彼の名を一躍お茶の間に知らしめた「Lemon」はもちろんの事、Foorinへ提供した「パプリカ」と、菅田将暉の「まちがいさがし」のセルフカバーバージョン。
さらに映画、ドラマ、CMでタイアップされた「海の幽霊」、「馬と鹿」、「Flamingo」。
そして今まさに絶賛放送中の星野源と綾野剛主演のドラマ「MIU404」の主題歌「感電」。
このラインナップだけでも、相当な熱量を持ったアルバムであることが十分にうかがえるのではないでしょうか。
さらに、現時点ではタイアップを獲得していない楽曲も眩い煌めきを放つ作品ばかり。
自身が愛読する宮沢賢治の小説「銀河鉄道の夜」をモチーフとした「カムパネルラ」。
また同じく彼が敬愛するRADWIMPSのボーカル、野田洋次郎とのコラボレーションが実現した「PLACEBO」。
そしてこのコロナ禍で、彼が音楽家としての自身の存在意義を問い直したことにより生まれた「カナリヤ」。
アルバムを一度頭から聞き始めれば、1曲たりとも聞き逃すのが惜しくなってしまう。
そんな風に思ってしまうほど、この作品は全体として圧倒的なクオリティの高さを誇っています。
このアルバム発売に先駆けてのメディアインタビューで、米津玄師はこのようなことを様々な場所で口にしていました。
世界中で新型コロナウイルスが蔓延する中、自分達のような音楽家は真っ先に不要不急の対象となる事を改めて実感させられた。
その中でも、自分ができることはやはり音楽を作る事だけ。だから外出自粛中はひたすら独りで、ずっと音楽に向き合っていました、と。
本来であれば、彼の新作となるはずだったアルバムは、この「STRAY SHEEP」とは全くコンセプトが違うものになっていたんだそう。
しかし1年前とはなにもかも変わってしまったこの2020年という時代の中で、結果彼は今の社会にとって非常に重要な作品を、世の中に放ってくれたのではないかと思います。
「STRAY SHEEP」のエンディングを飾るナンバー「カナリヤ」。
彼はこの楽曲で、「例え愛すべきものがいつか姿形を変えてしまっても、その変化を全て赦したい」という自身の思いを、とても優しく歌い上げました。
世の中に、変わらないものなど何ひとつありません。
わかっていても、前はもっと簡単なことだったのに、昔はもっと優しい人だったのに、なんて。
様々な変化を赦し受け入れるという事は、なかなか一筋縄ではいかないことばかり。
ついつい保守的になってしまう方も多いのではないでしょうか?
誰かや何かが変わる事を赦せなくて、いらいらしてしまったり、悲しくなってしまったり。
そんな時には「STRAY SHEEP」が、抱えてしまったマイナスな感情を和らげてくれることでしょう。
また、変わる事を受け入れるきっかけとしても、胸の中に優しく響いてくれますよ。
STRAY SHEEP
アーティスト:米津玄師
レーベル:SME
発売日:2020年8月5日
※画像はAmazonから引用させていただきました